【古典洋画】「ジャイアンツ」

ジェームズ・ディーンの遺作となった、1956年のアメリカ映画「ジャイアンツ(Giant)」。ジョージ・スティーヴンス監督。200分超えの大作映画。

テキサス州に、広大な牧場を経営するベネディクト家の若主人ジョーダン(ロック・ハドソン)が、東部の名家の娘レズリー(エリザベス・テイラー)を妻に迎えるところから物語は始まる。

密かにレズリーに心を寄せる、ひねくれ者の使用人ジェットの役がジェームズ・ディーンだ。

ジョーダンとレズリー、ジェット3人の30年間の歩みを基に、油田で発展するテキサス州を描きつつ、個人の、家族の問題、女性の自立問題、メキシコ人に対する差別問題(黒人ではない)等、現代にも通じるアメリカの影をも扱った壮大な人間ドラマである。

唯一の理解者であったジョーダンの姉の遺言で譲り受けた小さな土地に油田を掘り当てて、ホテルまで経営する、アメリカでも屈指の大富豪となったジェームズ・ディーン演じるジェットだが、白髪で額も広くなった彼は見たくなかったなぁ、青春スターなのに(笑)。

成り金となって巨万の富を手にしても、レズリーへの思いを引きずって、いつも酒浸りのチンピラのような態度であるのは彼らしいけど。

レズリーが進歩的な女性として描かれるが、夫ジョーダンの女性差別的な発言や、子供に対する強権的な態度に、レズリーは声を荒げ、家を出たりもするが、ファミリーを捨てることは決してない。ジョーダンも、息子がメキシコ人の女性と結婚したことを機に徐々に態度を改めていく。

レズリーも歳と共に自分の子供に対しては保守的になっていくが、ラスト、田舎のレストランで、人種差別発言をしたオーナーと殴り合いのケンカをした夫ジョーダンを褒め称える様子は、良くも悪しくもアメリカ的だなぁと思った。

ジェームズ・ディーン演じるジェットは、ジョーダンよりもビジネスで成功したものの、メキシコ人を差別するし、レズリーへの気持ちを捨て去ることはできずに、ジョーダンの娘にプロポーズはするが、泥酔してレズリーへの思いを口にしたことで呆れられ、ジョーダンにも殴られてボロボロになって、最後まで、良いところのない、哀れで悲しい存在であった。

ジョーダンは、哀れなジェットを見て、彼へのライバル心から富で張り合ったこれまでの自分を反省し、レズリーをはじめ、家族の大切さを悟るのだ。

チョイ役でデニス・ホッパーが出てる。

開拓時代からのアメリカン・スピリッツを表した貫禄のある大河ドラマであった。

アメリカってのは、自分で切り開いて成功したというプライドが、揺るぎなき正義である国なのだね。それが偏見と頑迷であろうとも。メキシコ人とアメリカ白人の赤ちゃんが並んでいるシーンは象徴的である。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。

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