衝撃 途中でもう辞めようと思った小説
「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ/文春文庫)
横浜の郊外で、祖父母や両親兄弟に囲まれ庶民的に暮らす長女、女子大生美咲。祖母の教えでトイレ掃除も日課だ。
男子東大生つばさは次男。兄も東大で、農林水産省に勤務する父親と、無農薬野菜のサンドイッチや大豆ヨーグルトを作るような母親と広尾の官舎に住んでいる。
そんな2人の日常が繊細に描写され惹きこまれていったが…。
実は、一方で一線級の作家らしくない読みずらさと違和感も最初の頃から感じてはいた。が、次第に結末を想像して胸がムカムカする気分の悪さが大きくなってきた。
正直、途中でもう読むのを辞めようと思った。
鬼畜じみた東大生による破廉恥事件なんてもう読まないでいい、と。
すごい小説に出会った。
真実を訴える力はフィクションにこそあるが、それは作家の力量なくして成り立たない。
「本作は、いやな気分といやな感情を探る創作小説です。…多くの人の裡(うち)で、このいやな気分と感情は無言で潜んでいるのではないかと思うのです。」
そう作家はあとがきで書いていた。
”事件”の引き金「東大ブランド」にも似たものが、誰にも、僕にも内在していると思いつつ、重々しい読後感。それにしても途中で辞めなくてよかった。
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