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命もいらず名もいらず

Title:命もいらず名もいらず
著者:山本兼一
出版社:集英社文庫
感想を書いた日: 2024-06-07、06-18

# あらすじ
上 幕末編
飛騨郡代をつとめた旗本の家に育った少年は、のちに勝海舟と並んで幕末の三舟に数えられた最後のサムライ、山岡鉄舟その人である。幼きころより剣、禅、書の修行に励み、おのれを鍛え抜いた。長じて江戸に戻って千葉周作の道場に通い、山岡静山に槍を学ぶ。清河八郎らと知り合い、尊皇攘夷の嵐の真っ直中にあった。
世情に惑わされることなく、どこまでも真っ直ぐに生きた英傑の生進を描く歴史大作。

下 明治編
最後の将軍・徳川慶喜の意向を受けて官軍の陣を決死の覚悟で突破。西郷隆盛と談判し、江戸無血開城への素地をつくった。そして無私の人となりを見込まれ、侍従として明治天皇の教育係に任じられた。
自らは地位や名誉や金銭を求めず、他人には思いやりをもって接し、雄々しく清々しく動乱の時代を生きぬいた山岡鉄舟。その志高き人生を通じ、現代日本人に生きることの意味を問いかける傑作歴史小説。

# 感想
最近お気に入りの山本兼一さんの歴史小説。自分的にはこれまであまり強い興味を持たなかった幕末から明治維新にかけて活躍した山岡鉄舟の小説。不勉強で全く存じあげない方の小説?史実?です。
いつかは幕末ものを読もうと思うのですが、なかなか手が伸びなかった。今回読んでみて、今の自分が置かれている会社状況と幕末が絶妙にマッチするので面白く読めた。かつて野武士集団などの概念が持て囃された時代もあったが世は正にVUCAの時代(変動(Volatility)・不確実(Uncertainty)・複雑(Complexity)・曖昧(Ambiguity))であり、変わらなければ生き残れない時代に突入している。

そんな時代に自分の生き方にこだわり抜いた鉄舟。彼は武道、禅、書の道を突き詰め悟りを開いて寿命を全うした。朝稽古をして大根の葉っぱで飯を食べ、道場に通い、夜は知人が集まり大宴会、そして寝る前に坐禅を組み、また新しい朝を迎える。何処まで事実か分かりませんが、この小説の中の鉄舟自身は本当に悔いの無い人生を送れたと言う感想。ただ周りは迷惑だったろうなぁと言う思いもある。特に奥さんである英子の心中いかに?と思いながら読んでいた。極貧の生活を強いられ、夜中の剣術に付き合わされる。それでも鉄舟の人となりを尊敬していた、愛していたから同じ苦労が出来たのでしょう。

勝海舟や清水の次郎長、木村屋のアンパン、落語家さんなどのエピソードも楽しく読めた。ただ同じような説明?が繰り返し出て来ることもあってスピード感がイマイチだったかな?上下に別れる大作ですが、火天の城や利休にたずねよと比べると強い読書欲に駆られなかったのは本音です。

鉄舟が商人との会話で得た悟り、調子に乗れば失敗する。雑念を払い平常心で自分がしたい事、やるべき事を見極めてやり抜く。この心を忘れぬよう自分に言い聞かせて、上手く時代の波に乗り、自分の余生を大事に過ごしたいと思います。

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