教材で、言葉の「誤用」「揺れ」をどう取り扱えばいいのか
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言葉の「誤用」について思考し始めたは、漢字ドリルを眺めていて、「〈汚名返上〉を、誤って〈汚名挽回〉と覚えてしまっていることがあるよ。気をつけよう!」とのコラムを見つけたときです。
確か、「汚名挽回」は誤用ではないという指摘もあったはず……。
そう思って調べると、こちらの記事がありました。「汚名挽回」は誤用じゃなかった 国語辞典編纂者のツイートが話題に 三省堂国語辞典にも説明が - ねとらぼ
記事にも出てくる飯間浩明氏の『三省堂国語辞典のひみつ』(2014年、三省堂)では、「汚名返上〈挽回〉」の他にも、「的を射る〈得る〉」、「二の舞を演ずる〈踏む〉」、「足〈足下〉をすくわれる」の言い方の揺れは、誤用ではないとしています。
そうした指摘があるので、もし修正するのであれば「『汚名挽回』は誤用ではないよ!」という内容にするか……? いやいや、その指摘は今のところ一部であり、揺れている表現であるからコラムの掲載自体をやめて、別なネタにする必要があるか……、と(編集しているわけではないのに)結論づけていました。
教科書でも取り上げられている「誤用」表現
言葉の「誤用」は相変わらず興味を引く分野ですね。最近の誤用紹介記事では、「言葉の本来の意味/俗な意味」としてボカしたり、「言葉の揺れが見られるようになった」、などと言葉を選んでいるものもあります(こんな記事とかですね。参考文献も上げています)。
一般ニュースのネタ記事であればそれでいいのですが、子供に言葉の「誤用」どころか「揺れ」を説明するのは、理解してもらえるかどうかが不安で、避けたくなります。
それでも、中学校の国語教科書を調べてみると、慣用句の単元で「誤用」に触れている社がありました。
そうなんだ。教科書でも扱っているんだな……、というのが調べての感想です。
「情けは人のためならず」、「気が置けない(気のおけない)」などは、俗な意味が本来の意味と全く違う意味であるので、コミュニケーションの円滑を図るために誤用の現状を知っておいてほしいということでしょうか。それならば扱う価値がありますよね。
慣用句の学習は、意味を覚えるだけの詰め込み的なものだったので、そこに別な切り口を見せる、というのはとっつきやすくするためにはいいんだろうなと思います。
その反面、誤用面を強調しすぎると、どちらが俗な使い方でどちらが本来の使い方なのか、さらに迷ってしまう恐れも出てきてしまうでしょうね。
「誤用」「揺れ」の捉え方についてさらに考える
そこまで考えて、最初に戻ります。「汚名返上」のコラムは、果たしてなくすのが妥当なのか――。
なくしてしまうと、「汚名返上」の意味を知る機会を一つ失ってしまうのではないか……? では、「汚名挽回」に触れず、「汚名返上」の意味だけを掲載するのが最善なのではないか……わからん。
教材を作るうえでの、言葉の「誤用」「揺れ」に対するスタンスは、敏感であるとともに、どう対処するのがよいかをこれからも考えていかなければならないと感じます。
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