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poconen
気になる言葉(9)
新編「普通をだれも教えてくれない」 鷲田清一 より引用
前略
理解できない、だからじぶんには関係ない。こういう思考法に知らないうちに染まっていることがある。受験の戦略としてならわかる。すぐに答えの出せそうにない問題にかかずらわっていたら、時間がどんどん過ぎてゆく。で、解法の分かるものだけで勝負する。が、ほんとうにリアルなものは、理解できないことを理解でないままに、問題として感受しつづけるなかではじめて触れられるものではないか。そして、ほんとうを言えば、この作品も最後は無理やり結論をだしている。
学校であれニュータウンであれ、ひとが良かれと思ってすることがその正反対の帰結をもたらすということがよくある。「心やさしい」配慮の集積が「不寛容」な空間をつくることもしばしばある。
リアルは一筋縄ではいかない。じぶんたちの生存の根にくい込んでいる矛盾であるから解決は難しいが、しかしすでに取り返しのつかないことが、刻々と起こりつづけている。そのことがアニメというフィクションによって伝えられるところに、時代のアイロニーを感じる。
文庫版あとがき より
前略
傷からのほどきは、だから、傷を忘れることにあるのではない。自分を傷つけた場所から離れるのではなく、あえてその場所に戻ること、そこにしか「解放」はおそらくない。傷を舐めるそういう文章を、私はこれからも書き続けるだろうし、書き続けなければならないと思う。
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