今年読んで良いと思った本
今年読んで良いと思った本の一覧です。
小説
・ロブ・ライアン『9ミリの挽歌』
ぼんくら男たちの犯罪小説です。ちょっと内容に対して長すぎる気がしますが、結構楽しめました。
・スチュアート・タートン『名探偵と海の悪魔』
謎解きミステリとしてどうこう、と言うよりストーリー展開が良かったです。
・S・A・コスビー『黒き荒野の果て』
正統派犯罪小説。犯罪小説を読み慣れていると展開は想像できますが、ぐいぐい読まされる感覚がして好きです。
・ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』
今更読んだのかシリーズ。都市郊外の小規模コミュニティに普段は見えないが存在する、人々の「偏見」があらわになる様を描く筆致がすごいと思います。
・ナイジェル・ウィリアムズ『ウィンブルドンの毒殺魔』
英国産ブラックユーモアミステリ。これは笑える人と笑えない人がいるだろうなぁ。
・マイクル・Z・リューイン『沈黙のセールスマン』
謎解きマインドを持ったネオ・ハードボイルドの傑作。主人公のアルバート・サムスンがとても良いキャラクター。
・小森収編『短編ミステリの二百年』1~6巻
通して読むと英米の短編ミステリがどのような進化を遂げてきたかがなんとなくつかめると思います。解説の、収録されていない短編を読むのもオツかと。
・逸木裕『五つの季節に探偵は』
良質な私立探偵小説。謎解きミステリ文脈でももちろん読めますが、ハードボイルド小説文脈でも読めます。
・『エドガー賞全集 1996~2007』
さすがエドガー賞(MWA賞)受賞作だけあって、どれも退屈しないです。これだけのボリュームで一気に読むと結構疲れますが。
・ライオネル・ホワイト『気狂いピエロ』
犯罪小説ファンは、今年これを読み逃す手はないでしょう。犯罪小説の一つの理想形だと思います。
・ジャン=パトリック・マンシェット『殺戮の天使』
大傑作。暴力小説の昇華、とでも言えばいいのでしょうか。手に入りにくいですが読む価値は十二分にあります。
・S・J・ローザン『南の子供たち』
リディア&ビル・シリーズ邦訳最新作。素晴らしい現代のハードボイルド小説だと思います。
・ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
今更読んだのかシリーズその二。回顧主義に陥りすぎずに古き良き時代を懐かしむ様子が心に沁みます。
・リチャード・ブローティガン『アメリカの鱒釣り』
一読してその後何日も、適当なページを開いては心地よい意味がありそうでなさそうな文章にひたっていました。
・ドナルド・E・ウェストレイク『ギャンブラーが多すぎる』
ウェストレイク流スラップスティックミステリ。コミカルでありながら締めるところは締めます。
・生島治郎『黄土の奔流』
日本冒険小説のオーパーツ的作品。小説の描写からその土地の「臭い」が漂ってくる筆致はさすがの一言。
・デイヴィッド・ヘスカ・ワンブリ・ワイデン『喪失の冬を刻む』
現代に書かれる理由があるハードボイルド小説だと思います。自己のアイデンティティの模索と、主人公自身が事件の一次的な関係者であることについて。
・マイクル・Z・リューイン『父親たちにまつわる疑問』
まさかアルバート・サムスン・シリーズの新作が今邦訳で読めるとは。変わり者だが優しい私立探偵であるサムスンがとても良いです。
・マイケル・スレイド『斬首人の復讐』
スレイドの作品は何もかもが過剰で素晴らしい。著者の作風はメフィスト賞の第20回受賞作までの作品が好きな方は好みなのでは……と偏見を持っています。
・フレデリック・ダール『夜のエレベーター』
某日本の謎解きミステリ作家の作品をほうふつとさせるフレンチミステリです。サスペンスにも溢れていて滋味深い。
・尾崎翠『第七官界彷徨』
なんとも形容しにくい小説ですが、なかなかに面白かったです。
・A・H・Z・カー『誰でもない男の裁判』
古き良き謎解きミステリ短篇集でした。表題作はガツンときます。
・F・W・クロフツ『スターヴェルの悲劇』
これも古き良き謎解き捜査ミステリです。フレンチ警部ものはやっぱりいいなぁ。
・パーシヴァル・ワイルド『悪党どものお楽しみ』
ギャンブルのいかさまにまつわる連作短篇ミステリです。コミカルでノリが良く、読んでいて楽しい気持ちになります。
・ハーラン・コーベン『WIN』
これは嬉しいスピンオフ作品。ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世、素晴らしい。
エッセイ/評論/その他
・都筑道夫『黄色い部屋はいかに改装されたか』
ミステリファンなら読んでおきたいミステリエッセイ・評論です。これは70年代の評論ですが、現代の謎解きミステリでも通じるところがあるのではないでしょうか。
・白水社編集部『「その他の外国文学」の翻訳者』
英米文学のようなメジャー路線ではなく、「その他」にくくられてしまう海外文学の翻訳者へのインタビューをまとめたものです。海外文学が好きな方は読んで損はないと思います。
・米澤穂信『米澤屋書店』
「米澤さんは確かにこういうミステリ好きそうだなぁ」といったものから「この作品は意外だなぁ」というものまで。ガイドブックとしても使えます。
・若島正『乱視読者の英米短篇講義』
ここまで縦横無尽に小説を読み込めたら楽しいだろうなぁ、と素直に思いました。
・松坂健『海外ミステリ作家スケッチノート』
海外ミステリについて上機嫌で饒舌に語られる様が想像できます。短いページの中で、語られる作家について新たな視点を得ることができる良いガイドブックです。
・小森収編『ベスト・ミステリ論18』
短篇小説のアンソロジーはよく見かけますが、ミステリ評論のアンソロジーはあまり見かけませんね(『ミステリの美学』などあるにはありますが)。頷けるような頷けないような……というものから、「なるほど!」というものまで。
・ローレンス・ブロック『ローレンス・ブロックのベストセラー作家入門』
ローレンス・ブロックファンとしても、創作者としても参考になる一冊ではないでしょうか。
・柴田元幸『アメリカ文学のレッスン』
アメリカ文学を紐解くのに一役買う良い評論集だと思います。何でも「読める」(読み解ける)人はすごいなぁ、と思います。