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やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論 #4 【四季のリズム】がもたらす成長と発展

※大好きなわがまちfujinoのホームオフィス眼前に繰り広げられる四季の風景とともにお楽しみください!!


■【らしんばん】+1

組織開発のダイナミックな実践を行うための新しいアプローチとして、【らしんばん】を使って組織や事業を、左上の「パーパス」を起点に →「戦略」→「アクション/しくみ」→「カルチャー」という流れで回していくことを、ここまでご提案してきました。

【らしんばん】

各象限の有機的なつながりを意識しながらアプローチしていくことは非常に重要です。しかし、単純に直線的な動きで計画達成を目指すような動きで成果を上げることは難しいでしょう。

現代の時代環境は大きく変化しており、私たちは本質的に適応する必要があります。そのためには、もう一つ重要な考え方が求められます。

非直線的なアプローチで、ある程度の渾沌(カオス)を許容することが不可欠です。現代社会では、さまざまな変数が複雑に絡み合っており、それらを完璧に予測して準備することは不可能です。

むしろ、ある軸や方向性を定めた後に、予期せぬ事態にどれだけ即興的かつ柔軟に対応できるかが重要な要素となります。

■発散と収束にちょっと足りないもの

僕はこれまで組織開発を支援する中で、失敗もたくさん経験しましたが、クライアント企業とともに多くの成功も積み重ねてきました。

で、その成功には、目に見えにくい共通のパターンがあることに気づいたんです(その原理を書籍化したのが2015年に経団連から出版した『創発ワークショップ』なんですが、今回をそれをシンプルに仕立て直してお伝えします)。

これまでの延長線上にない新たなアイデアや仮説を得るため、組織やチームで対話するプロセスが重要なのは言うまでもありません。

そのために一般的には、「発散」と「収束」を繰り返しましょうと言われています。

たしかにそのとおりだと思うのですが、企業現場での体験から、僕はちょっとだけ異なる感覚を持っています(ごめんなさい、否定しているわけではまったくありません)。

ひとつは、自由にアイデアや意見を発散しましょうと言っても、日常的に多くのしがらみや制約にとらわれている多くの組織人にとって、出てくるものが既存の経験や知識の延長線上になってしまいがちだということ。

もうひとつは、発散した後、いきなり収束に入ろうとすると、結局は発散したアイデアや意見のうち、グルーピングするとか、どれを選ぶかというモードになってしまいがちで、あまり面白い結論は見いだせないということ。

前者には、これまでの思考的なしがらみを一旦断ち切る「アンラーニング」が必要で、そこに、できればこれまで触れたことのない驚くような情報がインプットされると対話の質が変わってきます。

後者では、発散して何が何だかわからないようなもやもやした情報群の中に身を置き、表層的ではなく、それらの背景や奥底に潜む本質を見つけ出すことが求められます(専門的には「アブダクション」と言います)。

『アブダクション』米盛裕二 P.30より

ここでは、一筋縄ではいかない渾沌(カオス)をくぐり抜けなくてはなりません。対話型組織開発のひとつ「アート・オブ・ホスティング」では、それを"Groan Zone"(うめき声のゾーン)と呼んだりもします。

このあたりが、「組織開発新論」におけるもうひとつの肝となる部分です!

■【四季のリズム】

上記のような僕の体感・体験にもとづき、対話による価値を生み出すためにモデル化した非直線的アプローチが【四季のリズム】です。

春夏秋冬起承転結とも言えますが、組織やチームによる対話によって、自然で深い創造が生まれるには、自然の流れにかなったプロセスが効果的です。

1. 春 <支度>

まず「春」は、一年で最も昼が短かく、夜が最も長くなる冬至からはじまります。冬至は太陽の力が一番弱まった日であり、この日を境に再び力が甦ってきます。

つまり、従来の延長線上にはない飛躍をするための<支度>のときなのです。

過去に得た知識や体験を手放し、これまで知らなかった新たな視点や知識
を仕込みます。

春は自然界でも花や木々が芽吹き、新たな命が生まれる季節です。この特性を踏まえると、春は新たな可能性が芽生える季節であり、成長や変革の始まりを象徴します。我々も春の季節には自身の成長や変革に向けて準備をすることが重要です。

春=支度
<支度> 春を待つ@とんがり研

2. 夏 <発散>

「夏」は、新しく入ってきた情報を鵜呑みにはせず、自分自身の中に一旦くぐらせ、そこから出てくるありのままのアイデアや考えを、怖れや制約なしに、迎え入れます。

お互いのアイデアや考えを尊重し合いながら、自由自在にチーム内で<発散>させましょう。

他者の話に耳を傾けることによって、新たな着想を得ることもあります。

夏は陽気が明るく、自然の生命力が最も活発な季節です。この特性を考えると、夏は活気に満ちた季節であり、情報やアイデアが溢れ出る時期と言えます。我々も夏の季節には自由な発想と創造力を発揮し、新鮮なアイデアを迎え入れることが大切です。

夏=発散
<発散> 夏真っ盛り@とんがり研

3. 秋<創発>

「秋」は、さまざまな発散により生じるもやもやや混沌も大事にしながら、そこに流れる新たな方向性や文脈をなんとか探っていきます。

ここは起承転結の「転」にもあたる部分で、大きな跳躍が期待できるところですが、そのためには混沌(カオス)を直視し、向き合い、なんとか突破口を見つけ出す我慢が欠かせません。

ロジックだけでは整理できない乱雑にも見える情報群の中に、何か共通項がないか、互いの関係性が見つからないか等の見立てにトライしましょう!

