2022年に見た映画5選ーいまだ言葉にならない「少年の君」
今年は、ずっと自分と対話する一年だったように思います。
自分がどういう人間で、どういうことで怒ったり悲しんだり、喜んだりしているのか。見つめてみると、案外自分というのは不確実で、一貫性がなく、透明で軽い。
なんだか、言葉に責任を持とうとしすぎたり、ずっと同じでなくてはいけないと思い込んだりしていたけれど、
要するにそういうのって、「誰かからどう見られるか」に集中した結果の選択と行動だったことに、気づきました。
自分って、結構やなやつ!
ここを認められたら、本当に心が軽くなりましたよ。
そんな奴が今年一年、こうして元気に20の年末を迎えられることは、本当にありがたいことです。公私共にお世話になった皆様、ありがとうございました。仲良くしてくださっている皆様、思い出してくださった皆様、ご縁を繋いでくださった皆様のおかげです。
大晦日の今日は、今後の展望でも述べようかと思いましたが、そういうテンションになりにくかったので、
この一年にみた映画をご紹介することで、皆様への感謝の気持ちとしたいと思います。ささやかな映画日記ですが、冬休みの「何みようかな〜」の参考になれば幸いです。
*「すずめの戸締まり」
言わずもがな、現在大ヒット上映中ですが、これはぜひ劇場でご覧になるのが良いかと思います。愛媛も舞台になっており、地元民としては嬉しい限りでしたが、それ以上に、新海監督の「本気度」を実感する映画でした。何に対する「本気」なのかはそれぞれの解釈によると思いますが、私は、エンタメとしての映画を超えて、伝えようとしているものに対する本気を感じました。震災を描くことで、日本人の私たちに訴えかける何か。それをスクリーンからぶっとうしで浴び続けたような2時間。奥深くの意識に働きかけてくるものがたくさんあったように思います。
*「百花」
川村元気さんによる小説の、映画化ですね。川村さんご自身が監督も務められています。記憶を失っていく母を、距離を保ちながら見守っていく息子。30代から60代まで一人の女性の人生を演じきった原田さんにも圧倒されつつ、奇しくもこちらも震災(阪神大震災)が描かれた物語で、そこが非常に生々しく感じました。ものは壊れる。記憶もなくなる。で、残るのは? 答えのないストーリーですが、「はんぶんの花火」の意味がわかった時、それぞれにとって残るものとは?を問いかけられた気がしました。震災の記憶って、日本人の覚醒に働きかけるものなのかもしれないですね。
*「漁港の肉子ちゃん」
最近見た映画で、たまらん好きだったアニメーション。詳しくはこちらを。見終わった後、本当に幸せな気持ちになれます。
*「パラサイト 半地下の家族」
今更感がありますが、やっと見たのでした。感想としては、「めっちゃくちゃ面白かった」につきます。エンタメとしてもだし、社会性もだし、絶妙なバランスで「格差社会」を皮肉っているんだけれど、それが「楽しめる」ってすごいことだと思います。世界的評価もありすでに語り尽くされた作品でもあろうかと思いますが、貧富の差を映画という手法を使って描ききっているところに、監督の執念を感じました。シリアスなサスペンスものだと思っていたのだけれど、エンタメだった(それがまた皮肉なんだけれども)。とにかく見ていて飽きない、ドキドキする、面白い。素人目に見ても、熟考され、計算され尽くされた映像だということを感じました。
*「少年の君」
この映画のことは、いつ言葉になるんだろうか、と思っていました。コロナ療養をしていて見ることになった環境も影響していたかもしれない。2019年の作品ですが、当時、リアルタイムで出会わなかったことが悔やまれます。
このキャッチコピーが胸を打つのは、この映画が、優秀な女学生と底辺で生きる少年との交流を描くことで、中国の格差社会を描いているからです。一方で題材になっているのは「いじめ」です。
実際にあった事件をもとに映画化していることも話題となったようですが、社会問題化する中国の教育界における闇を正面から描きつつ、それが信じられないくらい美しい映像になっていて、その美しさが死ぬほど残酷だと思いました。
二人が、守り、守ろうとしたものは、なんだったのか。解説には「二人のピュアな魂の交錯」とありますが、ピュアすぎるものは罪になったりもする。答えのなさに、絶望します。
だけど、圧倒的に、美しいものを見た、という確信だけがあるのです。主演のチョウ・ドンユイの演技はもちろんのこと、この映画で初主演を飾ったイー・ヤンチェンシー(中国では当時珍しく大成した、ボーイズグループTFBOYSのアイドル)には度肝を抜かれました。いまだに、この映画について語ろうとすると、適切な言葉が見つからず、戸惑います。
というわけで、今年もたくさんの心の栄養をいただきました。
映画があるって幸せです。製作者の皆さん、劇場の皆さん、本当にありがとうございました。来年は、映画作品の一つになんらかの形で関わりたいな、という展望もここに記しておきます。
では皆様、良いお年をお迎えくださいますように。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
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