Greenbuild 2023 ──環境建築の未来を創り出すために 【前編】
2023年9月26日〜29日、アメリカ・ワシントンD.C.で開催されたGreenbuild International Conference and Expo 2023に参加しました。
おそらくこのイベントは日本ではほとんど知られていないと思います。日本人の参加者は十数人、日本人学生は僕のみでした。このイベントはgreen building(後述しますが「環境建築」とは微妙に定義が異なると捉えています)に関連したテーマを扱う世界最大規模のカンファレンス・展示会です。毎年アメリカで開催されていて、昨年2022年はサンフランシスコで開催、来年2024年はフィラデルフィアで開催される予定です。
環境に対する意識は人によってバラつきがあるとはいえ、アメリカは環境に対する意識が高く、特にZ世代の環境意識が高いことに加えて、エネルギー政策に先進的に取り組む州は着実に増えています。
このようなアメリカという国で開催されたカンファレンスで僕が経験したことや考えたことについて、前編と後編に分けて紹介します。記事というよりもレポート寄りのまとめ方で、全体の文字数としては前編:13,000文字、後編:11,000文字とかなり多いので、興味を持っていただいた箇所を読んでいただけると嬉しいです!
(2024/10/14追記:前編・後編と2つの記事に分けてまとめ直しています)
↓↓後編はこちらです
まず、「1. 環境×建築という視点」は、そもそも日本ではあまり認知されていない「環境×建築」という考え方について簡潔に説明しています。環境問題に関連した活動に取り組まれている学生・社会人の方たちと話している中でも、エシカルファッションやプランドベースフード、フードロスといった言葉をよく耳にします。もちろんそれらの活動自体は非常に魅力的である一方で、少なくとも若者世代の間では衣食住の中でも「衣」と「食」に関連した環境活動に意識・興味が偏重しており、「住」があまり注目されていないというイメージがあります。だからこそ「環境×建築」の重要性や面白さについて少しでもここで伝えたいと思っています。
「2. Greenbuild 2023・参加報告」は、そもそもGreenbuildとはどういったイベントなのか、概要について簡潔に説明した後に、4日間で自分が体験した一連の流れや出来事について写真を用いながら紹介しています。Greenbuildはイベントとして非常に興味深く、アメリカの国民性も含めた興味深さ・斬新さが沢山ありました。これまでに僕が日本で出展・参加したエコプロ2022、SBUniversity2023といったサステナビリティに関連したイベントと比較した上での視点も含めています。
「3. Greenbuild 2023・考察」は、僕がGreenbuild 2023を通して得られた知見についてまとめています。Greenbuild 2023で扱われていたトピックや明らかになった世界の最新の動きについて紹介した後に、日本では知ることができないような印象的なセッションの内容を振り返りました。そしてそれらを包括する形で、環境建築の取り組みはトップダウン型であるべきかボトムアップ型であるべきかという一つの問いに向き合いました。自分の意見や感じたことを織り交ぜて、自分自身の考察も記載しています。ここで触れている内容について議論したい部分もあるので、読んでいただいた上で感じたことなどを気軽に教えていただけると嬉しいです。
※ただし、まだまだ知識不足な点も多くある上に、考察の内容が変化することもあり得るので、この箇所は随時更新・修正して行く予定です。
1. 環境×建築という視点
green buildingの概要について
日本ではあまり聞き慣れないgreen buildingという言葉ですが、定義を簡潔にまとめると以下のように説明できると思います。
