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YS 2.53 そして次につながる

ヨーガ・スートラを有名たらしめるのが、ヨガのゴールを目指す8段階を記す八支則。ヤマ、ニヤマ、アーサナときて、今回は4つめのステップ、プラーナーヤーマーについての5回目で、最終回。
ヨガインストラクターのもえと申します。どうぞよろしくお願いします。

※前回は、こちらの「YS 2.52 プラーナーヤーマ4: だからきっと、これはエネルギーの話」からどうぞ。


ヨーガ・スートラ第2章53節

धारणासु च योग्यता मनसः॥५३॥
dhāraṇāsu ca yogyatā manasaḥ ॥53॥

そして、心がダーラナー〔集中〕への適性を得る。(2)

前回に引き続き、プラーナヤーマを練習することの恩恵を紹介している今回のスートラ。読み違えしそうな箇所がほぼないので、解説もわりとさらっと終わっています。


表現から考察する

その中で、ちょっと面白いなと思った細かいことをいくつか。

インテグラル・ヨーガ[パタンジャリのヨーガ・スートラ](参照2。以下、インテグラル・ヨーガ)は、「適性を得る」と書いています。できるできないではなく、そのための土壌ができたよということ。

それをイメージしてみると、たとえばプラーナーヤーマでうまく集中できなかったり、鼻が通らなかったりすることも、そんなに気にならなくなりませんか。土壌はできているなら、一歩一歩、踏みしめながら進んでいくだけ。


フォーチャプターズ オブ フリーダム(参考1。以下、フォーチャプターズ)も、集中するために必要なように、心がフィットするという書き方をしています。扉を開ける鍵が、鍵穴にフィットするイメージでしょうか。妄想といえばそれまでですが、練習を進め、続けるための燃料になるならいいなと、わたしは思います。

そして、解説では、集中のためのキャパシティ(capacity)を発展させることができると書いています。「能力」という意味でキャパシティを使っていますが、技術という意味合いの強いスキル(skill)を使わないんだなあと。なぜなら、キャパシティは、もともと建物や乗り物の収容可能数や収容可能人数を意味する単語です。だから、もともと持つ意味を加味するなら、その集中のための能力は、できるできない2択の話ではなく、たとえばコンサートホールの席がひとつずつ埋まっていくようなイメージ。

自分の集中をコントロールするって、難しいです。だから、いまの自分の容量を知っておくこと。そして、プラーナヤーマの練習を続けながら、どう増減するのか、観察しましょう。力づくで、もしくは、頭の中だけで進めることができるわけではないということも分かります。


・・・というのは、ヨガの話なのか、ただの語学好きの話なのかと思わないでもないですが、最後にもうひとつだけ。


別の意図も見える

今回のスートラはダーラナーへの適性を得ると書いていますが、ダーラナーとは八支則の6つめのステップであるということ。プラーナヤーマが4つめのステップなので、どうして、5つめのプラティヤハラを飛ばしているのかということに言及しているのが、ハリーシャ(参考3)です。

ハリーシャは、4つめと5つめのステップが、今までのように、1つのステップを終え、その次へという順番ではないからだろうと指摘しています。その二つを両腕に抱えて、6つめのステップへ臨むわけです。これ、知らなくても練習はできるけれど、知っておくと練習方法が変わってきませんか。

今回紹介した解説は、どれも細かいことで、知らないなら知らないでも大丈夫なことだろうと思います。でも、理解が豊かになることで、練習へ臨む姿勢が変わるのではないかなと思います。そして、それこそが、ヨーガ・スートラを1節ずつ、解説3つを読み比べる醍醐味なはずです。

そうやって、ヨーガ・スートラを読むのも、各々の練習も、つなげていこう。


というわけで、次回は、4つめのステップであるプラーナヤーマと一緒に抱えてダーラナーに臨む、5つめのステップが始まります。どうぞお楽しみに。また来週、ここでお待ちしています。

※ 本記事の参考文献はこちらから



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もえ|渡辺朋江
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