異なる特性の要素が重なり合うことによって、どの要素にもない新たな特性が起ち上がることを<創発>と言います。

秋は自然界でも実りの季節であり、異なる要素が組み合わさり、新しいものが生まれる時期です。たとえば、果物の実りは、太陽光や気温、水や栄養、花粉と受粉などが、異なる要素として相互作用して生み出されます。

このような特性から、秋は多様なアイデアや情報が混在し、それらを結び付けることで創造性や革新性が生まれる季節と言えます。

秋=創発
<創発> 秋の実り@とんがり研

4. 冬 <収束>

最後が「冬」。創発した手がかり(果実)をもとに、チーム全員が理解・納得・共感できる仮説をカタチとしてつくる<収束>へ。

手がかりはまだ原石のようなものですから、チームによって磨き上げるプロセスが必要です。

方向性がある程度定まったとしても、そこに一人ひとりが持つ違和感なども丁寧に扱い、合意形成のプロセスを大事にしながら最後まで進めます。

冬は自然界でも休息や静寂の季節です。この特性を考えると、冬はまとまりや収束を迎える時期であり、アイデアや情報を整理し、最終的な解決策や成果を形にする重要な時期と言えます。

冬=収束
<収束> 冬の静寂@とんがり研

■具体的な事例をご紹介

それでは、最後に、【四季のリズム】で対話された具体的な事例をご紹介します。

これまでに経験したこともなかったコロナ禍によって、対面で仕事することができなくなったとき、多くの組織がいやが応でもリモートワーク環境に移行せざるを得なかったときのこと。

移行後、少し時間が経って、メンバーがある程度慣れてきたところで、これからどんな働き方にしていくのがいいかについてあるチームで対話がなされました。

コロナ禍に直面したときは、考える余裕もなく、とにかく目の前の仕事を途切らせてはいけないという意識で、メンバーたちは見様見真似でリモートワークに取り組みました

実はコロナ禍になるずっと前から、リモートワークに取り組んでいる会社もあり、彼らが実践の中からまとめたリモートワークをよりよく運用するためのコツ<支度>としてチーム全員で事前に読むことにしました。

次の<発散>フェーズでは、それも呼び水にしながら、このチームで実際に起きたことやわかったことを出し合うと以下のようなものが挙げられました。

ポジティブに見える意見も、ネガティブに見える意見もいろいろ出てきました。

通常の会議であれば、このような場合、プラスとマイナスに分けて整理して、マイナスについては、どのように改善していくかを話し合うパターンが多いでしょう。

しかし、このチームは【四季のリズム】に沿って<創発>フェーズとして、上記のようなプラス/マイナスが混在したような事象の奥にあるものは何かについて粘り強く話し合いを続けました。

その結果、リモートワークの本質は、リーダーにもメンバーにも、自分を律することであるということが見えてきました。

さらに、この本質に照らすと、従来このチームで行われてきた上位下達型の仕事のしかたは、リモートワークと相性がかなり悪いということもわかってきました。

という流れで、最後の<収束>フェーズでは、自分を律することの手始めとして、メンバーそれぞれの想いや持ち味を自ら見出し、言語化していきながら

チーム運営スタイルを全員参画によって変えていこうという結論に至りました。

いかがでしょうか?少し単純化して、実際にある企業現場であったプロセスをご紹介しましたが、【四季のリズム】活用のイメージが少しついたでしょうか。

今回は紙面の都合上、あまり多くを割きませんでしたが、秋=<創発>をもたらすロジカルシンキングを超える第三の思考「アブダクション」については、改めて情報提供したいと思っています。

さて、いよいよ次回は『やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論』5回シリーズの最終回です。

ここまでご紹介してきた2つのフレーム【らしんばん】と【四季のリズム】を掛け合わせて、企業現場でリアルに実践してみるための「雛形」をお示ししたいと思います。


いかがでしたか?

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。また、お読みになったご感想などコメントいただけたら泣いて喜びます。

※他の回のコラム(連続5回シリーズ)

第1回  組織開発の謎を解き明かせ!

第2回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

第3回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

第5回 新しき地図“あすbe”が描く未来


最後に、他で僕が発信しているもろもろのメディア情報もお載せしますので、つながっていただけるとうれしいです!!それでは、また次回お会いしましょう。

※発信中のメディア情報(とんがり研)

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