【映画】「アメリカン・スナイパー」

「硫黄島からの手紙」よりも全然良かった、2014年公開の「アメリカン・スナイパー(American Sniper)」。

監督はもちろんクリント・イーストウッド。

2003年に始まったイラク戦争で大活躍した狙撃手、クリス・カイルが著した自伝を原作にしたもの。

アメリカの戦争映画にありそうな、クリス・カイルをヒーローにした、ある種、アメリカが関わる戦争を支持・賛美するような愛国的内容として批判もあったらしいが(そういう雰囲気もちょっとあるけど)、クリス・カイルが4度の従軍によって、徐々にPTSDなどで精神が壊れていく様を描いた嫌戦的内容の作品とも言える。

多分、観る人によって評価が分かれるのではないか。国と国のために戦う兵士を讃えながら、反戦というよりも、厭戦をアピールするというクリント・イーストウッドの保守的思想が表れてると俺は思う。

始まりは、クリスのテキサス・カウボーイ時代。
厳格な父親に狩りを教わり、男だったら家族を守れと諭される、典型的レッドネック、トラッシュ白人の育ちだ。
アメリカ大使館爆破事件 (1998年)をきっかけに軍に志願して、「フルメタルジャケット」(キューブリック)ばりに、めちゃくちゃ厳しい訓練を経て、特殊部隊シールズに配属される。
私生活でも恋人タヤと結婚するが、結婚式でイラクへの派遣命令が出される。
クリスは、狙撃兵として多くの戦果を挙げて、“レジェンド(伝説)“と呼ばれると共に、敵のイラク武装勢力からは“ラマディの悪魔”と恐れられて、懸賞金をかけられる。
敵の、1000㍍級の狙撃を得意とする元オリンピック射撃選手ムスタファの存在を知って、何度も死闘を繰り広げる…。

コレからが本番。
帰国して次の派兵までの間、クリスは落ち着きがなく、心拍数が上がり血圧も高くて、戦争ボケのPTSDに蝕まれ、「心も帰って来て!」と嘆願する妻の願いを他所に家族との溝が広がっていく。

戦地イラクでは、友人・同僚、それに弟が目の前で傷付き、死んでいくのを目の当たりにするのだから。平和な祖国に帰っても、心の中では、戦地の出来事を引き摺ってしまうのだ。

いくら戦果を挙げようとも、それだけ戦争というのは、人間を壊すということだ。人間は心がある限り、決して「ゴルゴ13」にはなれないのだ。

ラストは、除隊して帰国したクリスはPTSDに苦しむ中、退役軍人たちとの交流で徐々に人間の心を取り戻していくが、ある日、退役軍人社会復帰プログラムの一貫として赴いた射撃訓練先で、同じくPTSDを患った同行者の男性に射殺される…。

戦った男の悲劇だ。戦争賛美ではないが反戦でもない。本当に力は正義なのだろうか?

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。