1995年に松尾陽さん(東京大学名誉教授・建築学専攻)が退官最終講義にて説明された「環境建築」という言葉がありますが、これは今の日本社会では「地球環境に配慮した建築」、例えば断熱性能の高い住宅や、室内に緑が多く取り入れられた健康的なオフィスビルといったような「環境性能が高く、人の健康にも配慮した建築物単体」を指すものだと現状捉えられていると思います。それに対してgreen buildingはどちらかと言うと、このような地球環境にも健康にも配慮した建築空間を広めていこうという取り組み・動作的なものを指す意味合いが強いと考えています。
世界は今カーボンニュートラル実現に向けた動きが加速化していますが、本当に実現を目指すのであれば環境に配慮した新築の建物をいくら建てても何も変わらず、既存建築物を含めた社会全体のイノベーションが必要になります。ZEBやZEH*のように建築物単体の環境性能を扱う考え方が主流である日本は、環境建築を生み出し、そしてムーブメントを起こしていこうというgreen buildingの思想から見習うべき部分があると思います。
*ZEB(ZEH):Net Zero Energy Building(House)
ところで、「地球環境に配慮した建築」は人・地域・文化などによってイメージするものは異なります。建物全体が緑に覆われている建物は環境に優しいと考える人もいれば、緑に覆われた外観だけでなくエネルギー消費量を抑えた建物こそが環境に配慮していると考える人など人それぞれだと思います。だからこそ、第三者によって評価される共通の評価軸が必要になります。そこで開発されたのがLEED認証やWELL認証などといった認証制度です。認証制度の種類は他にもありますが、特にLEED認証とWELL認証は世界的に注目されています。
せっかくなので、アメリカでLEED認証を取得した事例を紹介します。こちらはノースカロライナ州にあるデューク大学のThe Richard H. Brodhead Center for Campus Life(LEED Silver取得)という施設です。(2023年9月に訪ねました。)
デューク大学は2021年時点でキャンパス内の50件を超える建物・施設がLEED認証を取得しています。今回取り上げるのはゴシック様式の歴史的な建物に囲まれたこのモダンな建物で、学生食堂や学習スペースが設置された施設です。
また、この施設の出口付近には駐輪場が設置されていて、施設の利用者に積極的な自転車の利用を促進しているという部分も評価できるポイントです。
ちなみに、個人的にお気に入りの環境建築がこちらのアル・バハール・タワーズ(UAE・アブダビ)です。こちらの建物にもLEEDの設計指針が取り入れられているそうです。
このように、LEED認証を取得している建物が実際に高性能な環境建築であることは間違いありませんが、その反面、このような認証制度にも不完全な側面があると考えていて、それによってグリーンウォッシュに繋がり得る部分もあると考えています。それについて自分の中で考えていることについては【後編】でまとめています。
以上を踏まえて、次のように用語を整理したいと思います。
・環境建築:「環境性能が高く、人の健康にも配慮した建築物単体」というニュアンス
・green building:「環境建築」をもっと普及させていこうという取り組みを指す。日本ではこの動きがほとんど見られない。
【宣伝】GBJ学生ユースのご紹介
ここで宣伝ですが、「環境×建築」という見方・考え方に興味があるという方は、GBJ(Green Building Japan)学生ユースという学生団体にご加入いただけるととても嬉しいです!GBJ学生ユースでは「建築」「まちづくり」「環境」「サステナビリティ」をテーマに、それらの学習・普及に関するイベントやインタビュー企画、見学会などを実施しています。今後は不動産に限らず広いテーマを扱っていく予定です!
2024年3月にTwitterアカウントを開設しました!
2024年度より僕がリーダーを務める予定ですが、コアメンバーの人数がやや少ないという状況です……。関東に限らず全国の高校生・大学生のご加入をお待ちしております。関心のある方は僕にDMやメール(一番下にメアド貼ってます)にて気軽にお声掛けいただけると幸いです!
