リアーナの下着ブランドが世界に示す、新しい多様性のかたちから、私達は何を学べるか。
10月3日、リアーナのランジェリーブランド、SAVAGE X FENTYの2度目となるファッションショーが、Amazon Primeで公開された。
ランウェイを歩くモデルの性別は様々。身長も体型も見た目も様々だ。
そんなショーを見て、私は新時代の多様性の姿を見た気がした。
リアーナが作り出した新しい多様性のかたちから、私達は何を学べるのだろうか。
当たり前が溢れる日本
男は/女は/体型は/この歳では、こうでなければいけない。こうあるべきだ。
それは誰が決めて、従わなかったら何か起こるのだろうか?
日本にいる私達の多くは、知らない間にステレオタイプの中にいてその事実にすら気づかない事がある。
特に日本では、その人の経歴や見た目を重要視し、物事を評価する事が多く、多様性という言葉はまだまだ遠い存在な気がする。
就職活動では学歴が重要視され、多くの採用担当が望むであろう姿や発言をする事が求められる。
履歴書でも、自己紹介するときも、名前と年齢は常にセットで、何歳なのに、何歳だから、と経験より、年齢が重要視され、マウントを取られるなんてよくある話。
女性お笑い芸人は、体型がふくよかな人が多いが、歌手や女優で同じような体型の人はほとんどいない。
日本のアイドル文化、アニメ文化は、海外で高く評価される事が多いが、日本の外見至上主義(ルッキズム)や、女性への固定概念が顕著に現れている部分でもあると思う。
こうでなきゃいけない、そうあるべきだ。という当たり前が溢れている日本だから、自分らしく生きようと思うと、生きづらくて、息苦しくなる。
リアーナが見せてくれた、新しい多様性のかたち
リアーナが、自身のランジェリーブランド、SAVAGE×FENTYのショーで見せたのは、そんな日本とは正反対な、当たり前なんてない世界だった。
はまらなければいけない型なんてない世界。
ジェンダー・年齢・体型・人種
なんのボーダーもない世界だった。
なんて美しい世界なんだろう。と涙が出た。
そして、何よりも美しかったのはボーダーのない世界にいる人々の、
画面から溢れ出てきそうな自信とパワーだ。
自分が自分らしくいるからこそ溢れ出る、魅力、セクシーさ。
私もこういう風に生きたい。
こんな魅力的な人になりたい。
そう思った。
魅力を感じたのは、お腹が引き締まってて、足がスラッとしていたからではない。
魅力を感じたのは、ぱっちり二重で美白だったからではない。
魅力を感じたのは、その人が谷間や肌を露わにしていたからではない。
魅力を感じたのは、その人が、自分のできることに200%の力を注いでいて、
自分の強みを知っていて、誰かと比べるのではなく、自分の美しさ、
魅力が何か知っている事が、表情や仕草から、ビシビシと伝わってきたからだ。
多様性のビッグウェーブは、容赦しない
欧米でも、外見至上主義(ルッキズム)や固定概念に囚われた見方をする人が多くいるのは事実だ。
しかし一方で、多様性を受入れ、自分らしくいることの大切さを理解し、行動する人がものすごいスピードで増えているのも揺らがぬ事実であり、そのスピードと影響は計り知れない。
その大きな影響力を象徴しているのが、去年のVictoria's Secretショー中止騒動であろう。
思い出して欲しい。
数年前まで、ランジェリーといえば、Victoria's Secretといっても過言ではなかった。
毎年行われていたファッションショーは、アメリカで年間2番目の視聴率を獲得するほどの人気を誇る。
ランウェイを歩くモデル達の、ショーに出るためにどれだけダイエットや、断食をしたかが武勇伝として語られ、多くの人がその話に羨望の眼差しを送っていた。
しかし、多様性の波が広がり始めた2019年、絶対的存在だったVictoria's Secretのショーは中止となった。23年間も続いていたショーが、中止に追いやられたのだ。その理由はズバリ、
ランウェイにおける多様性と包括性の欠如
=lack of inclusivity and diversity。
いくら世界的な知名度があっても、多くの店舗を構えていても、多様性という波は容赦なく大手ランジェリーメーカーを飲み込んでいったのだ。
SAVAGE×FENTYは、そんな2019年に初となるファッションショーを開催し、大成功を収めた。
業界からも世間からも高い評価を得たのは、モデルが鍛え上げた腹筋を披露し、ランウェイを歩いからではない。
スーパーモデルから、妊婦までがランウェイを歩いた、その多様性と包括性の高さが、ショーを成功に導いたのだ。
一夜にして、ランジェリー業界の価値観がひっくり返った瞬間だった。
モデルと自分を重ね合わせることのできるファッションショー
2020年のコレクションも負けちゃいなかった。
むしろ、そのパワーは何倍にもなっているような気がした。
コロナ禍で、昨年のように客を入れてショーが開催できなかったが、
この状況を逆手に取り、大規模なセットと、映像だから作り出せる演出の数々。
そして、去年よりも更に多様性が豊かなモデルとパフォーマー。
どんな人も、ショーに出てくる誰か1人には、自分を兼ね合わせる事ができるショーだった。
それが、ジェンダーであっても、体型であっても、肌の色や、年齢であっても、だ。
そんなショー今まであっただろうか?
