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目が覚めた時、私は異国のオーストラリアの空の下にいて【Sydney→Hunter Valley】

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目が覚めた時、一瞬本当にどこにいるかわからなくて。私はオーストラリアにいて、話しかけられている言語は日本語ではなく英語で、さらには車の中にいて、その車の天井の窓はオープンになる仕様で、車の中にいるらしいのに、鮮やかな夏色をした街路樹と、南半球の空が頭上に広がっていて。

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思い出すまで、きっと0.2秒くらいのほんの短い出来事だった。1秒後には私は状況を把握して、車の運転手であった彼に、日本語ではない言語で返事をする。

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私は、24時間ほど前に、2年3ヶ月ぶりの国際線フライトに乗ってオーストラリアはシドニーに移動し、その日はろくに食事をしないまま、終日取材や街中の散歩を楽しみ、そのままオリンピックスタジアムに移動して、オーストラリアと日本のサッカーゲーム観戦を仕事として楽しんだ。

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2-0の清々しい日本勝利ののち、久方ぶりのシドニーの街を歩いているという半ば夢見心地の感情や、スタジアムが震えるほどの歓声に体を浸したこと、そこにいる人々がマスクをしていなかった現実、この半年ほどシドニーを濡らしている「ラニーニャ現象」という異常気象による長雨が今夜も降り続けていることへの不安や反省、そしてそれにつられるように思い出される、最近日本やアジアでもまた大きな地震が頻発していることへの懸念など、処理しきれない感情が私の中で混ざっていた。

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けれどとにかく、オーストラリア滞在1日目の旅程を無事に終え、昨夜ホテルに戻ることができたのはすでに24時を回る頃だった。

そこから、その日に撮影した(撮れ高は1日にして十二分にあった)写真のデータを大切にウェブアップしつつ、日本から持ち込んだSSDのローカルにも保存して、シャワーを浴び、今日の疲れとおさらばして、そしてようやっと眠る前に、時差が2時間ある日本に向けて、SNSで何やらを話しかける。それは仕事の一環でもあったから、どんなに眠かろうと、絶対に今日やっておきたいことだったのだ。

なぜなら、翌朝(つまり今朝だ)は8:30に運転手が迎えにくる。シドニー近郊の、200ほどのワイナリーが並ぶ自然あふれる美しいエリアと噂の、ハンターバレーに1泊2日の2人旅に出かけるのだ。

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明日も明後日も明明後日も、ずうっと素敵な旅程が詰まってる。シドニーの今を、確実に、一瞬も見逃したくなくて、そしてそのために私たちは、ちゃんとその日ずつを終えていく必要があって、SNS投稿はその儀式のようなものの一つだった。

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私たち、と言ったのは、今回のオーストラリアステイを一緒に過ごす人は、私を含めて全員で5人だからだ。

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正確に言えば、5人中2人はシドニー在住のフォーサイス家のIoriさんUkyoくんで、彼らはシドニーでそれぞれ仕事があるため、べったり一緒に行動するのはKeiくんAyaちゃんのカップル。そして、ハンターバレーをともに旅するのはAyaちゃんと私のふたり(Keiくんは急遽仕事のため、シドニーに残ることになった)。

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冒頭で私を起こしてくれた、運転手の名前はSteven。彼が私を起こした時、隣でAyaちゃんも眠っていた。

テラスハウスに出演したり、テレビのコメンテーターを務めたり、インフルエンサーとして世界各国を旅したり。モデルとしても活躍する彼女は、もちろん見た目も物すごく可愛いのだけれど、素直で、人が思わず愛したくなる物言いを終始していて、それでいて仕事に熱心で誠実で、「あぁ、やっぱり活躍する人たちは、生きる姿勢の根本から綺麗だ」と改めて思いながら、彼女の寝顔を見る。

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これから2人で、ハンターバレーの旅をする。そしてそれは、このnoteではとても書ききれないくらい、想像を超えて素敵なものになる。

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広々とした土地でブドウや自然に向き合って暮らす人の作るものは、どれも個性が違うけれど透き通った味がして、そして作る空間も、誰もが「風通しがいいな」と感じるそれだった。

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その土地で、私たちはワイナリー巡りをすることが目的だったのだけれど、ボタニカルな素材にこだわったジンの美味しさや、それを20歳の控え目で、けれど芯を感じるオージーの彼女が作ったこと、それをオーナーが幸せそうに見守っていたこと、犬たちがワイン畑を楽しそうに駆け回ったかと思えば、野生のカンガルーが収穫シーズンを終えたワイン畑のブドウを食み、それをまたオージーが「これが『いつも』よ。彼らはかわいい」と微笑む様子など……とにかく、「期待していなかった、ハンターバレーの伝えたい日常」に出会うことになった。

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その1泊2日の旅を終えると、飲み会よりもモーニングMTGを好むというオージーたちがこぞって訪れる素敵なフラワーカフェ「The Grounds Alexandria」(CBDカフェでもあるみたい)で朝食をとり、シドニーのシンボル・サーキュラーキーのオペラハウスを眼下に見下ろしながら、これまたシンボルのハーバー・ブリッジクライムを5人で楽しみ、そしてまたシドニーの空を見ながら、ローカルフードとビールを飲んで、そしてシドニー在住のIori&Ukyo=フォーサイス家に、短いけれど幸せなホームステイをしに行くことになる。

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……そして、私はその翌日にまた、シドニーではない違うオーストラリアの、もっと南の街に移動するために国内線の飛行機に乗り、その間にIoriさんにとって人生でとても大切な出来事が起こったり、シドニーでの彼女たちの暮らしに変化が生まれたり、したのだけれど。それはまた別の日に、書き綴ることができたらと思う。

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さぁ、ここからは一人旅。2014年まで、ただ旅と書くこと、写真に憧れるだけだった私が、2016年に最初の世界一周、2017年に出版と翻訳、2018年に二度目の世界二周に出て、2019年の3カ国留学、2020年に沖縄に移住してからも、愛し続けてしまった「一人で知らない街や国を歩くこと」、さらには「時折はそこで暮らしてみること」。その、続きの舞台みたいな、南オーストラリアの知らない街へ。

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今回の私の一人旅は、悲しいかなとても短いけれど、それでも異国の空の色や見知らぬ街の角を曲がる瞬間のどきどき、外国のスーパーやマーケットの香り、「ここにしかいない動物たち」の気配を、できるだけ吸い込んで、そしてまた日本の大切なあの部屋に、帰りたいなと思っている。

できたら、帰ったり出かけたり、時折は異国で数週間暮らしたり。行ったり来たり、けれどちゃんと「ベース」はあって、愛猫を撫でて一緒に眠り、空の上でも何度も、また何度も、眠って起きて、そうやって「今はどの国、どの街に私はいるのでしたっけ」と、冒頭みたいに、時々は驚いたりできる人生だと、私のこれからしばらくの時間は、おそらく長らく幸せだろうと思う。

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伊佐 知美
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