匂いはあなどれないよ
朝のテレビのお天気コーナー。通勤の人が行き交う新宿駅で、ダウンジャケットの女性リポーターが、マイクを持って「雨の匂いがしています」と話していた。
僕は、千早茜の小説を思い起こして、匂いはあなどれないよと独りごちた。
透明な夜の香り/千早茜
主人公は、森の中に立つ古い洋館に家事手伝いとして働き始めた女性、一香。
一香が心を許す洋館の主は、調香師の朔。客のリクエストに応える香りを作る職人だ。
朔の意図で生成された香りは、彼の顧客の人生を左右する。
鼻が利くほうではないけど、僕だって、海の匂いとか草いきれとかで立ち上がる記憶はある。