
35歳からのウソ日記106『左斜め45度から実る恋』
2020年9月11日
私には少し特殊な能力がある。
その能力はかなり最初が肝心なのだ。
終わり良ければすべて良しとは真逆で、最初良ければすべて良しとなる。
その能力は同じ状況下なら全く同じ結果を出すことができるというものだ。
もう少し分かりやすく説明すると、みんゴルことみんなのゴルフというゲームがある。
もしあるコースでホールインワンを出せたとしたら、私はそのコースで同じ風向き、風の強さなど同じ状況下の場合に毎回ホールインワンを出すことができる。
そこに難易度は関係ない。
しかし、最初に失敗するとそこから抜け出すこともできない。
同じ結果を出せるというよりは同じ結果を出してしまうのだ。
なので最初がかなり肝心なのである。
サッカー部に所属していたのだが、私はFWで点を決めるのが最大の仕事であった。
ペナルティーエリアに入るか入らないかあたりのゴールに向かって左斜め45度の位置から、綺麗な弧を描いてゴール右上の隅に吸い込まれていくかのような難しいシュートを最初に決めれたおかげで、同じ状況の場合は毎回決めることができた。
元イタリア代表のデルピエロ選手の得意なシュートと同じである。
難易度は高いが、私の場合は同じ結果を生み出せる能力があるのでその位置からのゴールを量産した。
私はチームのエースストライカーになれた。
しかし、初めてのPKで外した私は1度もPKを決めたことはない。
ただの1度もだ。
難しいシュートは何度も決めることができるのに、8割以上の確率で決まると言われているPKは10割の確率で外す。
私はボウリングでスコア300を出したことがある。
満点ってやつだ。
だが、私はボウリングが楽しいと思わない。
1投目ですべてが決まるからだ。
1投目がストライクなら300が出てしまうし、1投目がガターならスコアはもちろん0である。
2投目以降から楽しさはなくなるのだ。
なので昔からうまくいかなかったことは2度とチャレンジしないようにしている。
どうせ失敗するのだから。
結果的に成功したことをやることになるので、やることなすことが成功する。
なので人から私は羨ましがられる。
誰も私の失敗への恐怖には気がつかない。
学生の頃に好きな人に告白したことがある。
フラれた。
それ以降私は誰にも告白したことがない。
1度失敗したことは同じように繰り返すのだから。
そんな私に新たな出会いがあった。
その女性は少し違ったのである。
私の特殊な能力の話をした時にみんなは羨ましく思い、いいなぁと言うのだが、彼女は、
「残酷な能力ね」
と言った。
彼女のその言葉は私の想像していた答えとは違い、左斜め45度の位置から飛んできて、私の心の右上の隅に1発でホールインワンしたのだ。
私は失敗すると分かっていながらその彼女に告白することを決意する。
決戦は金曜日と決めていた私は今日という日を選んだ。
そして私は告白した。
人と人が関わることで、全く同じ状況になるということはない。
いくら全く同じ結果を生んでしまうという特殊な能力を持っていたとしても、その能力は人の心までは届かないのだ。
完
それでは また あした で終わる今日 ということで。