2. Greenbuild 2023・参加報告
Greenbuildについて
改めて説明しますが、Greenbuildは主催団体USGBC(U.S. Green Building Council)によって毎年アメリカで開催されている世界最大の開催規模を誇るgreen buildingのカンファレンス・展示会です。
さらに今年は、USGBCが創立30周年を迎える歴史的な年でもあるため、3日目の夜にはUSGBCの創立30周年を記念するイベントも開催されました。
本カンファレンスには、アメリカ国内に限らず世界中から沢山の方たちが集まり、アメリカ・メキシコ・台湾・中国・タイ・イタリア・オランダ・ラトビア、……など沢山の国の方たちと交流することができました。
こちらがイベントのスケジュールです。
green buildingに関連したいくつものセッションが開催されるだけでなく、企業によるブース出展、参加者同士のネットワーキングの機会、さらには著名な俳優・作家・政府高官・学者などによる基調講演などもありました。過去にはバラク・オバマ前大統領による基調講演もあったそうです。これから詳細に紹介していきますが、Greenbuildは学術的なイベントである一方で、どこかエンターテイメントの要素が含まれている印象を受けました。
ちなみに、会場はアメリカ最大のコンベンションセンターと名高いWalter E. Washington Convention Centerでした。
僕は今回のGrennbuild 2023に「Greenbuild Scholarship」と「Volunteer program」の2つのプログラムを通じて参加しました。
「Greenbuild Scholarship」は通常の参加費$800(Learning Package)が免除される上に、会場すぐ近くの綺麗なホテル4泊分の料金も全てUSGBCが負担してくれるという非常に良心的なプログラムでした。参加後には簡単なレポートの作成が求められました。
「Volunteer program」はGreenbuild2023のイベント自体がTRUE認証と呼ばれる廃棄物ゼロを目指すための認証を取得するために、イベント内で発生する廃棄物の適切な分別をサポートするボランティア活動に取り組むプログラムです。4時間のシフト×2回、合計8時間のボランティア活動を行うことで参加費が免除されました。
実際にどのように廃棄物の分別が行われていたのかについてですが、廃棄物の分別率80-85%という目標達成に向けて(アメリカ国内平均は16%)、以下のように分別されました。
・BOTTLES / CANS
プラスチック・アルミニウム製の容器(空の状態)
・CARDBOARD / PAPER
紙、雑誌、段ボール(ピザの箱など)
・COMPOSTABLE
コンポスト向けの廃棄物。会場内で購入した飲食物の紙製の容器が対象で、残った食べ物は捨てても良いが、飲み物は捨ててはいけない。
・LANDFILL
埋め立ての廃棄物。会場外で購入した飲食物の容器が対象。
ボランティアはオリジナルの水色のTシャツを着て、会場内の至る所に設置されたボックスの前に立ち、参加者が廃棄物を正しく分別して捨てられるようにサポートしました。「このように分別してください」と紙に書いてどこかに貼れば良いだけの話では、と思っていましたがなかなか指示を守ってくれない方が割といるんですよね……。中には「これ(捨てようとする廃棄物)がCOMPOSTABLEな訳がないだろう」と何故か怒ってしまう方もいました。また、このボランティア活動はアメリカ特有の少しでも雇用を生み出そうとする思想にもどこか通じる部分があるのではないかとぼんやり考えました。
それに加えて一つ気になったというか物申したいのが、食べ物を残す人が多すぎるということです。食べ物ごと容器を捨てようとする人に対しては、「Please wait, I'll have it! …I'm really hungry.」と言って、余ったものは全て僕が食べていました。でもこういう時に外国人の方と仲良くなれるんですよね……。
ちなみに廃棄物の分別に関連して、ボランティアに限らず参加者には事前に「Be a Sustainable Attendee」ということで、以下の決まりのようなものが共有されていました。
ボランティアは廃棄物分別のサポートだけではなく、会場の道案内をしたり、写真撮影をサポートしたりなど、とにかく色々やっていました。「ボランティアをやってくれてありがとう!」と声を掛けてくれる方もいて、総じて楽しくボランティアの役割を全うできたと思います。
