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新人アニメ制作進行に捧ぐ! お前が生き延びるための覚書 ──CT(カッティング)について──(P18)
CTとは、基本的には、アフレコのための編集作業です。(例外あり)
どういういった編集作業かというと、まず、1カットごとのムービーデータを一本の映像としてつなげます。
そして、テレビ尺に合わせるために不要な箇所を編集で切ったり、演出上の都合(セリフのおさまり、カットつながりよくするためなど)により編集で切ったりするという作業です。
演出・監督は基本的に立ち会う。
① CTの準備
・CTのために、全カットをムービーデータ化する必要がある。
全カットをムービーデータ化したものを、編集さんに渡して、それをひとつに繋げたものを編集するのがCT。
ムービー化する方法は2つ。
基本、BG・仕上げあがりがアップ済のカットは撮影し、
そうでないものは線撮する。
現状、線撮部門と撮影部門がふつう分かれていて、それぞれまったく別ものの存在になっています。
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・「線撮」 とは…… 動画/原画/ラフ原画/絵コンテ撮素材でCT・MK等の用途でムービー化する作業
・「撮影」は本撮とタイミング撮と呼ばれる2パターンの作業がある。
本撮 とは……BGデータ・仕上げデータ・CG素材・モニター素材など「カットに必要なすべての素材が揃ったものを撮る作業」
タイミング撮(T撮)とは……BGはないが仕上げデータはある等、「カットに必要な素材が完全にはそろっていない状態で撮影する作業」
それぞれの作品や、作品の状況によって、CTに「どんな状態のムービーが必要なのか」が違うので(フルカラーなのか、すべて原画撮にしないといけないのか、ぜんぶコンテ撮でいいのか……等)、そこはメインスタッフやデスク・プロデューサーと相談し、共通認識を持っておこう。
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例えば、私が制作進行を担当したTVアニメ作品『W』#1ではすべて原撮(=原画演出あがりの線撮)でCTを行った。
昨今のアニメ制作現場のスケジューリングでは原撮でのCTは困難な場合が多いが、やはり原画の絵でないとアフレコは難しい。
その絵を見て声優さんが演技するわけだし、CTの映像があまりに未完成だと、声優さんや音響さんがやりにくいので、CTに参加する演出・監督・プロデューサーは肩身が狭い思いをする。
また、私が作品『D』#11の制作進行を担当した時の話。
制作進行になって2本目の話数だったんだけど、経験が浅かったのもあり、今思い返すとヒドすぎる回し方だった……。
しかし、当時はそのヒドさに気づきもしていなかった。
この話数でのCTは、ほとんどがLO撮、一部が間に合わなくてコンテ撮で行った。
しかし、上司や編集には、私が全カットLO撮にすることを期待されていた(と思われる)。
CT当日、編集後ムービーを通し見した時の、デスクや編集さんのガッカリしたような、諦めたような苦笑いは忘れがたい。
この件での私のように、編集の段階までに「期待されている絵」を間に合わせられない人は、スタッフ陣の脳内で「無能」の烙印を押されることにってしまう。
みんなは私の二の舞にはならないように頑張ってくださいね~。
ここで、あの時、私はどうすればよかったのかについて考えてみたい。
実際のところ、『D』#11はスタートから状況が非常に悪く、レイアウト撮をCTまでにそろえることは、正直誰であっても不可能なくらいの話数だった。
しかし、もしそうなのであれば、しっかり上司や編集さんに報告・相談して、「一部のカットはレイアウト撮が揃わない」ということを納得してもらえている状況を作るべきだったと思う。
しょうがないけど、CTやMKやオールラッシュによって、制作の管理能力が上司や監督に判断されてしまいがちなのはあると思う。
出来不出来がわかりやすく映像として示されるからね。
※コンテ撮にする場合、演出にコンテ撮素材を作ってもらう必要がある。
コンテ撮素材の作り方は演出によって違うので確認しよう。
また、通常のチェックが間に合わない場合、CT用の仮チェックをしてもらう場合もある。
※仮チェックの進め方は原図優先の部分(p56~57)を参照ください。だいたい同じです。
・アフレコにとって重要なカット、そうでないカットがあるので、優先して回す必要があるカットを確認する。
例えば、CTの目標がLO撮を揃えきることだったとして、そこまでにLOが間に合わなそうな場合、演出さんにCTに間に合わせなくてはいけないカットはどれか相談し、優先をかける。
例えば、キャラが背中を見せてしゃべるカット(いわゆるOFFセリフ)はコンテ撮でもいいけど、芝居しながら喋るカットはLO撮必須とか。
・編集さんに、ムービーデータの入れのスケジュールを相談する。
編集さんによって、すこしずつ作業したいから、随時入れてほしいという人もいるし、
編集の前日に一気に入れればいいという人もいる。
その相談の結果によって、線撮/撮影の入れ・あがりのスケジュールを決める。
また、上記でもすこし触れたけど、編集入れの素材がどういうものになるかは編集さんにもしっかりと報告しよう。原画撮なのか、コンテ撮になってしまうのか……。
当然だが、編集さんは、切って貼って繋げてだけが仕事ではない。
編集さんだってクリエイターだし、リズムやタイミング感を計算して気持ちいいフィルムを編集したい。
