「恐怖の報酬」
前回、ウィリアム・フリードキン監督のリメイク版(77年、ロイ・シャイダー主演)を観た「恐怖の報酬」。今度は53年のモノクロ・オリジナル版(仏、Le Salaire de la peur)を鑑賞。
ベネズエラの移民の街を舞台に、油田での火事を消すために、4人の男たちが雇われて、2台のトラックでニトログリセリンを現場まで命がけで運ぶというストーリーはほとんど一緒だけど(←当たり前だ!)、オリジナル版には吊り橋を渡るシーンがなかったなぁ。重油の溜まったところを抜ける場面はあったけど。リメイク版では山場になるシーンだが。
悪路、転回困難な狭路、落石の障害などがあって、それなりに面白いが、やっぱり面白かったリメイク版を観た後では古さを感じる。
それにトラックで出発するまでの、職もなくその日暮らしでウダウダ、ダラダラやってるシーンが冗長過ぎる。
最後にただ独り残ったマリオ(イブ・モンタン)が報酬2000ドルを受け取って浮かれてトラックで帰る途中、誤って崖から落ちて死ぬのは、充分予想できた。
そのマリオが組んだ老人ジョーは最初は良かったが、途中でビビってしまい、運転はマリオ任せですぐに逃げ出すようになる。「臆病者め!何もせずに2000ドルか!」となじるマリオに対して、「運転の報酬だけじゃない。恐怖に対する報酬でもあるんだ」と返す。このシーンが肝だな。
当初、マリオは経験豊かに話すジョーを尊敬していたが、同じトラックに乗って上下関係が逆転する。いくら経験があろうとも、実戦でどう振る舞うかで人間の価値が決まるとでも言いたげだ。
ベネズエラの貧しい生活から抜け出すための命辛々の運転を成し遂げるのは、やはり理屈じゃない、行動力なのだね。
それでもマリオはジョーが脚のケガから死にそうになると優しく労わる。ジョーはそれがもととなって死ぬが、その後、マリオは自暴自棄みたいになってる。だから崖から落ちて死ぬのは予想できたのだ。
こっちを先に見たら素晴らしかったかもしれない。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。