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想いを音に乗せる 反田恭平さんとJNOの演奏会を聴いて

暖かかったり寒かったり、目まぐるしく春と冬が交互に現れながらも日差しの柔らかさに春の始まりが近いことを感じる季節になりました。

昨日は冷たい雨が降ったり止んだりで冬に戻ったかのようなお天気でしたが、横浜のみなとみらいホールへ、反田恭平さんとジャパンナショナルオーケストラ(JNO)の新曲演奏会を聴きに行ってきました。

みなとみらいホールは駅直結で
雨が降っていても濡れずに行けるのでありがたいです。

昨年NHKのクラシック音楽館で反田恭平さんとJNOの「東大寺奉納公演」を見まして。
大仏様の御前での公演はかなりの大雨で、テントから滴り落ちる雨粒がはねて反田恭平さんやJNOの方達の服がキラキラと光っているのが見えました。
雨の中では楽器の調子も違ってくるのではないかと素人ながら思うのですが、それを全く感じさせない圧倒的な音の美しさと気高さに反田恭平さんとJNOの方たちの音楽にかける熱意を感じ、プロフェッショナルとしての仕事とは何かを教えて頂きました。

音楽と共に聴こえるザーッという雨音が、だんだんと反田恭平さんとJNOが奏でる音と共鳴しだし、ショパンではしっとりとした悲しみを、ブラームスでは壮大な力強さと歓喜を奏で、まるで大仏様が雨音となって参加しているかのような、自然と音楽が融合しこの時この場所でしかできない音楽を創り出していて、心が震えました。

この公演を聴いて、これはテレビではなく実際に聴いてみたいと思い調べたところ横浜で公演があるのを知りすぐに予約して、楽しみにしていたのでした。

私が予約した時にはまだ席が空いていましたが、当日は満席で大勢の人たちのワクワクとした熱気に包まれていました。

席に着いたら「やっとこの時がきた」とドキドキしてきました。
JNOの方達が入場し調音を始めたその音がホールに響いた時、その音の美しさに耳と心が大きくフワリと開いていきました。
調音って聴く人にとっても必要なのですね。

反田恭平さんが拍手と共に入場し、渡部晋一郎さんのピアノ協奏曲「草が語ったこと」が始まりました。
反田恭平さんはピアノを弾きながら指揮をとります。
ピアノの音は草を撫でる軽やかな風や時に厳しく打ち付ける暴風のようで、オーケストラの音はそれを受け静かに力強くしっかりと根付き成長していく草のように感じました。
ピアノの音とオーケストラの音一つ一つの音が調和し全てが一つとなり、自然の豊かさを感じると共に、人も自然も一つ一つが違っていてそれが全体のハーモニーとなって調和していて、全てが完璧であり美しいのだと感じ、この世界の美しさにこの世界を創る全てのものに、感謝の気持ちが込み上げてきました。

休憩を挟んでブラームスの「交響曲第1番ハ短調Op.68」が始まりした。
反田恭平さんは指揮者としてオーケストラを引っ張っていきます。
反田恭平さんの指揮は動きが大きくて観ているこちらも引き込まれ、音楽に対する熱意が伝わってきます。オーケストラもその熱意に応え「善きものを創り上げていこう」という大きな原動力なり、真剣に、楽しみながら演奏しているのが伝わってきます。
お一人お一人がその力を最大限に発揮し、最上の力強くも儚い美しいハーモニーとなり、ぐんぐんとその音に引き込まれ、最後の盛り上がりでは生きていることへの歓喜を感じで自然に涙が溢れてきました。
これほどの感動をありがとうと、手が真っ赤に痛くなるくらい拍手をしました。

アンコール曲では反田恭平さんが「午前中に特別支援学校の生徒さんやお子さんたちへの公開リハーサルがあり、まだ言葉を話せないような小さな子供たちも音楽を聴きにきてくれて。その時にアンコールをするならこの曲だなと思ったのでこれを弾きます」と、シューマンの「子供の情景Op.15第7曲トロイメライ」を弾いて下さいました。

反田恭平さんのトロイメライは繊細で優しくて、静かで暖かく、大切なものを包み込むような、大きな包容力と安心感を感じ、お子さんたちに対する愛情が伝わってきました。

お子さんたちに対する想いを、言葉ではなく音楽に載せて暖かく届けてくれた反田恭平さん。
音楽ってこんなにも豊かな表現ができて、奏でる人の気持ちが相手の心に伝わるんですね。

反田恭平さんとJNOの方達の情熱と、お一人お一人の音の美しさとその豊かなハーモニーに、私の五感と心が大きく開き、幸せな時間でした。

ステキな演奏をありがとうございました。


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