Vol.14 フィンランドで学んだ「ゆっくり、はじめる」考え方
このnoteでは、フィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。フィンランドの教育現場を初めて訪れた2017年から7年が経過し、緩やかにフィンランド社会の変化を学校現場を通してみてきました。今回のnoteでは、この夏、2024年の8月2日から19日に日本全国から集まった高校生、大学生、社会人、教員の方と学校現場や町を様々な視点でフィールドワークをする中で発見したことを記録として残していけたらと思います。
◎ こんなあなたに
・夏休みが明けてこれから新学期を迎える先生方へ
・北欧の教育観を学校現場に取り入れることに興味がある方へ
・子どもたちと教室内でアグリーメントの文化を育みたい方へ
・安心できるクラス環境を育みたい方へ
今回のnoteのテーマは「ゆっくり、はじめる」です。この夏フィンランドの学校現場を訪れた時、学校は新学期が始まった第1週目でした。職員室に入ると、新学期に向けていつもより慌ただしい雰囲気と、10週間の夏休みを経て、長い休みからの変化に少し疲れが表情に見られ、夏休み明け初日の雰囲気は、日本もフィンランドも同じような雰囲気を感じました。
・フィンランドで見つけた新学期を迎える考え方
そんな中で、新学期を迎えるにあたり、先生方の大切にしていることを聞いてみました。まずは、次の質問をしてみました。
Q. 子どもにとっての幸せとはなんですか?
「子どもにとっての幸せとは何か?」の考え方をベースに具体的に見てきた景色を共有していきます。
Q. 新学期初日に子どもたちを迎える上で大切なことは何だと思いますか?
考え方として、夏休みが明けて、先生方も少し気持ちが追いついていないように、久しぶりに学校にくる子どもたちも気持ちが追いついていないことは起こりうると思います。この時に、新学期だからこそ気合いを入れて全体を引っ張る考え方もあると思いますが、今のクラスにある気持ちの状態も大切にしながら、徐々に場をはじめる考え方がより自然なのではないかと現場の雰囲気から感じました。職員室での先生方の表情は夏休み明けということもあり少し疲れているように見えましたが、最初の授業の雰囲気は、お互いにゆったり自己紹介をして始めたり、グラウンドで身体を動かしながらクラスメイトとコミュニケーションを取れる時間を大切にしているようでした。また、初日は学校が少し早く終わるなど、全体的にゆっくりはじめる考え方が根底にありました。
ネクストステップとして、フィンランドの学級でもクラスの中でAgreementを決める時間があります。
クラスの中で、共有したいことを決めて、同意できた人はサインを行い、同意ができない場合はディスカッションを重ねて最終的に全員が同意できるアグリーメントを決めていきます。最初にクラス全体でアグリーメントを決めて、全員で合意をすることで、クラスの中でアグリーメントの文化が育まれます。この時に大切なのは、教員がすべてを決めるのではなく、教員はファシリテートをしながら子どもたちが主体的に考え意思決定していくことが大切になります。これにより、先生の役割はできていないことを子どもたちに指導をするのではなく、アグリーメントをベースに立ち止まり、ふりかえる場をつくる役割を担うことになります。
・日本での実践アイデア
STEP1:夏休みの出来事のシェア
まずは、クラス全体で夏休みにどんな出来事があったのかをカードを使ってアクティビティ形式でワークを行いました。「最近の◯◯◯」ということで、1ヶ月間の夏休みをお題に合わせてシェアを行いました。1人1枚カードを持って、ペアでカードに書かれているお題についてシェアを行い、シェアした後にカードを交換することを繰り返します。クラスメイトの半分くらいとシェアをすることで、仲の良い人から少しずつ幅を広げていけることを大切にしました。
STEP2:クラス全体で身体を動かしながらコミュニケーション
この日にちょうど体育があったことで、2時間連続に設定して競争をベースにしたゲームというよりは、生涯スポーツをベースに誰もが楽しめるアクティビティを体育の先生に行ってもらいました。これも、事前に体育の先生に「みんながアクティビティを通じてコミュニケーションが取れるゆるスポーツ」 のようなものをリクエストして行いました。具体的には、3分間の体内時計リレーを行いました。これは6人チームになって、1人1周トラックを走るのですが、合計で3分間になるように作戦を立てて行います。チームによって戦略は様々で、6人が同じペース(30秒/周)で走るチーム、最初の5人が全力で走り(12秒×5=約1分)、最後の1人が2分かけて歩くなどのアイデアが出てきました。自分の持っているスキルに関係なく、全員がコミュニケーションをとりながら取り組めるゲームは最初のアクティビティとして良かったと思います。
STEP3:クラス全体でエッセンシャルアグリーメントをふりかえる
1学期に5/6年生全体で決めた8つのエッセンシャルアグリーメントがあります。
この時も、クラス全体で子どもたちが主体となって決めることを大切にしました。ここで子どもたちに任せられるのは、もちろんこれまでに自分たちで決めてきた経験もありますが、決めたものを実際にやってみて「見直す(修正する)」機会があるからだと思います。1年間ずっと同じアグリーメントでいくことが決まっていると、教員も最初から介入する気持ちが高くなると思うのですが、まずは子どもたちが決めたものでクラスを走らせてみて、振り返りを重ねながら一緒にブラッシュアップしていく考え方が背景にあると、少しずつ子どもたちに委ねることができるようになるのではないかと思いました。
本日は新学期始まったすぐということで、1学期に決めたアグリーメントをLEGOを使って行いました。頭だけで考えるのではなく、実際に手を動かしながら考えることで、色々なアイデアが思い出されることを大切にしました。
<ワークの流れ>
① まずは、8つのアグリーメントから1つを選ぶ
② LEGOで自分がそのアグリーメントについてできたことをLEGOで表す
③ グループ内でシェア
④ 考えたことを言語化して付箋(黄色)にメモする
*メンバーを変えてもう1セット行う
*次にメンバーを変えて、できなかったこと、難しかったことをLEGOで表し、同じようにグループでシェアし、付箋(ピンク色)にメモをする
1学期の振り返りを行なった後に、今度はマイアグリーメントの目標を具体的に考えてもらいます。それをクラスメイトにシェアをすることで、今のままのアグリーメントでいいのか、或いは何か変更したりブラッシュアップした方がいいのかを来週考えていきます。
今回のnoteはフィンランドの学校現場の新学期の始まり方から学んだエッセンスを日本の学校現場でも活かせそうなアイデアをまとめてみました。
このnoteが、これから夏休みを明けて新学期を迎える先生に何か肩の力が抜けるヒントになればと思います。大切なのは「ゆっくり、じっくり、はじめること」エンジンは後からでも徐々にかけられると思うし、スタートダッシュがゆっくりでも、遠くに長く走り続けられるようなコミュニティ内の関係性構築が大事になってくると思いました。
いつも読んでくださりありがとうございます。
moimoi!
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