【学級の中で対話の文化をつくりたい方へ】クラス会議で問題を解決していくプロセス
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究の考え方を応用してどのようにクラスづくりを実践しているのかをまとめていけたらと思います。まだまだIB教員2年目の実践ログなので、どのような場面に難しさを感じながら概念型探究の授業にトライしているのかについてまとめていけたらと思います。
今回のnoteのテーマは「クラス会議」になります。クラス会議の実践はすでに書籍等でも紹介されており、以下の記事がとても参考になります。実際に太一先生のクラス会議のセミナーに参加したこともあり、初めましての人とも安心して関われる雰囲気と、ちょっとずつ自分の言葉を場に出せる心地よさを今でも覚えています。自分が体験したことは再現性が上がると思うので、本に加えて、太一先生のセミナーに参加して体感してみることをお勧めします!
さて、実際に体験したことは実践でやってみないと掴めないと考えているので、セミナーを受けて毎日クラスでサークル対話の時間を小さくても開くことを大切にしています。
毎日5分のサークル対話
毎日学校に来ていると、日々気分の浮き沈みや体調の変化はあると思います。そして、心身の状態はコミュニケーションにも影響を与えるので、自分の心身の状態を場で毎日シェアすることで、お互いの状態の理解の一歩につながります。例えば「今日はちょっとイラついている。」「いい感じ。」「ちょっと眠いかも。」「ちょっと喉が痛い。」というように、周りに左右されず自分の率直な気持ちを場に出せることを大切にしています。それによって、相手の状態に合わせてコミュニケーションをちょっと変えてみるヒントになったり、また自分の状態をシェアすることでお互いに気にかけ合うことで安心感にもつながっています。
こんな感じで日々のクラスでのサークル対話はライトに行い、時々全体でサークル対話で話したい議題が出てきたときに、いつものルーティーンで心身の状態をシェアした後にトピックを出して話し合う時間もあります。私がクラス会議で開く場には大きく4種類あります。この場というのは、目的に応じて着地点があったり、なかったり、また先生が議題を出すこともあれば、子どもの声から議題が生まれることもあります。
さて、今回はこの4種類の場について具体的な実践をシェアできたらと思います。
① システムをつくる場
まず、クラスづくりで外せないのは、学級のシステム(掃除当番や給食当番)づくりにおける考え方やプロセスを事前に意図をもって設計しておくことだと考えています。もちろん、子どもの発達段階や先生によって力を入れたい場面は異なるので、ここも大前提として正解はないと考えています。私は、学級のシステムをつくるプロセスが学級で育みたい文化に影響すると考えているので、「どんな学習コミュニティをつくりたいのか?」という問いを考え、学級でのシステムづくりのプロセスは丁寧に行なっています。
「どんな学習コミュニティをつくりたいのか?」
決められたシステムの上で子どもたちが責任をもって遂行する考え方を育むことも大事ですが、このシステムをつくるプロセスが一人一人の納得感に繋がり、この納得感がシステムを機能させると考えています。そこで「どんな学習コミュニティを作りたいのか?」という問いに対してですが、私の中では次のように考えています。
具体的には、給食当番の決め方についてですが、4月の最初にかっちりとした給食当番のシステムを決めるのではなく、自分たちのコミュニティの文化にあったシステムを試行錯誤するプロセスを大事にしています。例えば、今年度に関しては、これまで単式学級で何年もクラス内で文化とシステムが育まれてきた2つの学年が1つになり、それぞれで異なる文化とシステムで動いていたので、新たなシステムをつくる必要がありました。このときに、多数決ではなく、メリットとデメリットをお互いに出し合った上で、「どっちもお試しでやってみよう」ということで1週間交代でどちらのシステムも試していました。片方はバケツリレーで片方は完全自由スタイルでした。一旦、どちらもやってみたことで、完全自由スタイルになりました。しかし、うまく機能せず、問題を解決するプロセスに入りました。コミュニティが変われば、以前は機能していたシステムも機能しなくなることが起こりうることを学んだのではないでしょうか。
② 問題解決の場
子どもたちで試行錯誤をしてつくったシステムに納得感が一人一人にあったとしても、うまく機能せず他の人に迷惑をかけてしまうことが起こりえます。実際に給食当番の完全自由スタイルにすることによって、他力本願になり、給食室に食器類の返却が大幅に遅れてしまい、迷惑をかけてしまうことが起きました。(私はこの状況は知りません。)
