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在りし日の制作記録2024【6月号】『背景制作の裏側に迫る!』
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
Studio To:NEMO代表 大桐トウゴです。
第7回目の更新!
今回…ハチャメチャにボリュームあります。
本作「在りし日のわたし達へ」が持つ武器の一つ、背景制作についてメスを入れた内容となっているので必見!
※ここから先は本当に制作の裏側なので「作品の世界観をぶち壊したくない!」という方がいらっしゃいましたらブラウザバックを推奨します。
…あ、でもせめて後半の告知だけでも見ていってください。
ゲームエンジンを使用した背景制作について
前置き
こちら以前にアンケートを集計した内容となります!
おはようございます!⛅️
— スタジオ トネモ (@Studio_ToNEMO) June 6, 2024
今週末、noteにて「#在りし日のわたし達へ」の進捗諸々を掲載予定です!🎮
そこで、本作にも使用している「ゲームエンジンを活用した背景&スチル制作」といった技術的な側面に少し触れようと思うのですが、需要ありますかね…?
宜しければ投票お願いします〜🙌
投票してくださった方はありがとうございますッ……!
東京ゲームダンジョン5では意外なことに、背景制作の質問が割合を占めており、簡単にご説明すると「なるほど!その手があったか!」という反応を多く頂きまして。
そこで、「意外とこの方法使われていないのかな?」とも思い本記事を執筆するに至りました。
(ドが付くほどメジャーだよ馬鹿野郎ォ~!であればスミマセン)
制作に使用しているツール
本作で使用しているツールは前にもチラッと書きましたが、
・Unity+宴(アセット)
・Unreal Engine5 となります。
驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうなんです。
「黒き森のウィッチ」と「ハイプリーステス」を融合して「ミュージシャンキング」が召喚されるように(?)
本作は貞子VS加耶子みたいなノリで『最強には最強をぶつける理論』で制作しています。
冗談はさておいて。
Unityは本作のメイン部分を担っており、直接的にお互いを融合させている訳ではありません。
Unreal Engineは背景制作用のツールとして使用しています。
実用化に至るまで
Studio To:NEMOは制作していく上で幾つかの課題に直面していました。
そのうちの一つが「背景制作」。
当初の案として「フリー素材」「有料素材」「外注」の三択でした。
・フリー素材
初手最有力候補!
インディ開発であるが故に資金にも限りがあるので、最もコストをかけずに実現する方法としては理に適っている……のですが…!
ADVゲームである以上、表示時間も長いうえに他作品でも使用している事を鑑みると「この風景、前に見たなぁ(突如ユーザーの脳内に溢れ出した存在しない記憶)」となってしまうのが個人的にネックでした。
・有料素材
こちらも視野に入れて探していたのですが、やはり同じ理由で採用を見送りました。
ただ、二つの方法を採用しなかった一番の理由は特定のロケーションに対応させ辛いという部分でした。
風呂場、廊下、屋根裏、倉庫etc…当たり前ですが、ニッチな背景は中々見つからず…。
「在りし日のわたし達へ」は、生活感と動きの表現を重要視しています。
【暮らす時間で変わっていく生活の形】を実際にプレイを通し、体感して貰いたいのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717674021549-ielz5oD7O3.png?width=1200)
主人公(シン)が椅子から転げ落ちた直後
![](https://assets.st-note.com/img/1717673889513-C2DQz1bssI.png?width=1200)
転げ落ちたため椅子が倒れている
しかし、それを実践するとなると超細かな差分が必要であったりで採用は困難を極めました。
・外注
こちらも同様に掛かるコストと睨めっこした結果、何なら実現が一番難しい択であると判断しました。
※念のため書いておくのですが、フリーや有償の背景を使用することに対しての単純な良し悪しではなく、「挑戦したい表現の手段」としては「採用が不可能」だったという部分は強調しておきます。
結論:無理!終わり!
…とも出来ないので困りあぐねていたのですが、ある日とても気になる記事が。
UE4を使った漫画・アニメ・イラスト制作について学びましょう!『UE4 Manga Anime Illustration Dive Online』開催!
https://www.unrealengine.com/ja/blog/epicgamesjapan-manga-anime-illustration-dive-online-01
この手法をADVゲームに転用できれば或いは…!?
