【アニメ映画】「かぐや姫の物語」

古典・竹取物語は読んだので、ジブリのアニメ「かぐや姫の物語」(2013年)を。

監督は高畑勲氏だが遺作となった作品。

他のジブリ作品とは違った、簡素な粗い感じのするクレパスのような絵だけど、ラストは、俺もウルウルきちゃうくらいに、高畑氏ならではの“味付け”がされた「かぐや姫」の感動のお話であった。

ストーリーはだいたい原作に沿っている。自然のままに生きたいかぐや姫だが、姫として高貴な人間に育てたいという翁の意志の狭間で葛藤する心が前面に出た演出となっている。

人間ってのは懲りないものだねぇ。翁は、姫の幸せを願ってと、田舎から都に移り住み、様々な教育を受けさせて、一流の高貴な姫に育てようと目論むが、それは姫を材料にした自分の権力欲を満足させるものに過ぎない。原作には出てこない媼(オウナ、育ての母親)は理解があるけど。

そんな欲が支配する人間界に、訳あって姫を預けたものの、姫が成長するまでの間、結局、何も変わらずで、人間界に嫌気が刺した月の世界の人々が、姫を取り返しに来る話なのだろうか。

でも、人間から身分不相応の過剰な欲望を除いたら、人間ではなくなるだろうね。キリスト教もそうだが、何回でも懲りずに罪を犯すのが人間なのである。そこに様々な文化文明が生まれたのだから。

人間はただ試されたのだろうか。

姫となることを窮屈に思うかぐや姫は、翁の言うことを聞きつつも、田舎の自然や捨丸(初恋の相手)らと過ごした日々を想う。月のモノが始まったシーンもある。

原作と同じように5人の求婚者が現れるが、かぐや姫を得るために、嘘や作り話、ニセモノの贈り物ばかりで、姫自身を見ようとはしない。帝の申し出さえ断り、月夜に独りで月を見上げて泣くばかり。後は原作の通りだ。

ジブリらしい自然賛美もちゃんと盛り込まれている。

やはり日本の古典には、悲劇がよく似合う。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。