ボランティアプログラムに参加することで得られる最大の利点は、ボランティアコミュニティを通して沢山の繋がりを作ることができたことです。ボランティアは学生が意外と少なめでしたが、建築・都市に限らず機械・電気系の学生も多くいたのが印象的でした。都市の電化を通して脱炭素の達成を目指そうとする世界の潮流を踏まえると納得できますが、建設DXに特化したイベントでもないこのようなカンファレンスに機械・電気系の学生や社会人が沢山いるのは日本ではあまり想像できません。
ちなみに、先ほど少しだけ登場したGreenbuild event appがとても興味深いものでした。
イベントのスケジュールを詳細に確認することができるのはもちろん、会場フロアマップの確認、各セッションごとに質問をリアルタイムで投稿できる機能、さらには参加者同士のマッチング機能を搭載しており、非常に万能で便利なアプリケーションでした。デジタル化による紙資源削減といった狙いもあるようです。
そしてここからは、僕が体験したGreenbuild 2023での4日間を振り返ります。
■Day1
実は開催2日前の夜に、とあるビアガーデンにてボランティア同士の小規模な交流会がありました。ここで早速交流できたのは良かったです。
1日目が始まりました。
会場のコンベンションセンターはとにかく広大でした。
午後からはセッションが始まりました。この日僕は以下の2つのセッションに参加しました。
・「Unleashing the Global Power of Greenbuilding - An International Symposium」
・「DC's BEPS Affordable Housing Retrofit Accelerator」
セッションの詳細な感想等は「3. Greenbuild 2023・考察」にまとめていますが、2つ目のセッションは非常に興味深い内容でした。
17:00からはWelcome Receptionが始まりました。
ご飯を食べたりバンドの演奏を聞いたりしながら、参加者が自由に交流する時間でした。僕とほとんど同い年のアメリカ人の女の子3人組と仲良くなることができて、日本から来たと言うとびっくりされました。そして同じく日本から参加されている僕のインターン先の方たちともここで合流しました。それにしてもバンドの演奏の音がデカすぎる……会話に支障を来しまくっていました。
初日はセッションもあまり無く、ボランティアのシフトも無かったのでイベント自体はどこか物足りなく終わってしまいましたが、夜は日本・台湾・香港・USGBC南アジア支部の方たち総勢約20名で食事会に行きました。とても良いレストランだったのでD.C.を訪ねた際は是非。
僕以外は全員社会人で活躍されている方々でしたが、非常に刺激を受けました。USGBC南アジア支部のディレクターの方からは「次会うときはSpeaker、つまり参加者ではなく登壇者として会おう!」と言われました。今回のイベントに参加するにあたって、僕は完全にインプットを目的として臨みましたが、いつか必ずアウトプットする立場に、つまり話題を提供する立場としてその場に立たなければならないと身が引き締まりました。
初日から非常に有意義な時間を過ごすことができました。
■Day2
2日目は朝7:00-8:00のMorning Wellness Activitiesから始まりました。希望者はランニングとヨガのどちらかに参加します。ただ運動するだけでなく、参加者同士の交流も深める良い機会でした。また、人間の健康に配慮した建築・都市空間の実現を目指すgreen buildingの思想に共感を示した上で、自分たちの健康も維持していこうというコンセプトが含まれているように感じました。
このような取り組みは日本のイベントではなかなか見られないような気がしていて、これから何かイベントを企画する際の参考にしようと思います。
ちなみに僕はランニングを選択して、朝日が昇り始めるD.C.の街を走りました。
全体としてランニングのスピードはかなり早めで大変でした。僕が上京してから運動不足なのもありますが。基本的に横断歩道も車さえ通っていなければ皆信号無視で走る(良くなさすぎる)ので、休憩もほとんど無く走っていました。序盤こそ前の方で楽しく会話で盛り上がりながら走っていましたが、気づけば後ろの方に……。そして45分ほど走ったところでまさかの足が攣るというトラブルが発生し、リタイアする事態に。しかも太ももが筋肉痛になり、イベント最終日まで痛みは続くという羽目になりました(涙)。
ホテルに一旦戻ってシャワーを浴びてから急いで会場に向かい、9:00からのOpening Keynoteに参加しました。
