「土を喰らう…」の沢田研二はかっこよかった。
長野の山奥でひとり暮らす作家の日々を描いた映画、「土を喰(く)らう十二カ月」を観たのは、中江裕司監督のインタビュー記事を読んでのこと。
野菜を育て、山菜を採り精進料理を作る。糠漬け、梅干し、干し柿。自然を愛で淡々と暮らし四季が過ぎていく。老人作家を演じたのが沢田研二。
中江監督の記事に「沢田さんに出演オファーしたら、『オーデションをしてほしい』という返事だった」という内容が書かれていて、そのことが妙に気になり、配信で観ることにした。大袈裟に書けば、沢田研二の美意識に興味を持った。
沢田研二をテレビ音楽番組で連日観ていたのは中学生の頃。奇抜な衣装やパフォーマンスが人気だったけど、僕はまったく惹かれなかった。一回り上の世代にとってはグループサウンズのアイドルヴォーカルの印象のはずだ。
後年メディアにあまり出なくなった彼は、たまに「あの人は今」的に紹介されたけど、正直「元アイドルの醜態を覗いた」的な切り口だった。ボサボサの髪、崩れた体形、少し前は公演のドタキャンのニュースもあった。
そんな印象の反動、というはあると思うけど、「土を喰らう…」の沢田研二はかっこよかった。エンディングに流れた歌声も沁みた。
75歳の沢田研二が輝いていた。
都会暮らしの「PERFECT DAYS」。田舎暮らしの「土を喰らう…」
映画「PERFECT DAYS」でも考えさせられた個の自分と社会との関係。
役所広司からも沢田研二からも伝わった。
いかに死ぬかは、どう生きるかだと。
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