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半年で自分の居場所が増えた話

1月から新しい会社に勤めている。約17年間働いて来た職場を昨年の6月に辞めたのだけれど、そこから今回の就職先に入るまでの約6か月間、私はハンドメイドアクセサリーのポップアップショップで働いていた。

10日ほどの会期で、いろいろな百貨店や駅前を転々とする。父に話したら、映画『男はつらいよ』の寅さんみたいだな、と言われた。お客さんは10代後半から40代の女性が多く、寅さんがやっていたテキ屋よりもおしゃれなのだが、実際にやってみて、「ああ、『寅さん』とは、父も上手いことを言うものだ」と思った。

店舗を持たず、街から街へと旅をするような移動販売。不思議なもので、街によってお客さんの雰囲気も、売れ筋の商品も変わる。どんな風に説明をしたら商品が売れるかも、それぞれの場所に特徴があるように思えた。ずっと同じ店に出勤するわけではないから、ぜんぜん飽きない。人通りが少ないとちょっとしょんぼりしてしまうが、それはそれで、売り声を変えてみたり、陳列を直したりしながら店に立っていた。

行く先々での販売の仕事も面白かったけれど、みんなでやる売り場作りも撤収も、文化祭のようで楽しかった。年末に就職先から内定が出て、寅さんの生活とはサヨナラしたけれど、そのとき一緒に働いていた人たちとはまだ繋がっている。私の住む街の近くにお店が来たときは、必ず足を運ぶことに決めている。

働いたのは短い期間だったけれど、おかげで私の居場所がひとつ増えた。寅さんの仲間が、私の世界を広げてくれた。


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