Opening Keynoteでは、USGBCのCEO・Peter TempletonさんからUSGBC創立30周年、そしてLEED v5のリリース(詳細は後述)が発表され、会場からは盛大な拍手が起こりました。世界全体の動きを加速化させるための新たな出発点を祝っている様子でした。
2日目からは、セッションに限らず沢山のイベントが本格的に始まりました。
Expo HallではGreenbuild Expoが開かれ、さまざまな企業が自社製品のブース出展を行い、企業同士の交流、ネットワーキングが行われていました。展示方法にアメリカらしい工夫があるという様子はなく、展示ホールに関しては東京ビッグサイトの展示風景とかなり似ている印象でした。
展示を一通り見て回りましたが、個人的にはHempitectureという会社が開発した、ヘンプ(麻)という植物を用いた断熱材が興味深く、断熱材に用いる資源自体の持続可能性にも配慮している点が画期的だと感じました。
また、僕は参加できなかったのですが、Greenbuild Expoの他にも、
・One 2 One Meetings
・Roundtables
・Speed Networking
といった交流の機会が沢山あったそうです。先ほど紹介したGreenbuildのアプリには参加者同士のマッチングができる機能もあるので、このような機会がいくつもあるのは参加者にとって非常に良いと思います。
そして、12:00-16:00にはボランティアとして廃棄物分別のサポート等を行いました。ボランティアの内容としては先ほど説明した通りです。早朝ランニングの筋肉痛が治らず立っているだけで苦痛だったのはあまりにも誤算でしたが、ボランティア同士で沢山交流できたのが本当に良かったです。
2日目は「Beyond the Numbers Game − New Models to Scale Affordable, Healthy, and Green Housing」というセッションに参加しました。ボランティアのシフト希望を適当に出してしまったせいで、行きたかったセッションに行けなかったのは反省点でした。
16:00からはExpo Hallでハッピーアワーが行われて、2日目を終えました。
■Day3
3日目の朝もMorning Wellness Activitiesが行われているようでしたが……行きませんでした。足が痛すぎるからです。
7:30から「Kohler Presents: Unlocking Adoption of Sustainable Building Practices」というセッションに参加して、豪華な朝食を食べながらトークセッションを聴いていました。
8:30からは昨日のOpening Keynoteと同じ大ホールにて「2023 USGBC Leadership Awards」の授賞式が開かれ、green buildingに先進的に取り組んでいる5つの組織もしくは個人の方が表彰されました。
表彰された方々の詳細は上記のページに掲載されています。個人的にはフロリダ大学のBahar Armaghaniさんの取り組みが非常に印象的でした。Baharさんは「dedicated educator」ということで紹介されていましたが、その名の通りこれまでに数多くの学生にワークショップや見学ツアーを通してgreen buildingを知ってもらうことで、アメリカを中心に世界に広めていく取り組みを続けているそうです。日本にもこのような取り組みを広めていきたいと考えている以上、まず見習うべきはBaharさんのような取り組みだと感じました。
Keynote終了後、「Volunteer program」と「Greenbuild Scholarship」のどちらかもしくは両方の参加者がステージ上に集まって集合写真を撮影しました。
さらにその後、Greenbuild Scholarship限定の交流会にも参加させていただきました。サステナブルビジネスを専攻している学生、NPOの代表を務めておられる方、大学教授の方、さらには既存建築物の環境性能向上に向けたスタートアップ事業を展開されている方など、非常に多様で刺激的な方たちでした。英語なので、大学教授の方たちともフレンドリーに話すことができました。
12:00-16:00はボランティアのシフトが入っていたのでボランティアの活動に取り組みました。足が本当に痛かったです。
そして19:00からは、コンベンションセンターから国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館に移動して、USGBCの創立30周年を記念した「The Greenbuild Gala」という壮大なパーティーに参加しました。
ここでは建築やビジネスについて真面目な話をしている人はほとんどいませんでした。多分。立食形式でご飯を食べたり、ステージの演奏を聴いたりと、とにかくパーティーを楽しんでいる様子でした。