コンテ撮のような粗すぎる素材を編集しても、クリエイティビティを発揮するのは難しいので、できるだけいい状態の素材を渡すべきだ。
素材の状態が悪い状態での編集になることが避けられない状況ならば、なるべく事前に報告し、謝り、納得してもらおう。
② 線撮について
※撮影に関しては省く。業務はp22、スケジュ―ルの立て方はp34~38にて別述している。
・線撮を撮る場合は、必要な素材のスキャンデータを線撮会社に渡して撮ってもらう。
グロスで線撮をお願いしている会社がない場合は、自分で営業する必要がある。
・線撮会社に線撮お願いする際は、まず、作品タイトルと単価、「何」用の線撮なのかを伝える。
(今回だったらCT用。他にもCGカットのアタリ用など、いろいろな用途の線撮がある)
そして、線撮入れする総カット数と、スケジュール(どういうペースで入れて、どこであげてほしいのか)を伝え、それが可能かどうかを相談する。
※依頼を受けてもらえる場合、線撮さんに渡すもの
・線撮仕様書(「今作の線撮はどういうデータ形式なのか」とかの仕様書)
・コンテも渡す(初めて作業してもらう話数の場合)
・線撮してほしいカットのスキャンデータ
・伝票
・以下、線撮に関する注意点。
線撮は1日何カット撮れるのかを確認しよう。会社によってけっこう違うよ。
土日祝は休みなのか、稼働時間は何時から何時なのか、等も必ず確認。
また、線撮入れ時、素材抜けがないよう、スキャンする時は気を付けよう。
スキャン忘れ、ファイル名の間違い、タイムシートの抜け、スキャンのズレないか…等。
実際、私の場合なんかは、どう気を付けたとしても素材抜けは数件発生しちゃってた。
ミスがあることを前提として、スケジュールにバッファを作れているのが一番。
線撮あがりも一通りチェックしよう。
CTの現場で撮ミスによる素材不備が発覚したら最悪だからね。
・カット管理ソフトに線撮の欄をつくり、入れ・あがりを管理しよう。
② CT直前
CTに必要な持ち物の準備。以下、必要なものを列挙します。
・タイムシートをB4白黒(演出によってやり方が違うので要確認)で印刷し、カット番号順に並べる。
(ヌケがないようダブルチェック必須)
・コンテ用意
・メモ帳の準備。
・アフレコ台本準備
③ CT当日
CT実施までには、編集さんは制作から渡されたムービーを一本につなげ、そのムービーをすでに編集してくれている。
その映像を流しながら、セリフのタイミングの確認のため、キャラにアテレコするような形で、演出さんが台本の台詞を読み上げていく。
その際、監督や演出さんから、やっぱここは数コマのばしたいとか切りたい等の意見が出てくるので、編集さんは、その場で編集ソフトで伸ばしたり切ったりする。
その場合、「〇〇コマ目~△△コマ目を6コマ伸ばす」みたいなメモを、演出さんが当該カットのタイムシートのコピーに書き込んでいく。そのため、CT時にシート修正が必要となるカットがでたら、制作進行は演出さんに修正内容を書き込んでもらうため、そのカットのシートのコピーをすぐに渡す。
修正内容を書き込まれたシートは、もとのシートの束とは別に、後で取り出せるようわかりやすくまとめておくとよい。
修正内容は自分でもメモしておき、内容を把握しておく。
また、CT時にセリフを少し変更する場合もある。
そのため、演出にはもともと渡している台本と別に、事前にもうひとつ台本(こういうものをアフレコ修正台本という)をわたす。
台詞変更あった場合は、アフレコ修正台本に修正点を赤ペン等で書き込んでもらい、その書き込んだ台本のスキャンデータを音響さんに送る。
上記でも触れた通り、CT時に尺を伸ばしたり切ったりしたものには、基本的にシート修正が必要。
シート修が必要なカットは、演出がCT時修正内容を書きこんだタイムシートのコピーを、カットの中に入れて、演出にシート修してもらう。
カットが手元にない場合は、取り寄せるか、あがってきたタイミングで演出に入れる。
(どっちにするかは状況次第)
管理が大変なので、よく注意しよう。
(カット管理ソフトにCT時シート修の欄をつくるべき)
また、後から内容確認できるように、修正内容が書き込まれたシートのコピーはすべてスキャンしておくとよい。
CTムービーはメインスタッフに渡す。特に演出さんには必ず。
メインスタッフそれぞれや、場合によっては原画さんにもCTムービーが必要か確認しよう。
CGやモニター等のあるカットの尺がCTで変わった場合は、CGやモニターの作業者に必ず連絡して、変更後の尺に合わせて作業してもらう。
CT時、欠番がでたら各セクションに伝える。
④CTの後
CT後のムービーが音響会社さんに送られる。
それを使用してAR(=アフレコ)が行われる。
制作進行でも可能な限りARに参加しよう。
ARが終わると、声優さんの声が乗ったARムービーが音響さんからもらえる。
このARムービーも各メインスタッフに配布する。
また、編集さんにも渡し、キャラの口パクの動きと、声優さんセリフの声とで、合ってないところがないか確認してもらう。(けっこうなカット数で、パクずれが発生すると思っておこう)
口パクがあってないところがあれば、編集さんはあってない部分を「何コマ目~何コマ目まで」と指示してくれる。
この作業のことを「スポッティング」、もしくは「コマ出し」という。
この指示が書かれた「スポッティングシート」と、スポッティングが出されたカットを演出さんに渡して確認してもらい、シートを直す必要があれば直してもらう。
中セリフの口パクを直す場合、シート修ではなく、作画で直さなくてはならない場合もあるので要注意。
以上。