「人生万事塞翁が馬」の意味が、ようやく腹に落ちてきた。
人生万事塞翁が馬。
高校生の頃、漢文で習って以来、どうもしっくりこない言葉でした。
先日、「江戸の終活」を読んでいて、「あ、そういうことか」と気づいたことがありました。
自分なりの解釈なので、模範解答からは程遠いですが、ウン十年過ぎてようやくわかったことが嬉しかったので、書いておこうと思います。
江戸の終活
「江戸の終活」は、江戸時代の庶民の遺言状の解説書。農民、武士、商人など、様々な職業の遺言書を取り上げ、市井の人々の声に耳を傾けることによって歴史を体感し、異なる時代の人生から今に通じるものを読み取るという内容になっています。
その六人目である戸谷半兵衛は、全国にその名を轟かせる豪商だったそうですが、その膨大な遺言書では、人生において重要なことや、心掛けを伝えています。商人ですから、商売や人付き合い、人をどう使うべきかについても書かれています。
商いは小気にても成りがたし。大気ばかりにても叶い難し。損は徳の元手。利は損の入れ替えと思い、損も憂えるべからず。利ある時にも喜び、むざと金銀を遣うべからず。
現代語訳すると
「商売は弱気では成功しない。しかし、強気ばかりでもダメだ。損は徳の元手であり、利は損の入れ替えと考えて、損しても憂えてはいけない。儲かっている時も喜ぶばかりでなく、無闇に金銀を遣ってはいけない」
ということだそうです。
「塞翁が馬」と戸谷半兵衛の遺言書
ちなみに「塞翁が馬」の意味は、辞書にはこのように書いてあります。
「塞翁が馬」とは:
人生の幸不幸は簡単に予測できないという格言のこと。不幸だと思っていたことが実は幸運につながったり、幸運だと思っていたことが後に不幸につながったりするように、人間が遭遇する出来事はその時点で幸か不幸かが予測しにくい。したがって、「塞翁が馬」は、「自分が遭遇した幸不幸の出来事に一喜一憂する必要はない」ということを教えている。
太字で示した、不幸だと思っていたことが実は幸運につながったり、幸運だと思っていたことが後に不幸につながったりするということは、頭ではわかっていても、その時点ではどうしたって一喜一憂してしまいますよね。
戸谷半兵衛さんの遺言書では「損は徳の元手であり、利は損の入れ替えと考えて」という部分がそれにあたると思うのですが、仕事を振り返ってみると、確かにそうだなぁ〜と。
景気など、社会情勢の影響はあるとは思いますが、大体いい時期と悪い時期が繰り返される。薄々それに気付いてはいても、売り上げが上がればあれもこれもと設備投資したくなるし、赤字になれば、もうダメかもと落ち込む...まさに一喜一憂を繰り返していました(苦笑)
経営には胆力が必要
そういえば、お世話になっているある企業の社長さんがこんなことをおっしゃっていました。
景気が悪いときこそ、次の展開を考えて、思い切った設備投資をするんです。
その時は、「とはいえ、なかなかできることではないよな〜」と内心思っていましたが、ここは「徳の元手」、こういう時こそ強気でいくべきなのですね。
経営には胆力が必要。
江戸時代も今も、そこは変わらない真理なのだなと改めて思いました。
下がれば上がるし、上がれば下がる。
それを繰り返しているのが、人間も含めた森羅万象の営みなのでしょう。
「塞翁が馬」を教わった時点では、全くそこにつながっていませんでしたが、そう考えれば、下がったり落ちたりした時も、そんなに焦る必要はないんじゃん、と。
会社の業績が上がったり下がったりして、毎年右往左往してきましたが、「損は徳の元手」(いい言葉です!)。どっしり構えて年度末を迎えたいと思います。
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