「まるごと馬場のぼる展」についてと、感じたこと。
図書館をふらふらしていて見つけた「まるごと馬場のぼる展」のお知らせ。
これは絶対に行かなければ!ということで、青森県八戸市にある「八戸市美術館」へ。
今回は、展示についてと感じたことも書きたいと思います。
平日だし空いてるかなぁ…と思いながら向かうと、この日は夏休み最終日。子ども連れの家族や親子でにぎわっていました。
今回の展示は残念ながら撮影NGでした、が
八戸市美術館さまにお願いして「展示風景ならぜひ」と大切な写真を貸していただけることに。
(ありがとうございます!!)
読んでくださっているあなたにも、すてきな展示の雰囲気が伝わりますように。
今回の展示、とにかくボリュームがすごい。入り口から奥まで、両側にみっちり作品が並びます。
11ぴきのねこ
入ってすぐは絵本「11ぴきのねこ」について。
「11ぴきのねこ」は食いしん坊で、ちょっとマヌケなねこたちの物語。親しみやすい絵柄も魅力の絵本ですが「リトグラフ」という特殊な工程を応用して作られています。
そもそもリトグラフとは、版画の一種。工程は「描画」「製版」「刷り」の3つです。
色を使おうとすればするほど版が必要で、同じ絵を何枚も描かなければならない。色を重ねたときに、どんな風に仕上がるかまで計算して。
馬場のぼるさんは、必要な版はすべて自分の手で描きわけていたそう。かなり時間のかかりそうな作業ですよね…
持ち前の画力だけでさらさら仕上げていると思っていたから、そんな大変な工程を経て作られていたことに驚きました。
版画の一つひとつに「ここは◯◯色」といった手書きの指示が残り、絵本にかけた手間と時間と気持ちも伝わってくるようです。
馬場のぼるさんのルーツをたどる
「ルーツをたどる 幼少期から漫画家デビューまで」のコーナーも印象に残りました。
小学校時代に書いた絵やポスター、習字も。そのすべてが上手い!低学年~高学年の作品をまんべんなく見れて、上達していく過程も追えます。
継続は力なりっていうけど、ほんとにそれだなぁと。続けるって成長する以外ないんだなぁと、ちょっとだけ勇気みたいなものをもらって。
とくに小学5年生に書いたという「紙ふうせん」の絵。小学生が書いたとは思えない画力に、しばし釘づけになりました。
読み手も時代も選ばない漫画
そもそも漫画家だった馬場のぼるさん。漫画作品もたくさん展示されていました。
いずれも1950年頃~の作品ですが、いま読んでも古~い感じはなく。でもどこか懐かしいような、そんな雰囲気です。
作品をよくよく読んでみると「ねこ」がたくさん登場していました。あとはブタやクマ、猿やウサギも。絵本ではお馴染みの動物たちですね。
どの作品も面白かったけど、1つだけ選ぶなら1967年頃の「ネコと私」という漫画。
いま読んでもくすっと笑える。すてきな作品は、読み手も時代も選ばないんですね。
どれもこれも見ごたえがありすぎて…気づけば一コマ一コマじっくり読んでいました。もちろん他の人たちも。
この展示をさらっと見て帰れる人なんて、きっといないんじゃなかろうか。
感情の揺れ幅がすごい
展示スペースの終盤「描いた!つくった!楽しんだ!」の一角。ここも楽しかった!
まず、馬場のぼるさんの仲間たちが描いた作品が面白い。手塚治虫さんとの共演「鉄腕アトムに変身する11ぴきのねこ」とか。
やなせたかしさんや長新太さんなど親交の深かった作家たちが、馬場さんが亡くなったあとに「馬場のぼるさんをモデルに描いた」作品を見て、うるうるしたり…
かわいい!ってなったり、しゅん…ってなってみたり、感情の揺れ幅がとにかくすごい。笑
あと「鮭とねこ」という水彩画が、個人的には最高でした。干された鮭を前に、悲しげに喪に服すねこたち。「でも、あれ、1ぴきだけ…」っていうユーモアたっぷりの作品です。(ぜひググってみてくださいね)
粘土で作られた器や置物など、普段はあまり見ることのない立体作品たちも楽しめました。
本気のデッサンに驚く
「まるごと馬場のぼる展」の最後は「みつめて描いた!」のコーナーです。
すべての展示を通して1番「驚き」をもらったのは、ここかもしれません。なにに驚いたって、馬場さんのデッサンの上手いこと。
絵本とのギャップがすごい。
ねこ、人間、植物、風景も。かわいいとかじゃない、ガチのデッサンが見られます。
展示外スペースにもねこ、ねこ、ねこ。大きな壁画がかわいすぎて。全体の撮影をうっかり忘れてしまいました。
美術館といえば絵はがき
恒例になりつつある、美術館のお土産。今回も絵はがきを購入しました。
展示の終了間際だったためか、絵はがきの種類があまりなくて。絵はがきでもいいから欲しい作品、いっぱいあったんだけどなぁ。残念。涙
あと、ねこのかわいいハンカチも。
これはしばらく使えませんね!
ぜんぜん関係ないけど、以前別の場所で購入した「わたしのワンピース」のハンカチも。
「わたしのワンピース」は「11ぴきのねこ」と同じ、こぐま社の絵本です。大好きで大好きで、ボロボロだけど今も大切に持っています。
八戸市美術館
八戸市美術館はもともと税務署だった建物を使用して、1986年に開館した美術館です。
建物の老朽化、収納庫や展示スペースの不足により2017年に一度は閉館。現在の新美術館は、2021年3月に開館したばかりです。
大きな窓から光がはいり、明るい館内。仕切りのない広いスペースは、カーテンやパーテーションを使ってアレンジできる仕組みです。
なかでも印象に残ったのは、1階のトイレ。イエローのドアや壁がかわいくて、なんとも美術館らしいおしゃれなトイレでした。
学芸員の大澤さまに伺ったところ「壁を取っぱらって、ジェンダーレストイレに変更できるように作られている」んだとか。
男性とか女性とか関係ない、トイレにもそういう時代が来るのかもしれませんね。
「まるごと馬場のぼる展」、想像以上の見ごたえでした!
ここまで馬場のぼるさんの人生や作品への熱量に触れられるとは思っていなくて。ちょっと急ぎ足でしたが、それでも2時間以上楽しめました。
「11ぴきのねこ」は読んだことがない。でも絵が好き、漫画が好きな人なら、たとえ入り口は違っても楽しめるはず。
八戸市美術館での「まるごと馬場のぼる展」は終了しましたが、9月17日から愛知県の刈谷市美術館にて開催中です。
気になる人はぜひ足を運んでみてくださいね!
絵本「11ぴきのねこ」と三戸町歩きに関する記事はこちら。
この記事を作成するにあたりご協力いただいた八戸市美術館さま、学芸員の大澤さま、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
🌟最後まで読んでくださりありがとうございました🌟
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