【古典邦画】「雁」

デコちゃん(高峰秀子)主演の、1953(昭和28)年の作品「雁(ガン)」。YouTubeにて。監督は、文芸映画の巨匠・豊田四郎。

原作は森鴎外で、若い頃に読んだと思うけど、こんなにデコちゃんが哀しい思いをする物語だったっけなぁ。

デコちゃん演じる下町の娘、お玉は、以前、ある男と一緒になるが、その男に妻子があるのがわかって、騙された過去がある。←当時はそんなこともあったのか?
で、今度は、歳はいってるけど、稼ぎのある呉服商の男・末造に面倒を見てもらうことに。
でも、またまた、呉服商ってのはウソで、実は悪どい高利貸し。さらに女房までいた。
お玉は妾として、大学の近所の末造の別宅に囲われることになる。
お玉は別れようとも思ったが、貧乏で苦労をした父親のホッとした姿を見ると、それもできないでいた。
その頃、毎日、家の前を散歩する大学生たちがいた。お玉は、その中の1人、岡田に恋愛の情を抱くが…。

末造を演じたのは、東野英治郎で、またイヤミな悪徳高利貸しの役がピッタリ。若い岡田に恋心を抱くお玉を、怒ることはないけど、ネチネチといたぶる。

結局、岡田は試験に合格して、ドイツへの留学が決まり、馬車で出かけて行く岡田に、お玉は、声をかけることも、別れを告げることもできずに、遠くから眺めるだけであった。叙情溢れるお玉の儚い恋心を上手く描いており(←表情など)、さすがはデコちゃんと森鴎外先生だと感心するね。

デコちゃんが、岡田への恋慕の情を誤魔化すために、末造に、肩をはだけて、胸も半分出して、「ねえ、ここに白粉を塗って」と甘える場面は、メッチャ可愛くて、セクシーでたまらんね。デコちゃんの肌の露出は珍しい。あとは“カルメン”シリーズくらいだろうか。

あと、岡田が、お玉の家の軒先に、カゴの鳥を狙って現れた蛇を、お玉にお願いされて退治する場面があるが、コレは何か性的な比喩になってるのだろうか?

お玉を末造の妾と知って、嫉妬に狂う女や悪役の婆さん、味方になる裁縫の師匠など、脇を固めた俳優も素晴らしい。さすがは森鴎外先生の名作だね。

こういう心理描写のある日本映画は大好きである。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。