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企業変革の鍵は、現場での混乱にあり⁉︎


■ビジネスにおける新たな学びモデルをつくる場

2年ほど前に、日本を代表する大手企業の人材開発部長さんたちが集まり、新しい学びのモデルをつくろうという研究会が立ち上がり、僕はファシリテーターとして関わらせていただいています。

この会の特長のひとつが、アカデミックの最先端理論と企業現場での実践を掛け合わせるということにあります。

武蔵野大学・経営学部の宍戸拓人先生が、海外のトップジャーナルを軸に毎回面白い実証論文を抽出してくださいます。

■「アブダクション・シークエンス」という理論

直近の回のものが、とても面白かったので共有します。

米ボストン大学のカレン・ゴールデン=ビドル先生の2020年の論文では「企業変革の鍵は、現場での混乱にある」と示されています。

※この論文の概要は、宍戸先生がこちらで公開されています。


どういうことか?

一般的には、企業で変革を進めていくためには、現場での不安や混乱を極力抑え、社員の変革に対する理解、共感を高めるべきである

というのが定石として語られてきたかと思います。

ゴールデン=ビドル先生は、ある組織における変革活動を30ヶ月にわたって調査しました。

その結果、変革に向けての大きなきっかけになるのは、変革の方向性に対する現場での混乱(驚き)が起点になって

これまでの前提やものの見方に対する「疑い」が生まれ、その不安定さを解消するための「探求」が促された結果、

新しいものの見方が獲得され、本質的な変革が進むというプロセスが見えてきたと。

これを「アブダクション・シークエンス」と名づけました。

ゴールデン=ビドル氏の論文を元に宍戸先生が作成した「アブダクション・シークエンス」モデル


■そもそものアブダクションの本質とは?

そもそも、アブダクションとは「モヤモヤした情報群の中から、いっそう明確な概念をつかみ出してくる」(川喜田二郎『発想法』)考え方のことで、とんがり研が有力な武器にしているものでもあります。

僕の場合は、現場から出てくる違和感や、チームにおける葛藤や対立をきっかけにするので似てますね。図にするとこんな感じです。

現場でいまの問題を考えようとすると、どうしても従来から指摘されているような表面的なものをつついて、すぐ課題解決に走ろうとしがちです。

そうではなく、明確な言語化はしにくいが、なんか違和感を持っていることを出してもらったりすると

これまで認識したことがなかった複雑で厄介な問題が見えてきたりします。そこに「驚き」が伴ったり、これまでやってきたことは何だったんだという「疑い」が生じることも、たしかに多いですね。

そこで、自分たちの問題は複雑で厄介であるという覚悟を持って、問題の本質をなんとか自分たちで明らかにするプロセスに入ることができます。

そうして、問題の本質が特定できれば、いたずらに脅威を感じることなく、新たな機会に変えるべく動くこともできるというわけです。

■OKR導入での混乱が変革を促進している事例

さて、話は戻りますが、今回の研究会にて、宍戸先生がこの論文を紹介されたのは、参加企業の一社によるこんな実践事例に合わせてでした。

この会社では、よりイノベーティブな組織カルチャーにシフトしようと、OKRを新しい制度として導入し、それを評価にもつなげることにしました。

ところが、長年、目標管理制度に馴染んできた現場に大きな混乱が生じたそうです。

より自由で、より野心的な目標設定って何なんだ?しかも、そんなものを評価することなんてできるのか?

そこに人事部が向き合って、現場での不安や混乱の要因と解決の方向性を定めようと試行錯誤していった結果、やはり上司と部下の対話で目線を合わせていくプロセスが不可欠だという理解や認識がなされていったとのこと。

この会社で生じたいくつかの混乱や驚きの中でも、一番印象的だったのが、評価が高い人がかならずしも満足度が高いわけでなく、むしろ、逆相関が起きたということでした。

なぜだと思いますか?

評価が高い人には、高評価ならそれでよいだろうと上司が考えて、フィードバックを丁寧にしなかった。逆に、評価の低い人には、納得してもらうために大きな労力を使ったから。

したがって、この会社ではより野心的な目標に挑戦するための上司のフィードバックのしかたが次なる課題のひとつになっています。

変革活動を通じた組織の意味ある学びとは、社員が混乱なく理解するよりも、むしろ、現場での混乱からの方が大きな可能性があるという話、面白いと思いませんか。


いかがでしたか?

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。

では、また次回お会いできることをたのしみにしております!

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