顎が外れそう、とか、開いた口が塞がらないというのを英語では、
My jaw hit the floor=顎が床に落ちたというが、
もはや落ちた顎が戻ってこなかったと言っても良いくらいの衝撃だった。
日本は、多様性の波に乗れるのか
世界ではこのように、多様性を尊重し、受け入れるというムーブメントが確実に起こっている。大きな波はすぐそこまできている。
日本は、テクノロジーや独特の文化で、世界を牽引してきた存在だった。
しかし、最近では、仕事や学校の授業をデジタル移行できなかったり、男女平等ランキングでは、153ヵ国中121位、など、世界基準に大幅に遅れを取っている。
移民や、外国人労働者が増え始め、LGBTQ+コミュニティーについてもメディアで取り上げられる事が増えた今、島国日本は、この多様性に関するムーブメントを受け入れて、世界と共に成長の波に乗る事ができるのだろうか??
もし、日本が国際社会の中で生きていきたいと思っているなら、国民を巻き込んで絶対に乗らなけれないけない波ではないだろうか、と私は思う。
多様性への理解を深めるために、私達ができること
だからと言って、国が何かしてくれる、誰かが何かしてくれるのを待っているだけでは不十分だと思う。
多様性の波に乗るために、今、私達1人1人ができることは、なんだろうか。
通りすがりの人の外見や服装を、自分の思う「世間の基準」と照らし合わせ、笑ったりする前に、そもそも世間の基準とは何なのか考え直してみるのはどうだろう?
女性らしさ、男性らしさ、年齢相応というような概念について、もう一度考えを巡らせてみるのはどうだろう?
歳を取ったり、シワが増えたり、一重だったり、お腹にお肉がついてることはなぜネガティブに捉えられるのか。もう1度、考え直してみるのはどうだろう??
もし、ピンと来なかったら、こう考えてみるのはどうだろうか。
テレビに映る女性に、太ったと呟くことは、自分の体型が何らかの事情で変化したとき、世間から浴びる冷ややかな視線を作り出す。
もし、あなたが親なら、その些細な呟きは、蓄積して、子供の価値観になる。
その価値観は、正しいものなのだろうか??その価値観は、誰かを傷つけないだろうか?
もし、今あなたが、呟こうとしていることを、グッと我慢して、考えを巡らす時間を設ける事ができたら、その行動が、多様性を尊重し、認め合うことのできる社会を作り出す一歩になるのではないかと、私は思う。
多様性を受け入れ、多くの人が笑顔で暮らせる未来へ
リアーナは、このショーを通して、新時代の多様性の形を示してくれた。
私達はリアーナから渡されたこのバトンを、どう生かす事ができるだろうか?
より多くの人が自分を恥じることなく、生き生きと笑顔で暮らせる日本になって欲しい。私はそう強く願っている。
だから、このバトン、変化の波を、絶対に無駄にしたくない。
Savage X Fenty Show Vol.2はAmazonプライムで配信中なので、ぜひ見て欲しい。
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