ちなみに会場ではヴィーガン対応のメニューも提供されていました。日本とは明らかに違う点です。仲良くなった女の子の一人は、両親がヴィーガンなので彼女も17-18歳のときにヴィーガンを選択していたものの、健康上の問題が出たことで医師の助言を受けてヴィーガンを辞めたみたいです。現代で多く見られるような強制力のある制度ではなく、自由な選択ができる制度の中で、本イベントのように誰でもヴィーガン対応メニューを試せるというのが現状は理想なのかもしれません。
1日目前日の交流会、Welcome Reception、ボランティアの同じシフトで仲良くなった人たちと一緒にステージ前で踊りました。日本でもこんな体験をしたことはありません。特にアメリカ人のノリというか活発さには圧倒されました。仲良くなったアメリカ人のうち2人が、このバンドの演奏が何時に終わるのかというしょーもない賭け($2)をしていて少し目を疑いました。
時刻は22:00。会場は閉まってしまうみたいです。最高に楽しい夜でした……のはずでしたが、まさかの別会場にて2次会があるらしく、仲良くなった人から偶然余っていたというチケットをもらいました。これは行くしかないということで、少し歩いた先の別会場に移動しました。
正直かなり疲れていたのであまり元気がありませんでした。アメリカは年配の方でもこんなに夜遅くまで楽しんでいるのが印象的でした。僕よりも全然元気です。少し休憩しようと端の方に移動したところ、ミネソタ州の大学教授の方が声を掛けてくれました。彼は建築とビジネスについて研究しているらしく、東京が好きだと言っていました。しかも、僕は1:00頃に途中で抜けてホテルに戻ることにしたのですが、彼もついてきてくれて一緒にホテルまで帰りました。彼とは今でも定期的にMessengerでやり取りをしているのですが、彼がここまで僕に優しく接してくれたのは何故だったのだろうと今でも考えることがあります。ますますアメリカに住みたくなってきました。
ちなみに2次会のパーティーは深夜2:00まで続いていたそうです。
■Day4
ついに最終日。眠い……昨夜にあれほど盛大な夜遊びがあったので、ほとんど参加者はいないのではないかと思っていましたが、意外とそんなことはなかったので驚きでした。
11:00からはClosing Keynoteが開催されました。ゲスト講演では、海洋生物学者のAyana Elizabeth Johnsonさんの基調講演がありました。世界のCO2排出量のうち約4割を建設部門が占めるという事実を説明した上で、「How to do(解決する方法)」はすでに明らかにされているからこそ、「Implemention(実装)」が重要であるということを強調されていました。
また、講演では日本の「生きがい(Ikigai)」が取り上げれていました。生きがいという言葉に相当する英単語は無いらしく、海外でこの日本語が流行っているというのは知らなかったので驚きました。地球環境をこれ以上悪化させないために建築・都市の切り口から何ができるのか、何をするべきなのかを考える4日間でしたが、それ以前の議論としてなぜ地球環境をこれ以上悪化させてはいけないのか、そもそもなぜこの地球で自分たちは生きているのかといった問いに向き合うことも大切であるという文脈で「生きがい」が取り上げられていました。
午後はLEED・WELL認証を取得している建物の見学ツアーに参加しました。僕は5つの見学先の中からアメリカン大学(LEED Gold取得)の見学に参加しました。
とにかく屋根面を中心にソーラーパネルを設置し、地元で作られた建材を積極的に用いる。またコンポストも徹底し、学生主体のリユースプロジェクトも行われている。さらには建物・街区全体の両方に地中熱発電の設備を導入する予定がある。……
簡潔にまとめると以上のような内容で、はっきり言って日本では知ることができないような革新的な取り組みがあったわけではなかったです。しかし、キャンパス内には豊かな緑の空間が至る所に点在し、屋内にもテーブルとソファで安らぐことができる空間が沢山ありました。日本の大学ではなかなか見られない空間を体験することができたのは良かったです。
こうして4日間のGreenbuild 2023は終了しました。
得られた学び、自分なりに考察したことについてはこちらの後編に続きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
記事の内容に関して、気軽にコメントいただけると嬉しいです!何か分かりにくい箇所とかも是非教えてください!
DMでのメッセージを大歓迎しますが、一応メールアドレスも貼っておきます。