【市民農園始めてみた】初めてのとうもろこし栽培
昨年から市民農園で野菜作りを楽しんでいる。
60歳になったら、60歳以上の人にだけにあるサービス、例えば映画館のシニア割引やスーパーでの年金支給日の割引などを使って、高齢者特権のお得感を味わってやるぞぉ!と思っていた。
実をいうと60歳になるのかこわくて、それくらいしか楽しみがなかったというのが正直なところではあるが。
そんな私に市政だよりのシルバー農園申し込みのお知らせが飛び込んできた。
一区画30平米、1年間の使用料が1,200円!
安い!安すぎる!
しかし、私に野菜作りなどできるのだろうか?
畑なんてやれるのだろうか?
失敗の連続でまわりの人から馬鹿にされないだろうか?
しばらく悩んだ。
内向的な私だが、お友達がいなくて、常に一人で行動しているので、身軽に行動できるからなのか、行動力はある。
誰かを誘わなくても、行きたいと思えば、エイって飛行機に乗って一人でPaul McCartneyのコンサートに行ったりもできる。
悩んでも仕方がない。
野菜作り、やってみよう!
シルバー農園の目的は、
高齢者が野菜の栽培を通して、農業に対する理解を深めるとともに、利用者相互のふれあいを図ることで、高齢者の介護予防及び生きがいづくりに寄与することを目的とする。
とある。
野菜作りが下手でも大丈夫そうだ。
楽しくやればいい!
高齢者かぁ〜
私も年取っちゃったなぁ〜
いやいや、エネルギッシュに頑張るんだ!
というわけで、You Tubeの家庭菜園チャンネルの動画を参考にしながら日々野菜作りに励んでいる。
ほとんどが男性なので、私はよく
「女性一人でやりよぅと?元気いいね~」
と感心がられている。
ひろちゃん農園のひろちゃんは70代なのに一人で私の百倍元気に動いているのになぁ〜。(ひろちゃん農園のひろちゃんはYou Tuberである)
シニアの男性は、女性は弱いから守ってやらなくちゃ。力仕事は男がするもの、という考えがあるようだ。
一方シニアの女性には男性を立てる文化が根強く残っている。
例えばみんなで集まって話し合いの時は畑の中で椅子を並べてやるのだけれど、人数分の椅子が用意できない。
私は椅子取りゲーム?早いもの勝ち?
と一瞬思ったが、数名の女性の方は男性が座り終えるまで待っている。
昭和の女性たちだ。
そうだよね。それ常識だよね。
私も昭和の女性だったんだ。
男性たちはそんな女性たちのことは気にせず座っていく。
私は、椅子ではなくて瓶ビールのケースを裏返したものを、これも座れるばい、とすすめられて、アハハと笑いながらプラスチックのビールケースに座った。
今年は2年目、おじさん達と話すのも慣れてきた。
話すのは苦手だが、話題は野菜の育て方と決まっているので話題に困ることはない。
昨年、初めての野菜作りをする私におじさんたちは
「何、植えると?」
とよく話しかけてくれた。
「とうもろこしを植えました!」
「あちゃー、とうもろこしはねぇ〜、アワノメイガが来るったい、実の中に幼虫が入って全部食べっしまうたい。」
「北海道んごと、ひろーかところでいっぱい植えんと受粉もようできんたい。」
「おれも一回植えたことあるけど、全滅やったけん、そいからは植えたことなか。」
みんなは、とうもろこしがいかに難しく無理なことを教えてくれた。
そして村長さん(この市民農園には〇〇村と名前があり村をまとめているのが村長)が一言言った。
「あなたが好きなごと、やってみたらいいんたい。」
「はいっ!がんばってみまーす!」
私はYou Tuberのひろちゃん農園のとうもろこしの種の芽出し動画を参考にしながら3月から家のリビングで大切に苗を育て畑に植えた。
4月はまだ寒いから最初はビニールトンネルをして、5月からは支柱をまわりに立てて防虫ネットで囲んだ。
私独自のやり方である。農薬は使いたくない。ならば物理的にアワノメイガを寄せ付けないようにするしかない。
10本ほどのとうもろこしを支柱と防虫ネットで囲い、毎日虫の観察をする。
家庭菜園の野菜作りは虫との闘いでもある。農薬を使わないということは虫が来るということ。
自家製の虫除けスプレーを焼酎とニンニクと唐辛子で作ってかけても、虫はやって来る。
見つければ捕殺である。
手で潰すか足(長靴)で潰す。
慣れないうちは気持ち悪かったけれど、素早く潰せるようになった。プロっぽい。
とうもろこしは、アワノメイガがやって来る。
You Tubeでもネットの情報でも本でもとうもろこしといえばアワノメイガ。
私はとうもろこしを育て始めて、とうもろこしがぐんぐん竹みたいに大きくなり、雄花が見えてくるころには、アワノメイガに会いたくて会いたくてたまらなくなっていった。
目の細かい防虫ネットをやっているだけあって、アワノメイガは来てくれなかった。
雄花が開いて花粉が落ちる頃はとうもろこしの花粉の独特の香りが漂う。
これがアワノメイガが好きな香りなんだなぁ。
なんかこの香りが好きな気持ちわかるなぁ。
アワノメイガのお母さんが卵を産みたくなる気持ちもわかる。
私もアワノメイガのお母さんだったら、子供たちに美味しいとうもろこしを食べさせてあげたいとこの香りを探すだろうなぁ。
そんなことを考えてとうもろこしの観察を毎日やっていたある日、私はとうとう会ってしまった。
小さな蝶々だった。
かわいいと思った。
でもあの噂のとうもろこしを全滅させる悪い奴、
アワノメイ蛾
だった。
ということは卵を産んだってこと?
え〜と、たまご、たまご、
あっ、これっ?
雄花の花粉と一緒に落ちる棒状のものに色も大きさも同じ、花粉が落ちる場所と卵を産みつける場所も同じ、
さすがだ。花粉に見せかける作戦か。
そして、私は大量の卵がとうもろこしの雌花のひげあたりに産みつけられているのを見つけると、全てを取り除いたのだった。
これが唯一産みつけられたアワノメイガの卵だった。
アワノメイガは7月から増えるとのことで6月を収穫目標することで、アワノメイガの被害を避けられるというわけで3月から栽培開始して正解だった。
私は初めてにしては、運良く、とうもろこしを収穫することができた。
朝早くしか畑に行けなかったので、おじさんたちに収穫するのを見られることもなく、とうもろこしは次々と私のお腹の中に美味しく入っていった。
一粒の種から約100日で2メートルもの高さに成長して竹のように大きくなるとうもろこしは魅力的だった。
収穫後片付ける時はのこぎりを使って切った。木みたいになっていた。
そんな感動のとうもろこし栽培から1年後の今、畑ではとうもろこしが大きくなっている。
そろそろアワノメイガに会いたくなっている私である。