
35歳からのウソ日記67
2020年8月3日
その話は自分には当てはまらないよ。
彼は私にそう言った。
盲点だった。
ある話題があり、みんながそれなりに答えを出し、違った見方をすることによって新たな答えを導き出し、リアルな答えが出たと思った矢先のことである。
何を言っているのかややこしくて分かりにくいので順を追って説明しようと思う。
最近のエチケットの常識になりつつあるマスク着用。
数ヶ月前からほとんどの人たちがマスクを着用している。
そこで話題に上がっていたのが、男目線で申し訳ないが、マスクをしている女性がみんな可愛く見えるということだ。
緊急事態宣言中は散歩するためだけに外出をしていたのだが、同じように散歩をしているだろう人たちの中のいる女性たちがもれなくみなさん綺麗、可愛いのどちらかに当てはまる。
なんてこった。
このことの方が私にとっては緊急事態であった。
そしてそのことを友達に言うとこれももれなくみなさん同じ意見、どころか激しく賛同していた。
そこで最初に浮かび上がった答えらしきものが、顔の上半身はみんな可愛いのではないかということである。
しかし、これには人間の脳の働きが関係しているらしい。
人間はマスクで隠れている顔の下半身の部分を自分の理想に想像してしまうらしいのだ。
なのでどうしても可愛く見えてしまうということみたいである。
なのでこれはおそらく男性が女性を見て思うことだけではなく、女性にとっても同じ現象、緊急事態が起こっていると想像して問題ないはずだ。
これはマスクマジックとして今後言われるのではないだろうか。
そこで気がつく。
マスクマジックよりも先に存在しているゲレンデマジック。
あれは顔の上半身がゴーグルによって隠れている。
なので見えているのは下半身部分。
けれどみんな可愛く見える。
これは違う要因も含まれていると思うが、マスクマジックとは逆のパターンである。
こうなってくるとやはり先ほども申し上げたが、人間の脳の働きが自分の理想を想像させてしまうというのが正解なのだろうと確信に迫らせてくれる。
私の中では答えは出た。
人間の顔の半分は好みではなくても、残りの半分が理想の顔なら好みの顔になるのだと。
そんな話をひとりの友達に話したところ、
その話は自分には当てはまらないよ。
と言われたのである。
彼は続けた。
当てはまらないといいうのは綺麗だったり、可愛く見えないというわけではない。
しっかりとマスクマジックもゲレンデマジックにもかかっている。
ただ、自分のことをマスクやゴーグルをしていることで周りの女性がカッコいいと思ってはくれないはずだ、と。
なぜだと聞いてみると、彼は悲しげにマスクを着用した。
ほら分かるだろ?
俺はめちゃくちゃデコが広いからマジックが起こらないんだよ。
フットサルコートくらいデコの広さがある彼にはマスクもゴーグルもデコの広さを際立てるだけであった。
彼の顔の作りは1階が顔の下半身で2階が上半身かと思いきや、2階部分はロフトがついてるのである。
それについてのフォローの言葉が浮かばなかったので、私は彼のデコに熱中症には気をつけないとねと冷えピタを許可なく貼ってデコレーションしてあげた。
彼は怒った。
1枚じゃ足りないよと。
そんなユーモアある返しのできるデコより広い心を持っている彼が私は好きだ。
やはり見た目より中身だよなと、あんなに広いデコは嫌だなと思う気持ちを抑えて私は彼に言った。
完
それでは また あした で終わる今日 ということで。