生徒指導案件を終えて、私が教室に入ると、18人全員でクラス会議を自分たちではじめている姿が見られました。リーダーシップを誰かが発揮して、全体で話し合う場をつくっていました。
自分たちで問題解決のプロセスを考え、問題の本質を全体で共有し、システムを構築していくプロセスを生み出していたので、私は介入せずに眺めていました。
もちろん、自分たちでつくったシステムを試してみて機能せずに他の人に迷惑をかけたことは事実として良くないにしても、学校という場は、自分たちでつくったシステムのエラーに対して自分たちで試行錯誤して問題を解決していく力を育んでいく場だと考えると、貴重な学びの場になっていました。自分たちでシステムをつくることで、責任感を担任と共に育むことができ、結果的にクラスの中での問題を担任一人が感じるのではなく、子どもたちも責任を感じ解決に向けてアクションを自分たちで起こす状況が生み出せているというのは、クラスの中に「共につくる」文化が育まれはじめているのを感じました。
③ 共通言語(理解)をつくる場
・エッセンシャルアグリーメント
国際バカロレアの学校では、学級開きの最初のクラスアクティビティがエッセンシャルアグリーメントづくりになります。最初に学級のシステムをつくるのではなく、まずはクラスで大事にしたいことを共有していきます。このアグリーメントも子どもたちが主体となってつくり、全体で合意をとるので、学級における重要な共通言語になります。
また一度つくったエッセンシャルアグリーメントを学期ごとにアップデートすることも大事なプロセスです。以下のnoteにまとめています。
・エッセンシャルアグリーメントの上に共通言語を育む
学校生活をしていると様々な問題が学校コミュニティの中でもおきます。そのときに、個別で1つ1つアプローチをすることも大事なのですが、「なぜその状況が起きるのか?」「似たような構造で起きる同じような問題って経験したことないかな?」というように具体的な事例の抽象度を1つ挙げることで、全体にとっての共通理解を図れるような時間も大切にしています。そのときに、クラスで決めたエッセンシャルアグリーメントと繋げて話をすることを大切にしています。
例えば、学校全体の場において「5/6年生の下学年のサポートのあり方が学習のサポートではなく、面倒のような感じになっている」課題が起きていたり、「学級として仲は良いけど、関係性が固定されて仲の良い人が固まっている集団のような構造になっている」課題が起きていました。この課題も、1学期間はまずは安心できる環境をつくっていく上で必要なプロセスでもありながら、慣れによって、学習コミュニティとしてアップデートされていない現状が起きていました。似たような課題が色々な場面で見られたので、エッセンシャルアグリーメントにある「レべアプ」に重ねて、学習集団のレベルアップということで、「仲の良いクラスから学習コミュニティ」にレベルアップする方向性を示しました。
④ 哲学対話の場
また、問題が起きそうで起きていないときにこそ、「答えのない問い」に対して自由にじっくり考えることでコミュニティとしての理解を高めることも大切にしています。初回の哲学対話では、実際に校外学習の中で分かっているルールがありながら、ルールを破っていることを見ている人も見逃している状況が起きたので、この事例を具体的に挙げて、「ルールは何のためにあり、ルールに対してどのように向き合うと良いのか?」について2つのグループに分かれて考えたことをシェアする場をつくりました。
実際に大きな問題が起きる前だからこそ、子どもたちは自分を守るための発言というよりは、率直に自分の思うことを場に出していました。例えば、「ルールは安全を守るためにあることは理解しているけど、納得のいかないルールが勝手に決められていることもあって…」と本音が出てくる場面もありました。もちろん、大人が子どもの安全を担保できるように環境を整えることも重要であり、だからこそルールをアップデートするときは必ず全体の場でシェアし、合意のプロセスはとれなくても、子どもたちに丁寧に「なぜルールをアップデートする必要があるのか」を理解できるように説明し、そのための新しいルールをリクエストするプロセスは大事にしています。
さて、今回のnoteでは日々行なっているクラスでの会議を4パターンに分けてまとめてみました。クラス会議と言っても、置かれている環境、目の前の状況に合わせて目的も場の開き方も変わってくると思います。
大事なのは、クラス会議というのが一部の人だけの意見でつくられるのではなく、一人一人が参加ができる環境があるかどうかが重要だと思います。
何かのヒントになればと思います。
いつんも読んでいただきありがとうございます。
moimoi!