「パルタイ」
倉橋由美子のデビュー作。
“パルタイ”は政党の意味。
たまたま古本屋で入手したけど、“学生運動”華やかなりし時代(活躍するのは団塊世代)だからこそ生まれた短編小説だ。
恋人から、左翼革命党への参加を勧められている「わたし」。関心が持てなくて、のらりくらりとかわしていたが、ついに入党の手続きのための経歴書を書いてしまうハメになる。そして、苦労して書いた経歴書が受理されると同時に党を脱退することを決意する…という若い女子学生の心の移り変わり、トンガった感情、内省的な独りよがりの思い、時代の雰囲気などを現した、まさに昭和の芸術的な文学だと思う。
著者自身が明治大学大学院の学生であって、初出は学内誌だという。その経験から生まれた作品だろうが、パルタイは当時の日共(民青)の暗喩でもある。
表題作以外にも文庫に収録された作品は、全て当時の学生運動に対する風刺になってる。
学生寮でヘビを飲み込んでしまった学生の周りですったもんだが起きる「蛇」など、難解な言葉を使ってるのじゃないが、平易な文体で抽象的・寓話的な設定が不思議で面白い。あ、カフカに似てる部分もあるかな。
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