【古典洋画】「野のユリ」
ベルイマンの映画かなぁ、とカンチガイしちゃったけど、1963年のアメリカ古典映画「野のユリ(Lilies of the Field)」(ラルフ・ネルソン監督)。Amazonプライムにて。
淀川長治さんが絶賛したというだけあって、終始、清らかな気持ちで、微笑ましく観れた、ホノボノとした、とても良いメルヘンチックなファンタジー映画だった。
アリゾナの砂漠を車で走ってた黒人青年のホーマー・スミス。
車がオーバーヒートになって、近くにあった一軒家に辿り着く。
その家には、東ドイツからの亡命者である5人の修道女が住んでいた。
ホーマーを見た年長のマリアは、「きっと彼は神が遣わした強い男」と言い、ホーマーに、家の側の荒れ地に教会を建てるよう要請する。
最初は拒否してたホーマーだが、マリアをはじめ敬虔な修道女たちのペースに巻き込まれ、彼の優しい性格もあって、渋々、修道女たちに協力し、教会建設に取りかかるようになる。
まず黒人青年のホーマーが主役なのだが、人種差別が一切ないのが良い。保守的に見える白人企業経営者(なんと監督自身!)も出て来るが、ホーマーの重機を扱う腕を讃えて、フツーに接しているし、レストランの太った白人オヤジも、ホーマーの建築の腕を尊敬してボスと呼ぶ。ミサに集まる町の人々も他所からやって来たホーマーをフツーに受け入れている。黒人も白人もメキシカンもヒスパニックも皆、平等に和気あいあいと話が進んでいく。ホントはそれでフツーなのだが。
年長のマリアは、ちょっと教条主義的でホーマーに説教することもあるが、修道女たちは優しく彼を受け入れて、英語を習ったりする。
ホーマーと修道女たちで、「アーメン」を「エイメン」と言い換えて、高らかに聖歌(黒人霊歌?)を歌う場面は、映画の感動のピークだろう。
修道女たちは、関係各方面に手紙を出して教会建設のための寄付金を募り、地元の人たちに無償で資材の提供を受ける。マリアが「絶対にお金と資材は揃います。神が私たちを裏切るわけはありません」と、寄付を断られても固く信じている。
紆余曲折あって、ホーマーがリーダーとなって建設した小さな教会はやっと完成する。ホーマーは、屋根の十字架を支えるコンクリートに自分の名前を刻む。
その夜、ホーマーは翌日の完成記念ミサに参加することなく、聖歌を歌いつつ、また車で出て行く…。
どこからともなくやって来て、修道女の望み通りに教会を建てて、完成したらソッと出て行く。優しさと共感の心を残して。黒人青年ホーマーこそが神であり、もしくは神の使いであったのだと思う。
ホーマーを演じたシドニー・ポワチエは、この映画で、黒人俳優初のアカデミー主演男優賞を受けてる。
良い映画を鑑賞すると、意識が現実離れしちゃう“映画酔い”するもんだねぇ。