朝起きたら右手が自分のものじゃなかった
その日、アラームなしでいきなり目が覚めた
むくっ
寝ぼけながら腹筋だけを使ってゆっくり起き上がった
すると自分の右手の感覚がなかった
浮腫んでいて、左手で触ってもなんの感覚もなかった
ただただあたたかく若干赤みがかったふわふわしたなにかだった
右手が自分のものじゃなくなった
そんな感覚に陥りながらも、寝ぼけていたからか焦りがなく、不思議と冷静だった
このまま右手が動かなくなったらけーたいでしか物書きができないな、手帳をデジタルにしないと
だったり
右の手のひらの頭脳線と生命線の対角に一つづつあるお気に入りのほくろがあるのにな
だったり
考えていた
我ながらのんきである
そんなことを考えながら動かそうと一応努力はした
だが動かなかった
だんだん事態の深刻さを理解し、申し訳程度だが固唾を飲んだ
するとびりびりと痺れを感じた
嫌な感覚だ
それと同時にたしかな血液の流れを感じ、さほど遠くないどこかに散らばっていた感覚の群れの個々が皆、意思をもち、元の持ち場に帰ってきた
おかえり
と私は静かに言った
もうどこにも行かないでね
そしてもう一度寝た
この出来事に意味づけをするのならば、当たり前のことに感謝しろよという神のお告げだ
おかげでその日以降たくさんの有り難い当たり前を見つける
せっかくこのような、できればもう二度と味わいたくない、
ほんま大事に至らなくてよかった、
ある意味有り難いそんな経験をしたからには、
これからの1.2週間は、
当たり前だと思ってるけど実はとてつもなく恵まれていることを見つける週間にしようと思う