ビジネスの世界でインクルーシブデザインを活かすために
今日のテーマはインクルーシブデザインという言葉。
2018年は、視覚障がい者や認知症患者などをデザインプロセスに巻き込み、アクセシビリティやサービス価値の向上に結びつける取り組みを始めようとしているところです。
この取り組みに合わせて、障がい者雇用も進めていきたいと考えています。
なので、キーワードとしているインクルーシブデザインの意味や、方法論をこのタイミングで学び直しているところなのです。
ビジネスの世界で少しだけブームとなっているインクルーシブという言葉
昨年末に、インクルーシブHTML+CSS & JavaScript 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターンという本が出版され、インクルーシブという言葉がWebデザインの領域には持ち込まれ初めています。
下記の記事にあるように、インクルーシブマーケティングという言葉まで出てきていて、「インクルーシブブーム」がきている感覚すら覚えます。
「インクルーシブデザイン」「インクルーシブマーケティング」とは?「1人」に向けたサービスを開発しよう
インクルーシブデザインとビジネスの世界
インクルーシブデザインという言葉は認知度が上がってきているものの、ビジネスの世界(マーケティングやデザイン部署)でインクルーシブデザインという言葉が本質的に理解され、ちゃんと使われている状態になるのか?不安ではあります。
なので、この2つをテーマに書いていきます。
①インクルーシブデザインを改めて理解するために考え方を整理
②インクルーシブデザインをビジネスの世界に持ち込むための考え方
①インクルーシブデザインのプロセスを図解で整理
ビジネスの世界にインクルーシブデザインに哲学と方法論を持ち込むために、改めてインクルーシブデザインのプロセスを整理してみました。
下記の本のChapter01部分を要約しています。
インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン
このインクルーシブデザインのプロセスや思想(デザインの排除がおきないようにする)をビジネスの世界に持ち込みたい。
では、どうすれば、インクルーシブデザインの本質的な価値を理解した上で、ビジネスの世界で活かすことができるのでしょうか?
ここから②インクルーシブデザインをビジネスの世界に持ち込むための考え方について書いていきます。
顧客セグメントをかけて売るという発想からの脱却
マーケティングの世界で使われるセグメンテーションという言葉。
自分たちは、ビジネスの世界にインクルーシブデザインを取り入れるのであれば、セグメンテーションという発想を一度捨て去る必要があると考えています。
なぜなら、既存のマーケティングの考え方は、顧客のセグメントを決めて、特定の顧客に対して評価を得られるサービスやプロダクトをつくる必要があるからです。
既存の考え方であれば、インクルーシブデザインは、面倒なデザインプロセスで終わってしまう。
なので、マーケティングやデザインの根底にある考え方から変えていく必要がある。そ
北欧のデザインから学ぶ、ノンセグメンテーションの考え方
スウェーデンはなぜ強いのかという本を読むと、スウェーデンを代表する企業であるイケアやH&Mがなぜ競争力をもっているのかについて書かれています。
そのポイントが、セグメンテーションという考え方を捨てて、全ての人を顧客とし、顧客の個性の違いを尊重するという考え方。
すべての国民を顧客にするということは 、すべての国民が購入可能な低価格の商品をつくるということだ 。顧客の個性の違いを尊重するということは 、商品の多様化をはかるということである 。低価格のみを追求すれば 、商品は画一的になる 。商品の多様性のみを追求すれば 、商品は高価格になる 。低価格と多様性のバランスをはかりながら 、すべての国民を顧客にしていく 。それがスウェーデン企業の戦略である 。
H&Mには 、すべての人の個性を尊重し 、すべての人を顧客にするという 、スウェ ーデン企業の戦略が根底にある 。すべての顧客がタ ーゲットである 。すべての顧客を満足させる商品展開は 、多様なデザインの追求によってのみ可能である 。
ビジネスの世界でインクルーシブデザインがちゃんと使われる日はくるのか?という問いに対しては、根本にあるマーケティングの考え方を変えていく必要があるというのが自分の仮説です。上記のあるようなH&Mやイケアのような考え方をもった経営をしていく方針を日本全体でもつということです。
つまり、欧米型のマーケティング・デザインプロセスから、北欧型のマーケティング・デザインプロセスへの転換を図っていくことができれば、インクルーシブデザインをビジネスの世界で活かすことができると思うのです。
まとめ
ビジネスの世界でインクルーシブデザインを活かすためには、マーケティングの考え方そのものを変えていく必要がある。
僕たちは、デザインやマーケティングを通じて、社会全体を最適化して、人の豊かさを追求するという考え方をもつことが大切になってくる。
形だけインクルーシブデザインを取り入れても変化は起きないということを意識して、インクルーシブデザインを追求していく1年にできればと思います!
Newspicksの有料記事ですが、下記の櫻田さんの記事は、多様性×デザインを考える上でとても参考になりました!