![](https://assets.st-note.com/img/1717678181288-WUPvMFQb2S.png?width=1200)
家の前です
そして出来上がったのがコレ!
…と言えたらカッコいいですが、最新分です。
過去分は昔にプロジェクトをクラッシュさせてしまった影響で消えてしまっていました…。
実際の制作風景【背景編】
さて、ここからが本題となります。
![](https://assets.st-note.com/img/1717820844289-fGjAM5sD4X.png?width=1200)
家・山羊小屋・草むら・道が配置されている
これは上記にもある通り草原のフィールドです。
実際の地形を参考にしながらUnreal Engineのランドスケープ機能で地形をこねくり回し、人工物や自然物のアセットを配置しています。
そして、ある程度まで出来上がったら3D空間上でロケ開始。
登場人物と作品の設定に基づきながら更に細部を詰めたら完成です。
ちなみに地形はフラットから作り始めると作為的な感じになってしまうので
World Machine公式サイト
こちらでベースとなる地形を作成してからUEへ出力しました。
画作りに関しては背景とスチル共通で
・Chameleon Post Process
・Ultra Dynamic Sky を使用しています。
https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/ultra-dynamic-sky
Ultra Dynamic Skyは空に関するアセットなのですが、「雲の形」「天候」「時間」を手軽に弄れるので、朝~夜に至るまでの差分が非常に作りやすくなります。(微細な調整は必要ですよ!)
![](https://assets.st-note.com/img/1717827181347-d3ZDd0gHz8.png?width=1200)
サンプルとしてキービジュアルを夜Verにした物を掲載。
背景とスチル問わずに気候や時間の差分が作りやすいのが魅力でもあります。
余談①
シナリオを書いていく身としても、背景を作っていく中で生活様式が見えてくることがあります。
そこから繋がったりして造形の細かな所まで詰められるので、キャラクターに説得力を持たせられるなぁ…と思いました。
後はフィールドからシナリオ展開が浮かぶこともチラホラあったりで、今でもかなり役立っています。
実際の制作風景【スチル編】
次はスチルです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717827727025-CBmvryehOm.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1717827938945-X8f2oloxY0.png?width=1200)
パワープレイでは?
背景にイラストを重ねる形式でも良かったのですが、やはり実物を置いて現実味を増させたいなぁ…というのが正直な気持ち。
結果、UE内のPlaneアクターにマテリアル(イラスト)を張り付ける事で実現!
いざフィールドに置いてみるとパースも付けやすくポストプロセスがよく馴染むので「上手くいった!」という実感を掴めました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717829459967-LrlJ1e2683.png?width=1200)
スチルと背景制作は「舞台のセット」から着想を得ました。
見える物はガッツリ拘り見えない部分は作らないを徹底。
オープンワールドみたいに世界全体を創る…というよりも、文字通り劇の舞台セットを作る感覚ですね。
なので家の内装、森、他のシチュエーションはそれぞれレベル(Unityではシーンと呼ぶ)を分けて制作しています。
余談②
サイズ感は背景とスチル含め掴むのが大変でした。
作ってみてその場所へ等身サイズで立ってみるとあら大変!
「道の横幅が20mもあるじゃねぇか…」
遠目で見ているが故のサイズ感のバグりッ…!
一番驚いたのは家→山羊小屋までの距離が1kmも離れており、泣く泣く大修正をする羽目に。(暮らし辛いってレベルじゃねーぞ!)
メリット?デメリット?
