ふと書き出した旅の思い出
タイの山岳民族カレン族の集落へは、チェンマイから夜行バスで8時間のメーホーソンからオートバイで山道を行った。電気のない村の夜、僕の腕時計を物珍しそうに触る子供。その後ろにいた青年の肩にはマシンガンが担がれていた。
イギリスのサッカーは格別だ。住宅街のブリストルローバーズでも、ロンドンの荒くれサポーターで名高いミルウォールでも、港町のサウサンプトンでも、試合直前までサポーターたちはパブでビールを煽る。スタジアムでは大声を張り上げ、終了の笛とともに週末が終わる。
インド北西のジャイサルメールで赤痢に倒れた。すぐ来てくれるはずの医師が到着したのは丸一日経ってだった。服を脱がした僕の胸にワセリンのような油を塗りながら呪文を唱えてくれた。
健康ブームのアメリカ。サンディエゴ郊外のビーチはどこもジョガーでいっぱいだった。ベビーカーを押しながら走る女性も。
オフィス街でタバコを吸っていたらビジネスマンたちから蔑んだ目線を向けられた。
世界遺産イマーム広場が有名なイランのイスファハン。ホテル中庭のカフェは、深夜でも紅茶を飲みながら談笑する男たちで賑わっていた。女性は見かけない。
午後ミラノ郊外の古い食堂に入ると、トランプゲームに興じるオジサンたちが大勢いた。カードを置くテーブルに散乱しているバゲッドのくず。
トイレでは、アジアで見かけるのと同じ水を貯めた手桶が置いてあった。
マカオの街角。誘われるまま路地をつたい古いコンクリートビルの何階かに招き入れられた。女は、そこでシャワーを浴びろと洗面台の蛇口に繋いだホースを指差した。
はじめて見た巨大宗教画の数々。本物の迫力に圧倒されたルーブル美術館。人が集まるモナリザのちょうど後ろに掛かっていた、天使の昇天を描いた作品に見入った。
イスラム過激派が山地に潜伏しているというミンダナオ島。ザンボアンガで知り合った若者の家は水上集落の一軒だった。まったく言葉の通じない僕たちはとくに盛り上がることなく手振り身振りで交流し、しばらくして僕はバスで町へ戻った。
石畳と坂の町、ケーブルカーが似合うリスボン。食べ物も上手かった。帰りの空港までのバスを探していたが、言葉が通じない。「エアポート」を「アエロポルト」と発音したら通じた。
※2016年2月
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