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10年間使ったお財布との別れ。そして出会い。
「9月2日は天赦日だし、満月だし、お財布を新しくしよう。」
そう思い立って、久しぶりに繁華街に出た2020年の9月2日。水曜日だから、幼稚園は午前中だけなんだけれど、息子は幼稚園の預かり保育に行かせた。そこまでして今日じゃなきゃダメなのかと自分で自分に何回も聞いた。その結果、どうしても今日じゃないとダメなんだと結論が出た。
今使っているお財布は、おそらく10年近く使っていると思う。その間に1年ほどちがう財布を使っていたけれど、なんだかしっくりこなくて、いつのまにかそのお財布をまた使うようになっていて、今に至る。
そのお財布は、「HIRAMEKI」というブランドのもので、クリムトの絵が革にプリントされてある。お財布に描かれている裸の女の人に一目惚れしてしまって衝動買いしたのだけれど、10年もたつとその女の人はほとんど見えなくなってしまった。
女の人の姿がほとんど見えなくなったなと気づいた時、もうこの財布の命はほとんど消えかかっているんだと悟った。
というわけで、私は今日、財布を買わねばならない。今日じゃないといけない気がするからだ。
でも、今日お気に入りの財布が見つかるとは限らない。このクリムト財布を10年使ったということは、今日買いにいく財布だって10年使う可能性があるということだから、適当に選ぶわけにはいかない。「これだ!」と思うお気に入りのものを選びたい。
繁華街に出ることが苦手だから、だいたいのものはネットショップで買っちゃうのに、財布だけはそれではダメなような気がした。今日だけは、自分の足で歩いて探して、自分の目で見て、自分の手で触って決めることに意味があるような気がしたのだ。
気合いが入りすぎている。10年ぶりに買い換える財布といっしょに、自分まで生まれ変わるような気持ちなのかもしれない。大切な物を買うときには、多かれ少なかれその新しいピカピカな物といっしょに、自分もなんだか新しくなるような感覚がするものだ。
それはきっと、「出会い」だ。
誰かと出会うことで人生が変わることがあるように、物と出会い、その物と日常生活を共にすることで、やっぱり人生がほんの少し変わることがあるんだと思う。
私と今日出会うはずのお財布は、どんな財布なのだろうか。ワクワクしながら久しぶりに電車に乗り込んだ。
繁華街に着いて、まずはクリムト財布を買ったお店「HIRAMEKI」に行った。私はほとんどここで買うことをイメージしていたのに、なんだかしっくりくる財布が見つからなかった。HIRAMEKI以外に目星をつけていなかったので、お店を1つ1つ見て回るしかなかった。
3時間くらいノーストップで歩き回ったのにしっくりくるものが1つも見つからなかった。幼稚園のお迎えの時間は刻一刻と近づいてきている。もはやここまでか。
「ここで見つからなかったら、今日はあきらめよう」と入ったお店にも結局しっくりくるものはなかった。私は泣く泣くあきらめることにして、近くのカフェに入ってパンパンになった足を休めた。
幼稚園のお迎えの時間まで、まだもう少し時間があったけれど、ゆとりをもって駅に向かった。そのとき、なんだか気になるお店を発見した。ほとんど吸い込まれるようにその店の中に入っていくと、お財布がたくさん置いてあった。
あ、見つかった。ここで買おう。
一瞬でそう思った。そしてほとんど迷わず、そこで新しい財布を買ったのだ。
どうやらほしいものは、肩の力が抜けた頃に手に入るようだ。あきらめた後にすんなり手に入ってしまった。
ダコタの赤色の財布。
私とあなたは出会うことになっていたのか、それとも、私が望んだから出会ったのか、あなたが望んだから出会ったのか。
なんにせよ、今日から長いお付き合いがはじまります。どうぞよろしくおねがいします。
心の中で、そうつぶやいた。
スピリチュアル好きな私に多大なる影響を受けている旦那さんが「満月で財布を浄化するといいらしいよ」と言った。
2人でベランダに出て、真っ暗な空を見上げた。もくもく雲が多すぎて、満月は見えなかったけれど、満月のエネルギーは地球に満ち満ちているはず。財布を空にかざすという怪しい儀式を行ったあと、2人でサマージャンボ宝くじの結果発表を確認した。
新しい財布と、満月と、宝くじ。
もう当たっている気しかしなかったけれど、もちろん当たっていなかった。
でも、なんだか今日は非日常が楽しかった。非日常を過ごすことで、日常にパワーが湧いてくる。
新しい財布といっしょに、明日からも日常をコツコツ楽しもうと思う。
そして約10年間、財布を出すたびに目を合わせた、裸の女の人との別れがさみしい。
10年間、どんなときもいっしょにいてくれてありがとう。感謝を込めて。
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