千早茜の「ひきなみ」
瀬戸内海の島で出会った少女二人の友情の話。シンプルにそう言い切ってしまいたい。
僕は、小学校低学年の頃の感情の記憶を呼び起こさせられた。
仲良しだった友達への嫉妬、仲良しが故に聞きたくても聞けなかった家庭の事情。あれは友情だったのか、憧れだったのか。
凪いだ海を走る船の後ろの甲板から見る「ひきなみ」。
白波のラインがずっと伸びていく光景が、遠い記憶とシンクロする。
作家が言うように、忘れていた記憶は僕の奥底に跡を残していた。
それにしても、この人の小説を読むと表現や描写、文章で泣かされる。