【古典洋画】「エデンの東」
巨匠エリア・カザン監督の、1955年の名作(既に古典)「エデンの東(East of Eden)」(アメリカ)を今更ながら鑑賞。
子供の頃、TVのロードショーで観て以来だ。
原作は「怒りの葡萄」(映画も面白かった)のスタインベックの小説だけど、大元は旧約聖書にある最初の殺人犯カインとアベルの物語だ。
魅力は、なんといっても主演のジェームズ・ディーン、映画は彼が交通事故で死んだ後に大ヒットしたのだ。
聖書を片手に善行をなすクリスチャンの父親アダムに、品行方正な兄アーロンに比べると愛されていないと思い込んでいるジェームズ・ディーン演じる不良っぽいキャルが、反抗しつつもアダムに認めてもらおうと苦悩する物語。
ジェームズ・ディーンは青春の反抗の象徴といわれるわけだが、結局、世の中は、聖書で説かれるような神が望むような正しいことばかりぢゃなく、そんなものは嘘っぱちであり、愛についても欲を基に嫉妬や悪徳など様々な人間的感情が行き交う、一方で理由なき邪悪性を持つものだ、ということを提示した作品であると解釈した。
アメリカ白人のキリスト教的価値観にアンチテーゼを突き付けたともいえよう。
それは、アーロンの恋人だった、母性本能を出してキャルにもアーロンにも優しい女の子エイブラ(ジュリー・ハリス)の告白によってもわかる。エイブラが物語のカギを握る重要な役なのだが、メッチャ美人というわけではないのもイイ。
最後にわかるが、父親アダムも周りが言うように善行の人では決してなかったということだ。兄アーロンも買春宿を経営する実の母親に会ったことで、これまでの価値観が壊れて自暴自棄になり、兵役に志願するし。やたらと正義を振りかざす人間が実はクソ面白くないというのは真理なのだ。
ジェームズ・ディーンの、親の機嫌を上目遣いに伺う卑屈な態度で、それでいて、いきなり予測できない突発的な動きをして、周りをハラハラさせるような、多分、アドリブも多かったであろう演技が素晴らしい。
セリフを溜めて溜めて態度で甘えて、急に顔をグシャグシャにして泣き出すような仕草は、やはり放って置けないと母性本能をくすぐるだろうなぁ。
アダムの一家を見ててケネディ家を思い出した。
さすがは名作と思える作品であった。