「ニッポン放浪記」

昔、三島由紀夫との日々を綴った「三島由紀夫―ある評伝」を面白く読んだ、三島の作品「午後の曳航」を英訳したジョン・ネイスン。

60年代の日本における、彼の自伝みたいなものだが、けっこう華やかな女性遍歴も躊躇することなく綴っており、彼の人間身溢れる内面が窺い知れて面白かった。

翻訳だけでなく、作家や映画監督としても活躍したんだね。

「日本人は狭い空間の中で、本能的にうまくお互いのプライバシーを守っている。他人の持ち物や個人的な空間に敬意を払うし、他人の気持ちに対しては細やかな配慮がある。いかなる場合でも面と向かって対立することはタブーだ。傷付いた時には、家族が時間をかけて癒してくれる献身的な召使いとなる。このような厳格な行動規範に適応する繊細さが、私には生まれながらに欠けていた…」だって。

後で知ることになる三島の性癖も、思ったままをそのまま書くから、三島夫人の逆鱗に触れて、「三島由紀夫-ある評伝」は絶版になったのだ。

「三島と友人のように付き合ってるという自尊心で私は有頂天になっていた」ほどで、三島と他の作品の英訳も約束したが、急に大江健三郎の作品に惹かれたために、大江作品の英訳をして、三島との約束を反故にしてしまう。「侍は約束を破らない」と三島は怒って疎遠となったのだ。

三島は、彼のことを「左翼に誘惑されたアメリカの与太者」と書いている。ジョン・ネイスンも「三島の小説を読むのは、凝りに凝った額縁の美術展を見に行くのに似ている」と悪意のある記事を書いている。

その大江健三郎とソープランド(当時はトルコ風呂)で遊んだエピソードは力が抜ける(笑)。ノーベル賞授賞式での大江の態度の書き方にも悪意が伺えるが。



脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。