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肉餅

素朴な料理だ。ロービンと読むらしいが、忘れるのでいつもにくもち、と呼んでいる。中国は北の料理。

小麦の生地にお醤油とオイスターソースで味付けした豚のひき肉、長葱と生姜のみじん切りの餡を広げてパタンパタンと折り返して層を作る。

油を引かないフライパンで表面をカリッとさせた後は、弱火で蓋をして何度か裏返しながら蒸し焼きにする。

こういうのは指先でつまんで食べるのが一番美味しい。

カリッとした皮の層を越えると、皮と餡に仕込んだごま油がにじんで間の小麦の層は薄いながらもむっちりと肉と脂の旨みを吸っている。そして小麦と肉の甘さ。閉じ込められた肉汁。しつこくはないけれど、全体をまとめる脂がいい仕事をしていて、素朴なのにしみじみ旨い。

中国も北部。稲作でなく麦畑が広がる寒い地域。口の中で広がる脂の旨みを味わいながら羊肉なら更に温まるだろうなと、固く冷たい大陸の厳しさを思う。

この数日、沈んでる。お米や麺に向き合うには力がない。そんな時は肉餅が丁度いい。

つまんで食べられる態度、なのにこれだけで栄誉バランスまでとれている、作るのも楽。小麦に水を回してまとめておくと時間が勝手に滑らかな皮を作ってくれる。

今日は薄力粉が足らなくて強力粉を足して作った。家庭料理なんてそんなもん。気楽でいい。

そして何より美味しい。

いつかサロン万有引力でも出したいなと思っているけれど、どうかな。出すなら寒い季節だな。

(2024年10月26日記)


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