じゃない方ゲー人による、平成ゲーム業界回顧録 #11
夏休みの課題として自分が書いた企画は「ドラゴンズヘブン」と名付けた、ファンタジーシミュレーションゲームで、当時流行り始めていた「シムシティ」や「ポピュラス」といった、いわゆる箱庭型の世界に神視点で介入する「ゴッドゲーム」といわれるシステムをベースとしていた。
プレイヤーは部隊を指揮する大魔導士となり、自軍が占領した街で兵士を雇用し、部隊を編成して、敵軍の占拠する街を制圧して部隊を強化していく、というのが基本の流れとなる。
このゲームの特長は、ここに第3勢力としての”モンスター”を介在させたことで、彼らは縄張りやモンスター間の力関係など、独自の生態系を有していて、プレイヤーの意思に関わらず行動し、状況によりゲーム上有利にも不利にも働くようになる。
具体的には、自軍の移動先にモンスターが徘徊していれば襲撃を受けて損害を受けてしまったり、逆に敵軍との交戦中にモンスターが乱入してきて戦況を大きく変えてしまう等、E川先生の言う”方程式を意図的に崩す”ではないが、プレイヤーに予想外のことをもたらして、スリルを楽しんでもらうという意図だった。
そしてこの「モンスター」の親玉ともいえる存在がタイトルの由来ともなっている”ドラゴン”で、彼はモンスターの生態系の頂点に位置し、他のモンスターとは比べ物にならない大きさや強さを持つ「力の象徴」として設定していた。
そもそも、僕には”ドラゴン”に特別な思いがあり、その強さやカッコ良さをいつか表現したいと思っていた。
幼少期に恐竜とかサメのような強くて怖いものに惹かれる子は多いと思うが、僕は中でも鷹や鷲、狼といった孤高の存在により惹かれていて、ゲームやファンタジー小説を親しむ中で西洋のドラゴンの意匠に心を奪われてしまい、ドラゴンの絶対的強さを体感できるナムコの”ドラゴンバスター”というアーケードゲームを延々遊んだり、高校の美術の課題で「ウィザードリー」というRPGに出てくるドラゴンのイラストを真似して描いたりと、次第に傾倒していった。
話を戻すと、企画したゲームは「理不尽な”絶対悪”としてのドラゴンが大暴れする様を表現したい」というのがテーマとしてあり、そのためには無慈悲に儚くやられる存在が必要だったので、軍勢を率いるゲームにしたのだった。
こう書くと、ドラゴンを暴れさせたいなら、ドラゴンを操作するゲームにすればよいのではと思われるかもしれないが、”俺TUEEE”ではなく、ドラゴンの強さや怖さを体感する”俺YOEEE”をやりたかったので、このようなシステムになった。
また、直接ドラゴンに戦いを挑むゲームにしていないのも同じ理由で、ドラゴンは畏怖すべき存在として描きたかったので、私利私欲でつまらない小競り合いをしている人々を無意味に破壊して去っていくという、人の力ではどうにもならない”天災”のような位置づけとして定義していた。
とはいえ、やられておしまいではさすがにゲームにはならないので、ドラゴンに対抗するための3種の神器的なアイテムを用意して、人々はそれらを奪い合っているという構図にし、アイテムの力を借りることでようやくドラゴンに太刀打ちできるというルールにして企画を完成させた。
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