PYP Exhibitionに向けた準備
PYP エキシビションとは?
また、PYPでの「エキシビション」では、以下を含む重要な目的があります。
今回は、冬休みの課題で夏休みに引き続き、個人探究の課題を行いました。背景としては、子どもたちが4年生の新学期に自分たちでこの1年間大切にしたいこと(Essential Agreement)を決めたときに出てきた言葉がこちらでした。
そこで、夏休みの課題では、まずは興味を趣味に変えて10日間追求する課題にチャレンジしました。自分の好きなことだからこそ自由に探究することを大切にしました。この時は、夏休みの経験をまとめたものが多い印象でした。
▼ 子どもたちの趣味チャレンジの例
そして、今回の冬休みは趣味を探究にする課題にチャレンジしました。
ちょうど、冬休み前のLearner Profileが「探究する人」でもあったので、子どもたちと「探究って何だろう?」という問いについて1ヶ月間考える中で、「探究とは植物のサイクルのようなものじゃないかな?」という考えが出てきて、植物のサイクルに合わせて自分が探究したいことを当てはめて考えてみました。
そして、探究のサイクルが少しずつ見えてきたところで、PYPエキシビションで必要になってくる「探究のプロセスをつくる」スキルにフォーカスするために、まずは自分がやってみたいことや気になること(興味関心)を探究に昇華させるために国際バカロレアのカリキュラムをつくる上で必要になってくる要素を少し噛み砕いて子どもたちに以下のフォーマットで考えてもらいました。
ここでのポイントは、「探究を通して誰かに伝えたいメッセージ」或いは、「探究を通して自分自身が理解したいこと」を言語化するところまでを探究の目標としました。これは、気になることを調べて二次元の知識やスキルで終わらせるのではなく、この探究で学んだことを別の場面でも応用できる概念的な理解まで引き上げる仕掛けとして取り入れてみました。
国際バカロレアのカリキュラムの設計でも、先に子どもたちに育んでほしい概念的理解を言語化し、そこに向けて逆向き設計を行っていきます。カリキュラムの設計は演繹的ですが、実際の授業は帰納的に子どもたちと学びを作っていくことを大切にしています。今回は子どもたちにも先に自分自身が理解したいことを言語化し、自分自身が理解したいことを理解するために必要な探究の流れを考える順番で行いました。子どもたちの中には、やりたいことがあったので、探究の流れから自分自身が理解したいことを言語化する順番でアプローチをした子もいました。
そして迎えた冬休み明け。
子どもたちから出てきた言葉は「早く発表したい!」「早くみんなの発表を知りたい!」という言葉でした。ここでも全体での発表にするのかワークショップ形式でよりインタラクティブな発表の場にするのか悩みましたが、子どもたちの相互作用のやり取りやそこから生まれるフィードバックが出やすくするためにも、ワークショップ形式で行いました。
本当は全ての発表を紹介したいのですがいくつか紹介できたらと思います。
◎ PYPで学んだ複数の教科のスキルを融合させた探究
「怖い話の作り方の探究」
探究の計画段階では、怖い話を作るための話の構成の仕方をリサーチし、実際に怖い話を作ってくると冬休み前の伴走段階では聞いていました。しかし、実際の発表では「人がそもそも怖いと感じるのはどんな時か」を家族にリサーチして、リサーチして分かったことを算数で学んだ棒グラフに表すスキルを使って表すことができていました。そこで分かったこととして、怖い話は内容だけではなく、状況も重要であることを発見し、怖くなる状況をつくるための方法として、BGMに着目し、さらに音の波長によって人は前向きな気持ちになったり、ネガティブな気持ちになる研究結果と繋げることで、ネガティブな気持ちになる波長を鍵盤ハーモニカでBGMにしていました。探究のまとめとしては、人が前向きになる波長があることを知り、みんなが前向きになる話を考えてみたいという当初の探究とは反対の次のアクションが見えてきており、学校で学んだ教科のスキルを融合させたとても興味深い探究になっていました。
◎ ユニットで学んだ知識とスキルを活用して学びを広げた探究
「沖縄と岐阜の水の管理方法の違い」
Term2で「水の利用と管理は、地域の開発と持続可能性に影響を与える」という概念的理解の探究を行いました。ここから生まれた「場所も環境も全然違う岐阜と沖縄の水の循環は違うのか?」という問いについて実際に沖縄旅行が探究のフィールドワークにも生まれ変わった事例です!
