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【エッセイ】哀しきうちの部活
今も昔も、学生の自己紹介の定番といえば「所属している部活について」である。大抵の場合、「何部なの?」「〇〇部だよ」「へぇ、そうなんだ!いいじゃん!」というようなやりとりで会話が弾む。しかし、私が高校生になってから、こんなにもスムーズに話が進んだ試しがない。
私は高校で文芸部に入った。文芸部とは小説や詩、エッセイなどの創作を行う部活なのだが、吹奏楽部やサッカー部というような人気部活と比べると、かなり知名度が低いようだ。入部したことを伝えても、初めて耳にする言語を聞いた時のように、大人も子供も「ブンゲイブ?」と首をかしげる(これは私が住んでいる地域の問題なのだろうか)。そのせいで、私は「小説を書いたりする部活です」と長ったらしく伝える羽目になるのだ。悲しいことに、文芸部は高校内でも影が薄い。「文芸部に入っています」と言うとやはり首をかしげられ、「小説を書いている部活なんだけど…」と言い換えると、「へぇ!そんな部活もあったんだね」と言われる。
しかしその影の薄さも無理はない。私たちの活動日は不定期で、今年度はまだたったの5回(文化祭期間中の準備は各部活が自主的に行うのではなく、全部活がやらなければならないことであるため、期間中の活動回数は大きくまとめて1回分としている)しか活動を行っていない。
うちの部活がこんなにも不定期なワケは大きく3つある。
まず1つ目は「みんな兼部しているから」。兼部とは複数の部活に所属することである。うちの部活の部員はほとんどの人が兼部をしている。兼部をすると、活動する部活に自然と優先順位ができる。その優先順位のワースト1位がうちの部活、そう「文芸部」なのだ。つまり、うちはサブの部活なのだ。放課後に文芸部の活動を行うこともできる。しかし、皆メインの部活で活動していて人が集まらないため、何もできない。こうして活動の頻度が減っていくのだ。
2つ目は「わざわざ部活として集まらなくても活動できるから」。創作は個人作業が基本で、唯一部員全員が集まるのは校正・校閲の時のみだ。共同で1つの物語を作るのも楽しいだろうなとは思う。しかし先ほども述べたように、部員のほとんどが兼部をしているせいで、共同での創作はなかなか難しい。
分からないことや表現に悩んだ時に先輩に聞くことができるのだから、定期的に部活をやればいいのにと思う人もいると思う。が、先輩曰く、後輩に偉そうにアドバイスができるほどの力はないし、聞かれても分からない、だそうだ。
3つ目は「部員のほとんどがめんどくさがり屋だから」。やる気のある先輩がいた時期もあったらしいが、その先輩はすでに卒業済み。当時作成された文芸部のInstagramとX(旧Twitter)のアカウントは全く更新されなくなっている。
ちなみに、うちの文芸部にはロゴも存在する。それは数年前に「とりあえず」というノリで作られたものだったらしい。そのロゴが現在も使われ続けているのは、デザインが悪くない上に変えるのも面倒だからだろう。
ときどき「部活で書いた小説を、コンクールに応募したりとかするんですか?」と聞かれることがあるが、やる気がこの程度の部活である。やるわけがない。
しかし、こんな部活でも部員ひとりひとりの作品のレベルは案外高いような気がする。おそらくこの部活に入部する前から趣味で書いていた人たちなのだろう。だからこそ、私はこの部活と部員の力を多くの人に知ってもらいたいと思っている。そして、あわよくば部員が増え、活動日も増え、もっと胸を張って「私、文芸部なんです!」と言いたい。まぁ、部員が増えたとて、活動日が増えたとて、教室にこもって静かに創作をするのだから、結局は地味な部活であることには変わりないのだが…。
夢のような高校部活ライフを思い描きながら、今日も1人、私は家でペンを走らせている。