【洋画】「ベニスに死す」
再度、絶世の美少年タージオを観たくて…。
1971年の、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品「ベニスに死す(Death in Venice)」(イタリア・フランス合作、1971年)。
トーマス・マンの原作は昔、読んだが、「魔の山」程の印象深さはなかった。美少年タージオ(ビョルン・アンドレセン)だけでもってるような作品であり、病気療養のためにベニスを訪れた作曲家のグスタフ(ダーク・ボガード)が、滞在先のホテルで見かけた、貴族一家の美少年タージオに心を奪われるという単純な話だ。「私は愛してる」…。台詞は少ない。
ヴィスコンティ監督も彼に惚れ込んで、いろいろと問題を起こしたようだが、思わず見入ってしまう、線の細い、透き通った中性的な美しさは、確かに見た者を狂わせてしまう程の魅力に満ちている。美少女じゃなくて美少年だからこそだ。
性など必要ない、真の永遠なる美を見た感じがする。なんて美しいのだ。こんなに美しい少年って、現実にあるのか。彼は50年後、「ミッドサマー」に出演した。
作曲家は、蔓延した伝染病もあって、海辺のデッキチェアに座ったまま、静かに死んで行く。遠くで戯れるタージオを見ながら。作曲家はきっと幸せだっただろう。崇高なる美に召されたのだ。
美少年の崇高なる純な美しさと、ひねた笑いの世俗にまみれた醜なるもの、美少年の永遠に思える自然の美しい若さと、作曲家の無理して作った老いを隠す若さとの対比。そして、美の前には作曲家の全てが崩れ去る。とても残酷である。美を見つめることは死への凝視なのだ。
「君は純潔とは無縁だった。純潔は努力で得られるものではない。君は老人だ。この世で老人ほど不純なものはない」
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。