PYPのカリキュラムで大切にされている概念レンズを通した学びを行うことで、この児童は場所が変わってもこの時に使った概念レンズを使って別の場面でも探究を広げることができていました。このユニットでは重要概念を関連と原因と責任に設定し、関連概念として「サイクル」を設定していました。まさに、学校で学んだ知識とスキルを別の場面で応用して探究を広げることができていました。
◎ 自分が続けている好きなことを探究にした事例
この探究のスタートは「どうしたら絵がうまく描けるようになるのか?」そんな疑問から生まれた探究の問いでした。しかし、実際に冬休みの探究を終えて考え方が変容しているのが伝わりました。きっかけの1つとして、リサーチで「14歳からのアート思考」という本を読んだことが探究の前後で考え方に変容をもたらしたのかなと思いました。「人それぞれ下手、上手いと思うかもしれないが、その絵には価値がある。」発表を聞いた友達もこのメッセージを聞いて「確かに」とうなずく姿も見られました。探究を通して自分のものの見え方や考え方が変わったことを言語化して伝えることができていました。
◎ 自分のこれから選択する進路の準備をテーマにした探究例
「海外の学校との違い」
探究テーマを考える中で、最近考えていることとしてPYP卒業後の進路について考える時に、海外の選択肢もあることから海外の学校との違いについて調べる進路の選択を考える探究を行っていました。探究を進める中で、日本の教育システムと比較することで、違いについてまとめることができていました。自分自身の進路を考える時に、親から与えられた選択肢だけでなく、自分でもリサーチした上で選択に対して納得感を持てるような探究の一歩を踏み出したように思えました。
◎ スキルの探究
「チアリーディングで共通するコツ」
スキルを向上させるための具体的な探究のプロセスを考えて実践することができました。難易度の高い技ができるようになるために、自分の感覚だけで練習を重ねるのではなく、チアで共通するコツを見つけるために、先生にフィードバックをもらったり、自分で必要な知識のリサーチを行い、知識とスキルを掛け合わせてスキルを高めていっているのが伝わってきました。ここでは、単純に1つの技だけでなく、自分の動きや課題をメタ認知することで、他の新しい技に挑戦する時にも必要なスキルをこの探究を通して見つけたようにも思えました。
▼その他の面白い探究テーマ
・指スケボの探究
>指スケボを極めるために基礎となるスキルをリサーチしコツを自分の言葉でまとめ、動かすコツを認知しながら練習を重ねていました。
・肌に優しい化粧の探究
>化粧の方法だけでなく、自分の肌に合わせた化粧の方法を洗顔から化粧、化粧を落とすところまでの重要なことをリサーチしまとめ、更に化粧するスキルも実践することができていました。
・芝犬の特徴の探究
>芝犬が他の犬と比較した時に特徴にどのような違いがあるのかを自分の言葉で説明することができていました。
・全てのマジックに共通するコツの探究
>マジックに共通するコツ(パターンのようなもの)を探究し、マジックを披露することでコツを生かすことができていました。サッカーにも応用できそうと話していました。
・ゴキブリは本当に菌を持っているのか?
>最初はゴキブリの赤ちゃんを教室で発見し、赤ちゃんから飼うことでゴキブリそのものは菌を持っていないのではないことを調べたいところから生まれた探究でした。この探究で、ゴキブリへの先入観が教室の中で少しずつ変化しているのを感じます。
・クリスマスの起源について
>歴史のユニットで学んだ、歴史的な視点を取り入れながらクリスマスの起源について探究することができました。
・生き物図鑑(生物多様性)
>この探究を通して、ミツバチが生物多様性にもたらしている重要性について気づき、震災で多くの方が家を失ったことで、また森林の伐採が進むことで人間だけでなく虫や生き物にも与える影響について探究したことを別の場面でも活かすことができるようになっていました。
発表の時は、以下のシートを用いて相互評価を行い、全ての発表を終えた時に、自己評価も行いました。
友達の発表を見ることを通して、自分の探究の成果を客観的に見ることにつながっていました。自己評価の中で「自分は1つではなく複数のものの特徴をたくさん調べたので、次は1つのことをつなげたり、深く探究したいと思いました。」と友達の1つのことを追求する発表を見て探究の深め方を関わりの中で気づいているのが振り返りから見とることができました。
いよいよ1年後にはPYPの集大成であるエキシビションがあります。ここに向けて普段のユニットの中でも自分でテーマを見つけ、リサーチし、自分で複数の事実から関係性を言語化し、まとまりを作り、パターンを自分で発見することができ、世界を構築することができる機会を作っていきたいと思いました。
子どもたちの探究は続いていきます。