PYPにおけるMath
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、PYP校として教科融合型な学びをどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。
◎ 似たような疑問がある方に読んで欲しい!
・算数をどのようにして探究と融合させるのか?
・探究と学校行事をどのように融合させるのか?
・算数が実社会で役立つスキルとして実感できる授業とは?
・概念で教科を横断する授業づくりとは?
・算数で問題解決型の課題をどのように設計するのか?
Unit1のカリキュラム
PYPでは概念型カリキュラムの考え方が取り入れられており、ウィギンズ(Wiggins, G.)らが提唱している「逆向き設計」論を参考に設計をしています。「逆向き設計論」では「子どもたちに理解をもたらす」ことが重要視されています。逆向き設計をエリクソンとラニングが提唱する「知の構造」と「プロセスの構造」に当てはめたものがこちらの図になります。
このnoteのキーワードは「混ぜる」
しかし、ここで重要になってくるのは、「トピック」で混ぜるのではなく「概念」で繋ぐことです。上の図で言うと、一番右のショートケーキのイメージです。今回のnoteでは、概念でどのようにMathと探究を融合させていくのかについて実践を共有していけたらと思います。
まずはMathとして大切にしたい考え方はこちらです。
今回提案するのは、子どもたちが日常生活の中でMathを使うことを意識できるようになるために、探究と学校行事と算数科の融合を行いました。
また、授業ではガイドされた探究(Guided inquiry)の考え方をベースに、生徒主体の学びと逆向き設計のカリキュラムの間を行き来しながら構成主義的な学びを目指していきます。
導入1(OPEN)
この学校の文化として高学年(在校生)がサニーサイドの文化を下学年に伝えていく特徴があります。そこで、今年度は5/6年生が最上学年ということで、遠足のルートを決めることになりました。そこで、今回のユニットでフォーカスする概念で学校行事とMathを繋いでいきます。
ここではユニット1の重要概念である「責任」「視点」と関連概念である「インクルーシブ」の概念で繋ぐための条件がここに書かれています。また、Mathを通して「論理的な思考力」を育めるように複数の条件を同時に満たせるミッションを課し、全ての条件を満たすルートを考えることを通して、今回のユニットで育みたい概念的理解を実生活で活かせるような課題設定にしました。
導入2(IMMERSE)
まずは「inclusion」について、図を見ながら「インクルージョンとは何か?」について他のものと比較をすることで考えていきました。そして、今回の遠足では、Inclusionを考えるときに誰が含まれており、どんな視点で考えるとインクルーシブなコースの設計になるのかについて視点を出していきました。更に、具体的にコースを考えるときに大事にする考え方として、「歩く速さ」「みんなで意見を出して決める」「平等」「同じ立場で考える」「一人も残さずに歩く」等のポイントが出てきました。
展開1(EXPLORE)
まずは、実際に歩くコースである百年公園の地図を配布し、直感で10分以上重ならない3つのルートをチームごとに考えてもらいました。この時点では、歩く速度については考えず、全ての学年にとって魅力的なコースをブレストベースで考えてもらうことからスタートしました。
それぞれのコースの合計距離や魅力(メリット)についてまとめることができています。1枚目の写真はそれぞれのルートにタイトルがあり、より魅力が伝わりやすい工夫もされていました。ここまでくると子どもたちから「1年生の歩く速さについて決めないと時間が決められない。」「大々1km歩くのにどれくらいの時間がかかりますか?」という声が上がってきたところで速度の定義に移っていきました。
展開2(IDENTIFY)
実際に20mを中庭で測り、チームごとに1年生の歩く速度を想定し、時間を計測して速さを考えていきました。このときに、速さというものが単位時間あたりに進む距離という概念についても混ぜて学習をしていきました。また、3チームの結果から、最終的にどのように1年生の歩く速さを定義するのかで、3つのチームの平均をとるというアイデアが出たので、平均の考え方を取り入れて分速34mで決定しました。この課題の中心になってくるのは、タイムテーブルであり、タイムテーブルを作るには速度の情報が重要になってくることをここでフォーカスしました。
展開3(GATHER)
ここまでで、課題でフォーカスする「inclusive」、「速度」の概念の共通理解が図れたところで、いよいよ考えてきたルート、計測してきた距離、速さから所要時間を計算し、考えた情報を1つにまとめていきました。ここから、チームごとに考えたルートのプレゼンを行い、3つの重なり合わないルートを決めていきます。
子どもたちの探究は続いていきます…!!!