この部分は気になる方が多いと思います。
メリット
・背景が豊富に取り揃えられる
大目玉ですね。
多ければ多いほど良いのか?というのはさておいても、没入感を高める意味ではかなり重要です。
朝昼夜から始まり天候に至るまでの差分が作れるのも嬉しいポイント。
・作画の負荷が減る
背景ごと描き込んで貰うスチルの場合はかなりの工数削減に繋がります。
・シーンの繋がりを意識した画作りが可能
上記に載せた背景①から②のように地続きな背景を制作出来ます。
物語上で起きた些細な出来事を背景にそのまま反映させる…という芸当も可能になるので、没入感が増すのでADVゲーム的には美味しいです。
例えば…
「ヒロインと喧嘩したのち、部屋を訪ねると散らかっている」
「日によって居間のテーブルに置かれている食器が違う」
「殴った壁に亀裂が入りずっとそのままになっている」
といった具合に大なり小なり変化を自身の裁量で付けられるだけでなく、物語で必要な心理的アプローチも反映させられます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143385440/picture_pc_181c6f9f4d973f76c82854512c0d1550.gif?width=1200)
人物の動きを語らずとも明確化できるのが強い!
・シナリオ執筆の助けになる
作ってしまえば実質「自由に暴れ回れるロケ地」となるので、話の展開を考えるにはうってつけです。
人物の暮らしを反映させる作業はいつもワクワクしながら取り組んでます。
![](https://assets.st-note.com/img/1717834884261-L41D0Hiy6o.png?width=1200)
す、住みてぇ~~~~~!
デメリット
・未経験であれば敷居が高い
(かくいう私もUE未経験でね…。)
唯一の救いはこの方法がノーコードで実現可能だったこと。
映像制作の分野に触れる事になるので、最初はかなり大変かもしれません。
シェーダー得意な方がいればめちゃくちゃ心強いと思います。
・ジャンルによっては活用が難しい
本作は海外ベース+自然多めということもあり成り立ってはいますが、ジャンルによっては素材がなく難しいです。
その代わり、ファンタジー/SF/ポストアポカリプスはアセットがごまんとあるので、そちらは相性が抜群に良いですね。
モデル制作できる人がいれば、このデメリットは帳消しに出来るかもしれません。
・ハイエンドPC必須
標準以上のスペックが求められます。
以前使っていたGTX1660Superはセーフ寄りのアウトだったので、可能であればRTX3000番台or4000番台クラスは必須。
・容量圧迫のおそれうわーん!容量がデカすぎます!背景が増えれば容量が大きくなるので注意。
長編になれば本当にエゲつなくなるので軽量化は課題になり得ます。
システム『軌跡紡ぎ』とのシナジー
![](https://assets.st-note.com/img/1717839536046-71WnkbBOaz.png?width=1200)
クリックすると手記へ格納される
本作は『軌跡紡ぎ』という収集システムを採用しています。
その前提としてシナリオとは別で背景に注目して貰う必要があるとも考えていました。
変わり映え無さ過ぎると注意力も落ちてしまい見過ごす事も多くなるだろうし、何よりも「同じ場所で同じように配置」してはコンパチ感が増してしまいます。
「違う場所で違う時間」を強調するには、今回ご紹介した方法は理に適っていますよね。
・ゲームとして「背景に注目して欲しい」
・文章で語らずとも「人物の感情を伝えられる武器が欲しい」
この二点は何とかクリア出来た気がします。
しかしまだ作品は完成していないんだな、コレが。
(オチが付いた!)
告知タイム
さて、そんな形で成り立っている本作ではありますが、いくつか告知がございますので最後までお付き合いいただけると幸いです。
EnterJam? エンタメ情報局に出演します!
来週11日(火)の放送では、我らが歌姫、夜道雪さんが主題歌を務めた『在りし日のわたし達へ』のスタッフインタビューを行います。独占!
— エンタジャム (@EnterJam) June 6, 2024
お楽しみに!
【エンタジャムPresents】 EnterJam? エンタメ情報局 第48回 『在りし日のわたし達へ』開発者独占インタビュー https://t.co/3fY5LNmwIv pic.twitter.com/8BbIy2KYOO
え?ドユコト?となった方もいらっしゃると思います。
そう、つまりはそういうこと!(どういうこと?)
こうなったからには思いの丈を熱く語りますよ~!
当日は私(大桐トウゴ)が参戦しますので、どうか生温かい目で見てあげてください。…多分ド緊張しています!
▼放送枠はこちらから▼
https://live.nicovideo.jp/watch/lv345466693?ref=sharetw
『Youtube』と『ニコニコ生放送』の二枠となっておりますので、お好きな方でご視聴どうぞ!
