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「今は 積極財政一択」の理論(まとめ)

掲題で連載したものが想定より多くなりましたので、要点をまとめます。
タイトルの数字は、連載での番号に対応しています。


1.プライマリーバランスの基礎知識

「国債金利<名目GDP成長率」ならば、対GDP比国債残高は減少

「対GDP比国債残高」を増やさないようにするのが肝要

プライマリーバランス黒字にこだわるべきではない
額が増えても比率が小さくなれば、金利上昇での影響は小さくなる

現状、プライマリーバランスが多少赤字でも「対GDP比国債残高」は減少

最近では、対GDP比プライマリーバランスが-4.5%の赤字でも、対GDP比国債残高は増加しない。(「国債金利<名目GDP成長率」のため)

2.いつまで積極財政を維持するか

財務省が見逃している点

「金利=名目経済成長率」は常に成り立っているわけではないこと
名目経済成長率は財政支出の影響を受ける(名目経済成長率は財政支出の関数)こと

以下を達成するまで積極財政を続けるべき

(1)長期金利3%
(2)賃金上昇率継続的2%超水準
(3)部門別貸借で企業部門の借入が増加
(4)デフレギャップの解消

(3)について補足します。

「中長期の経済財政に関する試算(内閣府)」
プラスが純貸出・マイナスが純借入

一般政府部門」は財政収支(プライマリーバランス-利払費)、
海外部門」は経常収支(経常収支”黒字”がグラフの”マイナス方向”)、
企業部門」は借入増がマイナス方向、借入減がプラス方向、
家計部門」は預金増がプラス方向、預金減がマイナス方向
で、これら4部門の合計が常にとなります。

これは、
(貯蓄-投資)+(租税-政府支出)=(輸出-輸入)
という投資貯蓄バランス(ISバランス)の恒等式と対応しています。

家計部門、海外部門の水準が今後もさほど変わらないと想定すると、一般政府部門プラスとなるためには、企業部門がマイナスとなっている状況(すなわち借入を増やすような経済状況)にする必要があります。

「我が国財政と経済の関係を読み解く」立法と調査 / 参議院事務局企画調整室 編より

上図は、少し前の期間についてのグラフです。(この4項目の他に金融機関の要素があるはずです。)
一般政府部門がプラスだったのは、バブル期の企業部門の借入が旺盛だった時期に遡る必要があります。

3.財政ファイナンス・MMTとの違い

ここで言う積極財政は、財政ファイナンスやMMTを前提としたものではありません
財政ファイナンスは、金利が0近辺以下の場合に有効と認識しています。
MMTとは、経済の真理に近い部分では共通点はあるものの、重要な点での違いもあります。

MMTで強調している真理
自国通貨を発行できる政府は、自国通貨建て国債の額面金額について債務不履行になることはない。ただし、資源制約の生じない、インフレの生じない範囲での国債発行を前提としている。

4.対GDP比国債残高推移の要因分解

外国の事例

オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・イギリスの戦後の債務比率減少期において、債務比率減少に占めるプライマリーバランス黒字の効果は1/3程度で、残りの多くは金利・成長率差要因GDP成長率-利子率>0)。

日本の債務増加の要因分解

対GDP比国債残高増加の各要因の累計(%ポイント)

アベノミクス後は、金利・成長率差要因は債務減少の効果を示しています。
緊縮財政は成長率鈍化をもたらし、この効果を無くしてしまいます。

5.緊縮財政で債務比率が増加する逆説

国債発行を抑制して、投資を減少、その結果としてGDPが減少すると、対GDP比国債残高は、却って上昇します。
これは「対GDP比国債残高>100%」であることも主たる原因となっています。

6.国債残高の何を恐れる?

「政府の財政破綻」や「ハイパーインフレ」が心配されるのでしょうが、以下の状況もあり、現在はそのような状況にはありません。

利払費の対GDP比率は低い
純債務ではダントツの多さではない
対外純資産が多い
国内で保有

財務省に訴えたいのは、
プライマリーバランスは、それ単独で考えてはいけない
プライマリーバランス黒字化は、時期を決めるのではなく、どういう経済状況となっている時なのかを決める必要がある
ということ。

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