「好き?好き?大好き?」
故・ロナルド・ディヴィッド・レイン(R・D・レイン)は、イギリスの精神科医である。
当時の、隔離が主流だった精神医学を批判し、患者(主に統失)と共同生活を送るなど、生活と一体化した治癒活動を試みた、いわゆる“反精神医学”の提唱者だった。
前のカミさんの件もあって、彼の有名な著書「引き裂かれた自己」などは読んだことがある。コレも昔、読んだと思うけど、彼はたくさんの詩を創作している。
詩というよりは散文や対話、劇のような作品だが、例えば、「彼」と「彼女」の長い会話など、結局、お互いを主張して結論の出ない、平行線のまま、どこか袋小路にでも迷い込んでしまったような散文で、統失患者との交流を表しているのかもしれない。決して難しいことはないのだが、ハッキリとした答えが引き出せない、ある意味曖昧な精神医学が根底にあるものと思われる。
「わたしはなくしてしまった
なくしたって なにを?
どこかで見かけましたか?
見かけたって なにを?
わたしの顔を
いいえ」
「この錠剤をのみたまえ
叫ばないですむようにしてくれるよ
そいつはいのちを奪い去ってくれるよ
いのちがなければ きみはもっと楽な身になるさ」
「世間で言うには 善意ってやつは
地獄への道普請(ミチブシン)になりもする
もしなにごとかにするだけの値打ちがなければ
そいつにはちゃんとする値打ちなどありはせぬ」
「ときおりわたしは来る
ときおりわたしは行く
だがどちらがどちらとも
わたしは知らない」
「あれはキスだったの?
それとも深い谷底からの
しゅうしゅういう音?」
レインによると精神疾患は、人間を取り巻く環境が要因であり、環境による苦痛を経験するプロセスだという。
特に、統失患者は、頻繁に旅に出てるようなものであり、常に物語を創作してるから、現実と乖離して戻って来れなくなっているのだと思う。
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