エンタジャム X公式アカウントはこちら
TOKYO SANDBOX 2024出展!
Tokyo Sandboxで、他では体験できないゲームの冒険に出かけましょう!🎮
— TOKYO SANDBOX (@TokyoSandbox) May 17, 2024
🗓6月22日@秋葉原
🔍インディーゲームの試遊体験、開発者との情報交換、そしてたくさんのサプライズ!
詳細はこちらから↓ https://t.co/HtCIh5lAtp#TokyoSandbox #インディーゲーム #秋葉原 pic.twitter.com/ny6helejkO
今回は演出面とUXを強化したプレイアブル版を持参します!
(出来ればグッズも…!!)
今回の記事で本作に興味持たれた方はココで遊ぶチャンスですよ~!
▼TOKYO SANDBOX 公式サイトはこちら▼
コミックマーケット104 受かりました!
あなたのサークル「Studio To:NEMO」は、コミックマーケット104で「月曜日 西地区 “く” ブロック 14b」に配置されました!
— スタジオ トネモ (@Studio_ToNEMO) June 7, 2024
コミケ初出展!
アートブックや用意出来る限りのグッズをこさえて行きます🫡
当日は是非お立ち寄り下さい〜!#C104https://t.co/pn91cdrzik #C104WebCatalog pic.twitter.com/MPJxfabEDU
本作を倍楽しめる!?アートブック『DaysGoneBy』を販売予定です。
「遊ぶ前と遊んだ後の両方で楽しめる!」を目標として製作中ですのでお楽しみに!
![](https://assets.st-note.com/img/1717842794833-cl4mqnSxCD.png?width=1200)
現在の進捗
![](https://assets.st-note.com/img/1717850976196-K8pYm0dJqt.png?width=1200)
ここでも本作の背景制作の一端が垣間見えますね!
現在は新たなスチルに着手中です。
何故こんな事に…?な一枚ですが、こうなってしまった原因は是非ともプレイして確かめてみて下さい✨
今月はUI改修や手触りの調整も行っていました。
そろそろゲームへシナリオを組み込んでいく作業も本腰を入れていきますYo~!
さいごに
初期の頃からずっと書きたかった内容なのですが、今よりもノウハウの確立が出来ていなかったため断念していました。
なので!ようやく書けて大満足!
とは言っても、まだ100%を出しきれているとは到底思っておらず、ここから更に進展させていきたいですね。
・「コストが比較的安価」
・「工数削減に一役買ってくれる」
・「表現の幅が広がる」――の三拍子が揃ったこの方法。
工夫次第で表現力を尖らせるインディ開発ならではな感じがします。
それと…現状よりも更に良くなる方法を知る有識者の方がいらっしゃれば是非その極意を伝授してください(照)
ちなみに権利周りが不安だなぁ…と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、UEで制作した物の著作はゲーム・映像・スクリーンショット問わず制作者本人に帰属されるのでご安心を。
Unity側もユーザーが作成したコンテンツに対して所有権を主張しないためUEで撮影した画像を背景として使用することは基本的にOKです。
https://www.unrealengine.com/ja/eula-reference/unreal-ja
…が!
こういった規約は変わる可能性が高いので常にチェック!
また、アセットを利用する場合も権利的には問題ないのですが一部例外もあったりするのでよく目を通しておきましょう。
それとこれはUnityやUEの双方に言えますが、
アセットの制作者は数え切れないほどの方がいらっしゃるので、場合によってはAI生成された物や他者の著作物が紛れ込む可能性があるのでこちらも注意が必要です。
AIに関しては配信PFによって「AI生成物が作品に使われているかを申告制にしている」所もあるので知らぬ間に…とならないよう気を付けましょう。
(「AI使ってるのかな?」と疑問に思った際は、アセット製作者の方へ連絡を取り確認することを強くオススメします)
今回はここまでとなります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
次回更新をお楽しみに~~!
それではよきゲームライフをお過ごしください!
在りし日のわたし達へ
2024年内リリース予定
ジャンル:リバースド・パストラルADV
価格:無料
プラットフォーム:PC(Steam)
執筆者:大桐トウゴ