【邦画】「白い巨塔」

社会派として体制批判的な作品が多い山本薩夫監督の、1966(昭和41)年の大映作品「白い巨塔」。主演はTVドラマと同じく田宮二郎。

山崎豊子の小説の映画化で、子供の頃、TVドラマは知ってたが(見たことはないけど)、大学医学部界の内幕を描いたもので、日本らしく“巨悪が勝つ”という胸クソ映画だった。

田宮二郎自身も、主役を取るために、裏工作をしたり、右翼を使ったり、そのことで追放になったり、いろいろと問題を起こしたようで、結局、躁うつ病となって、78年に43歳で猟銃自殺しているね。

主人公の財前五郎(田宮二郎)が、助教授から教授となるべく、教授選に向けて、いろいろと事前の裏工作をし推薦を受けるが、教授選に気を取られたために医療ミスを指摘されて遺族に訴えられるものの、医学界の権威を守ろうとする大学側の支持で無罪を勝ち取り、晴れて教授となる…という話だ。

裁判で、医学上の立場から財前五郎に不利な証言をしたライバルである“正義”の助教授(田村高廣)は、地方に飛ばされることになって辞表を出す。

まさに悪が勝ったのだ。クランケ(患者)のことはほっといて、何としてでも教授になるべく、味方と金と贈物と女と酒と立場など、あらゆる手を使って、教授選に出る教授たちを抱き込んでいく。部下には将来を約束し、上には権威を守ることをちらつかせてモノで釣る。もうドロドロの魑魅魍魎の世界。

胸クソではあるが、実に面白い。社会やプライドも関係なく、ただ欲のみの闘いだからだ。権力欲、支配欲は、それほど人間を魅了するものなのか。

勝利して敵がいなくなった財前五郎は、白い巨塔の中を自信たっぷりに闊歩するー。教授が回診で、ゾロゾロと下の者を引き連れて、クランケの部屋を周るってのは、大学病院ではないけど、俺も入院中に見たな。担当のスタッフなど、上にヘーコラヘーコラしてた。たかが医者のくせに偉そうに(笑)。こういう世界って実際にはどうなのだろうか?

政略結婚に使われそうになる教授の娘がいう。「お父さまは、医学部の権威主義や封建主義みたいなものを一度だって改めようとはなさらなかった。教授としてその上にあぐらをかいていらしただけですわ。患者のことを思う里見さん程の方が、純粋に生きる場所が今の大学にはなさ過ぎるということが、私にはたまらなく悲しいのです」


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。