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大切な自分をつつむ布。「おうち着物」をはじめました。

まさか自分が着物にハマるなんて。半年前には想像もしていなかった。これだから人生っておもしろい。

息子の通う小学校の同学年ママさん8人と、ランチに行くことになった。ランチの前に時間のある人だけお茶をしよう、ということになって。

私は1番乗り。のんびりと本を読んでいると、やっほー!と2番乗りのママさんがやってきた。そのママさんと2人でゆっくり話すのははじめて。

私がそのママさんについて知っていることと言えば、

「いつも着物を着ている」

という、目から入ってくる情報のみだった。


あとは運動会のとき、着物で全速力で走っていた姿がずっと頭に残っていた。そのママさんを見かけると、いつもその映像がポンッと頭に浮かんでくる。なんであんなに速く走れるんだろう。そもそもどうしていつも洋服よりも動きにくいであろう着物を着て過ごしているんだろう。運動会のときまでも。その理由は全くわからなかったけれど、着物でキラキラ楽しそうに走るママさんを遠くから眺めながら、目を細めたくなったのを覚えている。

2人で話しているとき、着物のことをいろいろ教えてくれた。話を聞いているうちに「着物って・・・着る整体やん!」と思った。お家で整体サロンをしている身としては、どんどん興味が湧いてくる。


しばらくして、3番乗りのママさんが来た。そのママさんも着物だった。少し前から「ふだん着物」をスタートしたママさんだ。

スターバックスの片隅で、着物のママさん2人に囲まれて、おしゃべりをした。その2人のママさんが、なんだか自然体でイキイキしていてなんだか素敵で、その理由の1つに「着物」があるような気がした。それにこの状況、なんだか着物の方から私に近寄ってきて、手招きしているようにさえ思えてきた。

「着物になってから、ブラもしてないしパンツも履いてないよ。」

その一言で、ついに私の心は「着物」にロックオン。最近、ブラトップの締め付けさえしんどく感じるようになっていて、パンツも何を履いても締め付けがしんどいと感じていた私にとって、その1言は強烈だったのだ。


そのあとサロンに来てくれたお客さんにその話をしていたら、そのお客さんも実は着物が好きで、昔着付けを習っていたとのこと。着なくなった着物や浴衣や帯や草履を、たくさんくれた。

そして教えてもらった本町のリサイクル着物屋さんに行って、最低限必要な肌着や、練習用に使えそうな気楽な着物を買いにいった。1000円で3着!みたいな着物や浴衣もたくさんあって、全部そろえても7000円ほどだった。


みるみるうちに「着物」をはじめる土台が整っていった。

そして、着物のママさんに「ふだん着物」の着付けを習いに行ったとき、感動した。「苦しい」とか「しめつけられる」とか「動きにくい」とか「汚れないように気を使う」みたいなイメージしかなかった着物のイメージが、がらりと変わった。


着ている方が、体が楽だったのだ。


布で大事な自分の体を包む。くるむ。

お腹には、ゆるくもなく、きつくもなく、ピタッと自分の体にそわせて、紐や帯を巻く。

その帯のおかげでか、体の中心がどしっと決まる。すると肩の力が自然とスッと抜ける。

帯や補正のタオルのおかげか、
お腹がじわ〜っと温かくて心地よい。


そうだよね、着物って昔の人の普段着だったんだもんね、と妙に納得した。

その日から、おうちで着物を着るようになった。


外から帰ってきたら、洋服を脱いで。

「おつかれさま」と
自分の体を、布で丁寧に包む。

体の中心は、ほどよくシャンッとして
体のはしっこは、フワッとゆるんでいく。

自分の体が大切にされている感じがするからなのか、コップやお皿や洗濯物や野菜やお肉などなど、自分が触れるすべての物にも優しく触れたくなる。だから家事がなんだか楽しい。

ねむるときも、お布団と布に包まれて、守られている感じがして、すごく心地がいい。



ふだん着物は、
「着る」んじゃなくて
「見せる」んじゃなくて、

自分の大切な体を「つつむ」んだよ。
「くるんで守る」んだよ。

その言葉を体感した。



それなりに社会になじめる服を。
それなりにオシャレな服。ダサくない服を。

かつ、

それなりに動きやすく着心地のいい服を。


実は、柄物やPOPな色の服にキュンッとする自分の好みとは逆行しようとしていたから
30才を過ぎてからは洋服迷子だった。



何を着ても、なんだかしっくりこなかった。


さあ、今日は服を買うぞ!と、ユニクロやguをウロウロしてみるものの、たくさん並ぶ商品に圧倒されて。なんだかボーッとしてきて、ドッと疲れて、何も買わずに帰る・・・みたいなこともよくあった。オシャレってむずかしいなぁ、よくわからんなぁと、肩を落としながら。

「骨格診断」だってやってみた。私は「ウェーブタイプ」で、似合うとされているコーディネートすべてが、好きになれそうになかった。

そんなこんなで、「もう自分専用のスタイリストさんに全部決めてもらって、それを制服みたいに淡々と着れたら楽なのに」とさえ思っていたけれど。


洋服よりも着るのに少し手間がかかるのに、久しぶりに服を着ることを楽しいと思う。

自分を包む布を、自分で選びたいと思う。

その布は、自分が好きな柄がいいな、
とウキウキする。

服に対する気持ちが、ガラリと変わった。


おうちで着物を着るようになって数ヶ月。スムーズに着れるようになってきた。まだお家だけだけど、今後は外でも着たいな、と思っている。

でも「ちゃんと着れてるのかな?」「なんか言われるかな?」「どう思われるかな?」って、プルプル震えている自分に気づく。まだ外に出る勇気が出ずにいる。


特別な日じゃなくて、日常に着物を着る。

そのことに私はとても魅力を感じているけれど、まだまだ「一般的」ではないのだ。


ちょっとずつ、ちょっとずつ。

私は着物が好き。心地良い。だから着物を着て暮らしている。そんなシンプルな理由を心に持って、着物で堂々と外を歩けたら素敵だなと思う。

そして周りの人たちが「いつも着物の人」って、私のことを見るようになったなら。

なんだか今よりも「自分が好きな自分」になれてるような気がする、今日このごろだ。

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