マーク・ロスコの魅力を探る旅。
マーク・ロスコ。その作品は「瞑想する絵画」と評される。
大きなキャンバスを数色に塗り分けている抽象的な絵。
一見すれば子どもでも絵の具でベタベタと描けそうなその作品に、なぜか惹かれる。
マーク・ロスコの作品を見るために、千葉にあるDIC川村記念美術館へ見に行くことになった。
はじめて実物を目にする。
個人的には抽象画はあまり好みではない。それでも魅入ってしまうその理由を、自分の中で見つけたいと思った。
千葉県佐倉市。佐倉駅から無料送迎バスで約20分。
街からはだいぶ奥まった自然豊かな森に囲まれた美術館。
美術品の鑑賞だけじゃなく、庭園を散策するだけでも気持ちがいい。
人も少ないので、失礼してマスクを外し大きく深呼吸をする。近づく台風の影響で湿気った空気に強い草の匂いが混じる。
マスクをしていると感じない、生の匂い。蝉の鳴き声とともに、静かな夏を感じる。
いま開催されている企画展は「カラーフィールド〜色の海を泳ぐ」。
ロスコの絵画も「色彩」。
今日は、徹底的に色に囲まれる日になりそうだ。
絵画を見るにあたり、事前に調べたロスコについて思い出す。
絵画は難しいことなど考えずに、ただ見て、感じたこと。それが全てだ。という意見もあるかもしれない。とくに抽象画は左脳で理解しようとするよりも、右脳でぶつかるほうがいいのかもしれない。
だけど、アーティストが何を感じ、考え、表現しようとしたのかを知っておくことは、自分の中の感性を掘り起こすための呼び水となると思う。
抽象画は、歯車のような部分がある気がするのだ。
その絵と自分の感性が少しでも引っかかり、回り始めると魅了されていく。けど、少しも引っかからなかったとき、ちっとも意味のわからない落書きか、意味をもたない染みみたいに思えてしまう。
アーティストを知ることは。ぼくのような美術ビギナーには、楽しむための取っ掛かりになってくれるのだ。
ロスコは、1958年11月プラト美術館で講演を行い絵を描くさいに慎重に計算している7つの成分について語った。
これらの成分を基に、色を構成していったらしい。
もちろん、すぐに理解できるようなものではないし、絵を見たからといって「この部分がアイロニーだな」なんて思うわけではない。けど、ロスコが色を重ねている時、こうしたことが彼の脳裏にあったことだけは間違いないのだ。
川村記念美術館のロスコ展示最大の特徴は、「ロスコ・ルーム」。
ロスコは作品をまとめて展示することにこだわっており、単体での展示を拒否していたとのこと。
その意志を実現したのがロスコ・ルーム。
壁1面に1枚の絵を飾る部屋。全部で7枚の絵を飾るこの部屋は変形7角形という特殊な形になっています。
いよいよ美術館内へ。
お目当てのロスコ・ルームにたどり着く前に、色をテーマに振り分けられた様々な絵画を鑑賞。
ヨーロッパ近代絵画の部屋。レンブラントの肖像画が1点だけ飾られた部屋。
階段をのぼり、いよいよロスコ・ルームへ。
中は薄暗く、中央にひとつのソファ。
7面の壁には、赤褐色のロスコの絵画。
はじめて実物を見る絵は、想像を越える圧倒的な大きさ。音もなく、仄かな明かりの中浮かぶ巨大な絵画。全面を絵に囲まれた空間は、緊張と緩和が同時に存在するような不思議な感覚になる。
ソファに座って、絵画を眺める。
ずっと眺めていると、次第に濃淡はコントラストを増し、フラットなはずの色彩に奥行きを感じるような気がする。
これだけの大きさを、極限まで薄めた油絵の具を塗り重ねていく。その膨大な作業を思うだけで気が変になりそうだ。
でも幾重にも塗り重ねられたその色彩は、眺めるほどに複雑さを増していくのだ。
「瞑想する絵画」
ロスコの絵を紹介する企画展に、その名をつけた理由がわかる気がした。
一枚の絵ではなく、空間としての作品。
その空間に感じた緊張と緩和の感覚。
それはまさに、心地よい瞑想に入り込むような感覚。
ロスコが絵を描くときに大切にしていた7つの成分。
絵を見ながら、少しだけ思い起こしてみる。
「わかった」とは言えない。けど、ロスコの絵に惹かれる理由は、少しわかった気がした。
では、また明日。
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